いわゆるひとつのペットロス
ペットを失った人は、多かれ少なかれ悲しみに沈むだろう。
時には生活に支障をきたす人もいる。そう、いわゆる『ペットロス』だ。
ウィキペディアでは、
『ペットロス症候群とは、ペットと死別したり、ペットが行方不明になったり、盗難に遭ったりしたことなどを契機に発生する、疾患ないし心身の症状のこと。』
と、説明している。
6年前、1代目のダックスを亡くした時、それは悲しかったさ。
たくさん泣いた。もっとしてやれる事があったんじゃないかと後悔もした。
しばらくは急に涙が出てきたり、遊びに行く気になれなかったりしたけれど、徐々に心は落ち着いていった。
多頭飼いで、もう一頭の犬がいた事も大きかったと思う。
2代目の子の時は、金曜日の早朝の事で、もちろん大泣きした。
それでも前回経験済みのためか、粛々と支度を進めることができた。
発泡スチロールの箱に毛布を敷いて寝かせ、保冷剤と庭の花を入れた。リードは蓋の上に。餌と水を供えて。火葬場の予約を夫に頼み――そして仕事に行った。
その日も普通に仕事をこなし、仕事帰りにスーパーに寄った。
花を買わなきゃ――そう考えた途端、何も考えられなくなった。
何をどうしていいのか分からなくなって、待ち合わせしていた夫が来た時にもまだ呆然としたままだった。
「今日、平気だったのに……」
私の言葉に夫は少し考えてから、
「実感がないんだよ。家でまだ待っている気がしないか?」
と、言った。
そうか。
まだ心のどこかで、あの子が生きていると思っていたから平気でいられたのか。
もう帰っても、テチテチという足音も、ドアのすき間からフンフンと匂いをかぐ鼻息もないのかと思うと、
――ああ、いかん。これを書きながら泣けてきた。
たぶん、喪失感というものは、けして消えはしないのだろう。
時間ととともに、ただただ馴染んて平らかになるだけで。