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いつもとは少し違うセットしていない無造作な髪、寝癖だろうか、少しはねている。
「一沙さんおはようございます。少しは休めましたか?」
私に気付き笑顔を向けてくれる。
その笑顔を見て泣きそうになったが我慢る。
「マスター、ホントにありがとうございます。素敵なお部屋で、あんな事があったのに、気付いたら寝ちゃってました。」
笑えているだろうか、昨日の部屋を思い出しただけでぞわりと背筋が凍る様な感覚になる。
もしうっかり寝てしまって遅くならなかったら、マスターが送ってくれていなかったら、そんなタラレバを想像してしまう。
話しているのに、自分の心と身体が変な感覚だ。
するとマスターはキッチンから出て近づいてくる。
「昨日は無理においでって言ったから、嫌な思いさせてたらごめんね。」
なぜマスターが謝るのかが分からず、驚きながら首を振る。
「昨日はマスターが来てくれたから私も何事もなく無事だったと思うんで、謝ったりとかしないでください!こちらこそ泊めてもらってありがとうございました!」
そう言って頭を下げた。
「今日は一旦帰って警察の事情聴取と被害届提出や、鍵の交換もかもあるのでマンションに帰ってホテル取ってきます。昨日からありがとうございました。ちゃんとご恩は返しますから。」
そう言うと、何故かマスターは寂しそうな顔をしていた。
「一沙さん、無理しなくてもいいですよ。今回のことは絶対にキャパオーバーな状態になります。ホテル生活だと尚更仕事や私生活で支障が出るはずです。それに仕事のことを考えると絶対に相手に怪我をさせていい仕事でも無いですよね。少し強引ですが、恩返しと言うなら、今回の事が片付いて今の家に居たとしても何かあっては遅いですし、次の部屋を見つけるまでここで生活しませんか?ただ、あなたの事が心配なんです。」
思っていた以上の事態が起きた。
マスターからの申し出だが、そこまで迷惑が掛けられるはずもなく、後輩との事もあったばかりだ。
この人に何度も迷惑を掛け、心配させる訳にはいかなかった。
「わかりました。マスターを心配させる訳にはいきませんよね。しばらくの間よろしくお願いします。部屋は早めに見つけます。」
そうして、しばらくの間マスターとのルームシェアが始まったのだ。




