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騎士団長と私と副団長と

副団長は騎士団長に押し倒されて、しかも部下に見られて泣きたい

作者: ねこぼし




「最近、彼女に避けられている」



深刻そうに言った団長に俺は苦笑いした。



「あー……団長。緊急事態とか言うから休暇中なのに急いで来たんだけど」



「緊急事態だろ」



「うん、団長だけね」



強い魔物が出たとかそういうのだと思ったのに、でもそうじゃなくて安心した。

それに最初に応援しますって言ったしね。俺はため息をついてから深刻そうな団長に言った。



「多分、なんとなーくだけど理由はある」



不名誉にも俺と団長が付き合っているという噂のせいだ。これを言って大丈夫かな。というか未だに気づいてないみたいだ、団長って周りを気にしない人だからね。



「その理由はなんだ?」



「ほらこの前、俺と団長が仲良く弁当を食べてたから、俺達が付き合ってるとか思ってを邪魔しないようにってなったとか?」



「そうか」



あれ?意外に団長、落ち着いてる?


しかし団長は席を立ったと思うと視界から消えた。俺は嫌な予感がして剣を抜いて、前に向けると何かが当たる音がした。そのまま床に押し倒され、馬乗りになった団長が剣を俺に向けていた。俺の剣で押し返そうとするがビクともしない。



「悪いが、死んでくれ。そうすれば彼女の誤解も解ける」



「落ち着いてなーい!死んでも誤解は解けないって!それに今のは例えばの話だよ!冗談なの!ごめんって!」



「なんだ、冗談か」



剣を鞘にしまった団長にホッとした。本当に死ぬかと思った。やっぱり本当の事はまだ言わないようにしよう。

というか、仕事は真面目なのに彼女の事になるとこうだからなぁ。



「とりあえず彼女に会いに行こう?何か理由が分かると思うから、考えるより行動でしょ」



「…分かった、行こう」



「失礼します!何やら激しい音がしましたが大丈………………、失礼しましたっ!!!」



俺の部下が部屋に入ってきたが、俺達を見て固まったと思うと顔を赤くして出ていった。



「彼は何しに来たんだ?」



「多分、物凄く勘違いして出ていった」



ちょっと泣きたくなった。




ーーーーーー☆





俺と団長は彼女の後をつけてみた。しかし前とは変わらず、仕事に行って家に帰ってくるだけだ。



「うーん、男の影はないね。でも前と帰り道変えてるね」



「しかも俺が帰り道待ち伏せしていると次の日は別の道で帰っている」



「待ち伏せって……まさかまた告白したんじゃないよね?」



あれだけ失敗したのにまた告白しても駄目だと思うけど。



「声はかけずに見守っていただけだ」



「まさか物陰からとか?」



「そうだ」



なんで物陰からこっそり見守ってんのさ。俺は腕を組んでため息をつく。



「人影も気配もないのに視線を感じる……女性には怖いかもしれないよ」



「どういうことだ!彼女に危険が迫っているのか!?」



「落ち着いて、団長のせいで道を変えてるんだよ」



彼女の事になるとすぐ冷静を無くすよね。



「俺のせいだと?」



「そう。だから挨拶してから見守ってあげればいいんだよ」



「そうか、分かった」



仕事一筋だった団長は恋愛経験がない、だから少し…いや、かなりズレてる。素直でいい人なんだけど。


団長は彼女の前に立ち声をかける。



「こんばんは」



「あ、こんばんは」



団長と彼女が挨拶した後、黙ったまま彼女を見ている。何か話せばいいのに。彼女も困惑してるよ。もしかして見守ってるんじゃないよね?



「こんばんは。ほら団長、彼女の前にいつまでも立ってると邪魔だよ」



「そうだな、悪い」



「い、いえ」



団長が避けると彼女が歩きだそうとしたので俺は慌てて声をかけた。



「あ!良かったら送っていきましょうか?」



団長が、と言う前に団長に腕を掴まれ口を閉じた。



「なんでお前が送っていくんだ」



「え?いや、俺じゃなくて」



「彼女に気があるのか」



「なんでそうなるの!?」



「あの、すぐそこなんで1人で大丈夫です。心配してくれてありがとうございます」



頭を下げて走り去っていった彼女を見つめる団長は少し寂しげだった。



「もう、団長が送っていくって言おうとしたんだよ」



「そうだったのか、すまない」



腕を離した団長を見ながらため息をつく。



「とりあえず帰ろ、避けられてる訳じゃなかったのが分かったからね」



「あぁ、色々と悪いな」



「いえいえ」



団長の恋は色々と前途多難だ。でも…。



「避けられている訳じゃなくて安心した」



団長が本当に彼女が好きなのは伝わってくるから、応援したくなるんだよね。

安心したように微笑む団長をチラッと見て、俺も笑みを浮かべたのだった。







副団長

団長の恋を応援している。しかし最近自分が巻き込まれていて泣きそう。必死に説明したが周りは照れてるだけだろうと思われている。



団長

彼女に避けられていると思って悩み、1週間眠れなかった。でも仕事は休まず真面目に働いた。彼女の事になると冷静でいられないほど好き。



彼女

帰り道に視線を感じていたが誰もいなかったので怖かったが、あの日からそれが無くなってホッとした。かわりにまた団長とよく会うようになった。










ちなみに…次の日……。



部下「副団長!昨日は邪魔をしてしまい申し訳ございませんでした!」



副団長「え?あー、あの時の……あのさ、この前のことは誤解なんだよ」



部下「それでお詫びにこちらを!妹に相談して買いました」



副団長「全然話聞いてない、だと!?」



部下「お体の調子が良くなければ言ってください!いつでもお手伝いしますから!では、失礼します!」



副団長「ちょっと!誤解だってば!あー行っちゃった。で、この紙袋なんだろ……………………………………。ドーナッツ型の座布団。やっぱり物凄く勘違いされてる!!泣きたい……」




読んで頂きありがとうございます。

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