君と暮らす5110日
5110日は14年間の日数である。
うちの先代犬たちはどちらも14歳で亡くなった。
家に迎えてきっかり14年間ではないので、厳密には一緒に暮らした日数は違う。
初代の子は少し日数が足りないし、2代目の子は半年ほど多い。
大切にしていたペットを見送る事は、飼い主の責任を全うしたという事だ。
誇っていい。
なのに、なんて苦しいのだろう。
もう何ひとつ書けないと思った事もあるけれど、その痛みを書けと背中を押してくれるのもまた、そのペットの存在だ。
泣きながら振り返れば、思い出は優しい記憶に満ち溢れていた。
我が家にやって来た子犬は、犬にしては珍しくひとりっ子で生まれたという。
うちに来てもひとりっ子だ。
私と夫の関心を一身に集めて、子犬は日々成長している。
毎日、新しい事を覚えていくのが分かる。
昨日まで歩くのを怖がってた場所も踏破し、鳴いて、吠えて、自分の存在を主張する。
飼い主の悪戦苦闘? ――そんなの関係ねぇ。
犬には、わずか5110日しかないのだ。立ち止まってる暇はない。
自分はどうだ?
まだ5110日もあるのだ。諦めずにやり遂げられる事もあるだろう。実らぬ事が多いとしても。
そうしてあと36500日も経てば、私を覚えている人もなく、こうして綴っている文字さえ消えゆくだろう。
笑った日々も、泣いた日々も、静かに風となるだろう。
今日の悲しみはとても大きくて、押し潰されそうになる事もあるけれど、毎日をあるがままに、そして真摯に生きる事を犬たちは教えてくれる。
共に暮らす5110の日々をかけて。