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不死の死にたがりと異世界少女  作者: 陽炎 紅炎
第二部 第一章 死にたがりの目的
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お久しぶりです。

 クロの両親の墓参りを済ませて、また一週間が経った。

 瓦礫の撤去、建物の修繕、その他諸々が一段落ついた感じだ。


「がっはははは! 飲め飲め〜!」


 やかましいガドルの声がギルド内に木霊する。

 王都復興の為の仕事を終わらせた夜。俺達はガドルに呼び出され、この飲みに参加させられたのだ。

 無事に戦争を生き抜いたから、ということらしい。

 ガドルに限らず、戦い生き残った人達はジョッキを片手に騒ぎまくっていた。


「はぁ……」

「どうしました?」

「ん、あぁ、最初の挨拶がな……」


 ギルドの隅の席でちまちまと料理をつまんでいると、飲み物片手にクロが俺の隣に座った。

 俺のため息の原因はこの宴が始まり最初にあった挨拶が原因なのだ。なんの用意も事前連絡も無しに「功労者だから〜」という理由でガドルから押し付けられた挨拶はものの見事に噛み噛みの挨拶になり、皆から笑われた。

 そんな訳で現在進行形で拗ねている最中なのだ。


「ふふ、凄い噛んでましたね」

「うるせぇ、俺はあーいうの苦手なんだよ。ったくガドル奴……」

「まぁまぁ、拗ねてても仕方ないですよ。明日からまた仕事が始まりますし、ゆっくり出来るのは今だけですよ」

「まぁ、そうなんだけどな……」


 クロは心底楽しそうに俺がつまんでいた料理を横から掠め取り、飲み物を飲んでいた。

 まぁ、今更そんな事で怒る俺ではない。というより、どうしても宴の空気についていけず上の空になってしまう。

 元々、こういうのは苦手なのもあるが……。


「……いい加減。どうにかしないとな」

「……? 何か言いました?」

「いや、何でもねぇよ」


 いい加減、この不死をどうにかしなければならない。

 いや、本当は焦る様なことでもないのだろうが、どうにも心に余裕が持てない。

 魚の小骨が引っかかったように、俺の心にも何かが引っかかっていた。

 焦らなくていい。焦らなくて、いい。

 ふと隣を見ると、クロは相も変わらず大皿に盛られた料理を片っ端から食べ尽くしていた。

 ほんと、よく食うなこいつ……。


「……あの、そんなに見られると食べ辛いんですけど」

「気にすんな。よく食べるなぁって思ってただけさ」

「だからってこっちを凝視しないでくださいよ。ほら、これでも食べててください」

「むがっ!?」


 でかい肉団子の様な食べ物を口にぶち込まれる。

 甘辛いタレを纏ったジューシーな肉団子は中々のボリュームがあって美味い。だが、無理に突っ込まれて喉につまりかけた。


「んぐ、ごほっ!? 無理やり突っ込むなよっ!」

「あはは、ほらもう一つ!」

「やめ、やめろぉ!!」


 再びフォークに肉団子を突き刺し、俺の口に突っ込もうとするクロを必死に押さえる。けど、こいつ無駄に力が強い。伊達に冒険者を何年もやってる事だけはある。

 と、今は感心している場合ではない。誰か、こいつ止めてくれ!


「ほーら、食べてください!」

「要らねぇ!」


 よく見るとクロの顔は少し赤くなっていた。

 こいつ、酔ってやがるっ!?


「お前、十六だろうが! 何酒飲んでんだ!」

「この国では十五から成人扱いですよーだ!」


 そうか、なら良く……ねぇな。全く良くない、根本的な解決になっていないからな。

 このままでは埒が明かない。仕方なしに目の前にある肉団子を一口で食べ、クロを担いで外に出る。

 とりあえず、こいつの酔いをどうにかしなければ無限ループに陥りそうだった。

 夜風に晒されたベンチにクロを座らせる。当の本人はほろ酔い状態でえらく上機嫌だった。全く、こちらのことも考えて欲しい。


「えへへ〜タケルさん」

「相当酔ってんな……。ほら、とりあえず水飲め」

「飲ませてくださ〜い」

「ったく……」


 ついでに持ってきていた水をクロに飲ませるが、それが悪かったのかクロの甘え譲渡は悪化した。

 にへへ〜と若干赤い顔で俺の腕に擦り寄ったり、頭を撫でろだのと色々要求してきた。けど、こんなクロを放っておけない時点で俺も甘いのかもしれない。

 なんというか、猫を飼うってこんな感じなんだろうか。

 黒猫、クロ猫……なんてな。


「タケルさ〜ん」

「……なんだその手は」

「だっこ!!」

「だ、だっこぉ?」


 変な声が出てしまった。

 まさかの要求に困惑しているとクロの顔はどんどんしょぼくれていく。玩具を買って貰えなかった子供の様だ。

 このまま放置していると泣いてしまいそうで、流石に泣かせる訳にもいかず仕方なしにクロを抱き上げた。

 この様子を見られた間違いなく酒の肴にされるだろうが、クロが泣いてしまえばそれもそれで酒の肴にされる。

 結局どちらにしろ逃げ道がないのだ。


「にぇへへ〜」

「なんか余計酔ってねぇか?」

「酔ってないれ〜す」

「ダメだこりゃ……」


 あー、もう、どうしろっていうんだ。

 もうこれ、このまま帰った方が良いのではないだろうか?


「あらあら、大変そうね」

「げっ……てマリーか」

「なによげって」

「何でもねぇよ……」


 まぁいいわ、と言いながらマリーはクロが座っていたところに座る。

 傍観せずに助けて欲しいんだが……。


「可愛い女の子にじゃれつかれてる気分はどう?」

「でかい猫みたいで世話が大変だなと」

「あら、嬉しいんじゃない?」

「……ノーコメントで」


 ふふっと小さく笑われた。

 まぁ、本音を言えば嬉しくないわけじゃない。頼られている、とは違うがクロは普段から大抵の事は自分一人でどうにかする。

 「手伝ってくれ」だの「助けてくれ」だの聞いたことがない。

 俺がいつも問題に巻き込んでいるから仕方ないのかもしれないが、偶にはこうやってクロに巻き込まれるのも悪くない。


「信用の裏返し、と受け取っておけばいいわ。クロは普段そんな酔い方はしないもの」

「変なところに信用を置かないで欲しいがな……」

「むぅ〜〜」

「ちょ、おま、暴れんな」


 抱きついているクロが身を捩って何かを訴えてくる。生憎、俺は人間だから電波語は全く分からない。


「ふふ、眠いようね。転移で帰してあげましょうか?」

「あぁ、頼む。悪いな」

「良いわよ、ちゃんと介抱してあげなさい」


 マリーの一言を最後に視界が歪んだ。

 気づけばいつものクロの家に居た。全く、便利なことで。

 抱きついているクロをベッドに寝かせると直ぐに眠った。

 俺も寝るか。明日は色々、やる事もあるからな。

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