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近所のコンビニまで送ってもらい、もういいですと言ったのだが、それではダメだと言われ、結局、マンションの前まで送ってもらった。
次の日、お礼がてらにまたカフェに行った。
昨日のお礼を伝えてしばらくの間ゆっくりと過ごしたのだった。
また夜に来ることを伝えて。
夜になり、職場の歓送迎会があった。うちの歓送迎会は上層部は来ないし、仲がいい人が多いため、無礼講で気軽に参加できるのだ。
「一沙さん!飲んでますかー?」
同僚の香と飲んでいると、後輩の百瀬くんが話しかけてきた。
「モモくんどうした?もうだいぶ酔ってるの?」
ニコニコしながら近づいてきた百瀬くんは私の横に座った。
昨日のこともあり、私はあまり飲まない様にしていたし、この後カフェに行きたかったからだ。
「オレ、一沙さんスッゲー憧れてるんですよー!優しいし、綺麗だし、仕事できるし!どうしたらそんな風になれるんですか!」
「百瀬くん、私そんなにできた人じゃないよ?買い被り過ぎだよー!」
なんて言いながら少し距離を取る。今日の百瀬くんはちょっと近すぎる。
距離を取っても近付いて来るのだ。
「モモくん!一沙に近づくの禁止!香おねーさんが相手してあげるからー!」
その時、香からウィンクが来たので、ここから退けと言う合図だ。
気心知れた同僚の合図のおかげで私はサッと離れて新人さんと退職者のに元に挨拶に行く。
しばらくしてお開きになり、ひとりそそくさと抜けてカフェへ向かっていた。
もう少しでカフェというところだった。
「一沙さーん!」
何故か百瀬くんが居たのだった。
「オレ!一沙さんに伝えたいことがいるんですけど!入職してから好きでした!よかったら付き合ってもらえませんか!?」
まさかの告白だった。
「気持ちは嬉しいけど、私は他の人と付き合うつもり無いから。ごめんね。」
断ったのは良いが食い下がるつもりはない様子だった。
「オレ、一沙さんに似合う男になるので!」
そう言いながら近づいてくる。
私は怖くなって走ったが、元々走るのが遅く…腕を掴まれてしまった。
「百瀬くん離して!いや!」
そう言っているにもかかわらず、詰め寄ってきた。
また叫ぼうとした時だった。
「一沙さん!!!」
そのままグイッと引っ張られた感覚があり、誰かの腕に抱き締められたと気がつくと、引き寄せてくれたのはマスターだった。
私は助けに来てくれたことと、抱きしめられたことに驚いてしまい、
「えっ…マ、スター?」
と言うのが精一杯だ。
マスターの顔は今までに見たことのない様な顔で、怒りを抑えている様な、自分が怖い目にあった様なそんな顔をしていた。
「君、何しようとしてました?婦女暴行ですか?一沙さん嫌がってましたよね?」
強い眼差しで百瀬くんを見るマスターはこの状況で考えてしまうのはおかしいのだが、かっこよかった。
「貴方誰ですか?オレは一沙さんと話してたんですよ?邪魔しないでください。そして離したください。オレの一沙さんです。」
いつもの犬の様な百瀬くんとは思えないほどの剣幕だった。
私は怖くなって思わずマスターの服を握り締めてしまうと、マスターはぎゅっと抱きしめる強さが増した。
その動作だけでもホッとしてしまった。
「一沙さんはモノではないし、勝手に決めつけるのは良くない。ちゃんと酔いを覚ましてから告白するならまだしも、酔ってるよね?酔ってて言うとかはダメだと思うけど?一沙さんは連れて行くから。」
そう言ってマスターに連れられてカフェに向かおうとしたのだが…
「待て!一沙さんを連れて行くな!」
そう言って百瀬くんはマスターに殴り掛かろうとした。




