表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/88

本当にほしいもの(クリスマスSS)



「エル、ただいま! シャノンさん達とのクリスマスパーティー、すっごく楽しかったよ」

「……お前ら、ほんとそういうの好きだよな」


 パーティーから帰宅したところ、ベッドで横になっていたエルは呆れたようにそう呟く。


 今年も去年も誘ったけれど「他所の国の訳のわからんイベントとか興味ない」と断られてしまっていた。


「プレゼント交換でね、わたしはユーインさんの作った惚れ薬が当たっちゃって」

「あいつ、本当にふざけんなよ」


 ベッドから身体を起こしたエルに、すぐに捨てろ、絶対に使うなときつく言い聞かせられた。


「サンタさん、わたしのところにも来てくれるかな」

「お前は何が欲しいわけ?」

「でも、実は何もないんだよね。エルとずっと一緒にいられたらいいなって思うだけで」


 当たり前のように答えると、エルはアイスブルーの目を見開き、やがて片側の口角を上げた。


「そんなの、わざわざ願う必要もないだろ」

「どうして? あっ、そういう……ふふ!」


 言葉の意味を理解したわたしは、嬉しくなって思いきりエルに飛びつく。


 暑苦しいと押しのけられる中、テーブルの上には殺風景なエルの部屋には不釣り合いな、小さなかわいらしい箱があることに気付く。


「あれ、この箱は?」

「お前にやる」

「えっ」

「前、欲しいって言ってたピアス」


 買い物中に何気なく言ったことを覚えてくれていたなんてと、胸を打たれる。興味がないと言いながらも用意してくれていたエルが、愛おしくて仕方ない。


 ベッドから降り、小箱をぎゅっと抱きしめた。


「あ、ありがとう……! 嬉しい! ずっとずっと大切にするね、あと毎日つけるね!」

「おー」


 一方のわたしは何も用意しておらず、心底反省した。


「ねえねえ、エルは何か欲しいものないの?」


 慌ててそう尋ねると、エルはこちらを見つめた後、形の良い唇を開いた。


「お前」


 その言葉を呑み込むのに、少しの時間を要した。


「えっ」

「こっち来いよ」

「え、ええと……」

「早く」


 恥ずかしさを感じながらも、プレゼントを用意していなかった罪悪感を胸にもう一度エルの側へと向かう。


 ぐっと抱き寄せられ、二人でベッドの上に倒れ込む体勢になった。文句ひとつ付けようのないエルの顔がすぐ目の前にあって、鼓動が早くなっていく。


「いつまで照れんの」

「そんなの分かんないけど……あっ、でもわたしは元々エルのだよ! 全部!」

「……お前って、いつになっても恥ずかしい奴だよな」


 エルは再び呆れたように笑うと、私の頬に触れた。


「それならいくら好きにしようと俺の勝手だよな?」

「ま、待って」

「待つわけないだろ、バカ」


 楽しげに笑うエルの唇を受け入れながら、わたしは何かを望む必要がないくらい幸せだと思った夜だった。



メリークリスマスです(∩^o^)⊃──☆゜.*・。

昨日の夜にコミカライズを担当して下さっている鷹来先生が素敵なエルジゼのクリスマスイラストをX(旧Twitter)に上げてくださり、興奮して書きました。


ぜひぜひみなさま、ご自分へのクリスマスプレゼントに家逃げコミックス1~4巻を!(宣伝)

今後とも家逃げをよろしくお願いします〜!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ