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不死の死にたがりと異世界少女  作者: 陽炎 紅炎
第一部 四章 吸血魔戦争・後
31/43

会議

一言:最近暑いですね

 翌朝、ガドルから連絡を貰い、再びギルド長室へと集まることになった俺達。

 中に入るとガドル以外に見慣れない人達が大勢いた。ただ、よく見るとナナの姿もあり安心した。

 知り合いが居るというのは心強いものだ。


 ナナも俺達に気づいて小さく手を振ってくれた。

 俺は小さく手を振ることで、クロは小さくお辞儀をして返答した。


「さて、良く集まってくれた。知っているものもいるだろうが、まずは自己紹介をさせてもらう。俺はガドル・ジルヴァ、このギルドのギルド長をしているものだ」


 場の空気が引き締まる。

 皆、声こそ出していないが、ガドルの名前を聞いただけで顔色が変わった人が殆どだった。

 その人達の殆どが驚愕に染まっていた。

 実はガドルって結構な有名人なのか?


「マスターは先代の宮廷騎士団の団長ですからね。知らない人のほうが少ないです」


 隣に居るクロが小声で補足してくれた。

 そういえばそうだった……。

 大勢の前で険しい顔してるおっさんが、普段は陽気な声で大笑いしてるなんて誰が想像するだろうか。

 人は見かけによらないなと改めて思った。


「今、この場に居る殆どがこの国きっての職人達だ。諸君らに集まってもらったのは他でもない、造ってもらいたい武器があるからだ。それについての説明を今からしてもらう。会長さん出番だ!」

「承りました。ご紹介に与りましたケンジ・タカナシです。若輩の身ながらメリセアン商会の会長をやらせていただいております──」

「若僧、そういうのはいらねぇから用件を話せ」

「お、じゃあ敬語抜きでやらせてもらうぜ旦那」


 右目の下に深い十字傷がある厳ついおっさんが前置きに飽きたのか簡潔に話すように言った。

 ケンジも長い前置きを喋らなくて済み、気楽なようだ。

 そこからはすんなりと事が進んだ。

 ケンジが開発した対吸血魔用の武器と弾丸を誰がどれを造るかを決め、使用者に合わせた微調整、資金についてと会議は順調に進んで行った。


 少し話は変わるがケンジが吸血魔であることはガドルには明かしたが、周りの人達には伏せることになった。

 ガドルは「人間、生きてりゃ色々あるもんだ。言いたくねぇ事があるなら無理に言わなくても良いだろう」と割と寛容だったが「ただ、一組織の長としては無類の信頼はおけねぇ。暫く監視させてもらうぜ」とのこと。

 ケンジに関してはそんなところだ、ガドルからの信用はあいつ自身で勝ち取ってもらうしかない。

 俺とクロもケンジに助けられたし、悪いようにはならないだろう。

 閑話休題。


 俺はと言うとクロと一緒にナナの元で武器制作の話し合いを進めていた。


「クロはいつも通りの調整でいいのね?」

「はい、お願いしますねナナさん」

「任せなさい! んで、タケルのはどうするの?」

「俺は……どうすればいいんだろうな」


 ぶっちゃけ、銃の扱いはまだ素人の域は出ない。

 静止している的に十発打って四発当たれば上出来というレベルなのだ。


「うーん、それなら銃の調整はせずに篭手とか造ってみる?それなら普段と余り変わらないでしょ?」

「造れるのか?」

「ふふん、私を見くびってもらっちゃ困るなぁ〜」

「そうか、なら頼むよ」

「任せなさい! ってことでサイズ測るね〜」


 こっちも割とすんなり決まった。

 ケンジの方は大多数は決まったようだが残りの少数がまだの様だ。


「それじゃ早速製作に入るね! 明日には試作品ができるから昼頃にはうちに来てね!」

「わかった」

「了解です」


 忙しく、だが楽しそうに出ていくナナを頼もしく感じる。

 さて、他人ばかり心配していても仕方ない。まずは自分の事をしっかりしないとな。


「クロこの後時間あるか?」

「ありますけど、どうしました?」

「特訓に付き合ってほしいんだよ、俺一人じゃよく分からん」

「ふふ、良いですよ。行きましょう」


 何故嬉しそうなのか分からないが特訓に付き合ってくれるのはありがたい。

 少しでも魔力操作の練度を上げておけば役に立つかもしれない。

 少しでもクロを、この国を護れるようになるために。




 〇




「すぅ……ふぅ……」

「もっと自分の中に意識を向けてください」


 街外れにある森、俺は地面に座禅を組んで瞑想をしていた。

 額から流れる汗が顎の先から地面に滴る。

 こっちから頼んだこととはいえ、クロの特訓はやはりスパルタだった。

 やっていることは瞑想でも数時間ぶっ通しで休憩も限界まで削ってやっていれば体力の底も見えてくる。

 クロ曰く俺の魔力操作は()()()()()()()()()()()()()()()らしい。そのムラを無くすことができれば少ない魔力で大きな力を出せて良いこと尽くめだと言う。

 この瞑想は精神を研ぎ澄まし、より細かな魔力操作を行うためのもの。

 地味な特訓だが、これも基礎の部分で大事なこととはクロの談だ。


「雑念を捨てて自然を五感で感じて。魔力とは自然の一部、自分自身が自然の一部になることをイメージしてください」


 隣から怪しい宗教勧誘が聞こえてくる。


「雑念を捨てて」

「むぐ……。少しは手本を見せてほしんだが」


 瞑想の手本って何だと思うが、はっきり言って集中力も限界なのだ。

 実際にできればどんな感じになるのか自分の中でイメージを持っておきたい。


「はぁ、わかりました。ちゃんと見ててくださいね」

「あぁ」


 クロが目を閉じて一呼吸すると周りの空気が変わった。

 暖かいでもどこか物寂しい雰囲気に包まれる。

 今まで何気なしに使っていた魔力だが、考えてみると他人の魔力を直に感じたことなんて無かった。

 この世界では当たり前のことなのだろうが、神秘的なものだ。


 あぁ、成程。

 理屈で考えずにありのままの感覚で自然を感じろってことか。

 不意にクロの言っていた意味が分かった気がする。


「どうですか?」

「あぁ、なんとなくだがわかった気がする。ありがとな」

「……やけに素直ですね」

「照れてんのか?」

「ち、違います。ほら、さっさとしてください」

「はいはい」


 初めてクロに勝った気がする。

 そんなことはさておいて、もう一度座禅を組む。

 目を閉じて、意識を集中させる。

 頭の中を空っぽにして、時間、風、葉が揺れる音を感じる。

 呼吸も自然とゆっくりになっていく。


「もういいですよ」

「ふぅ……。どうだ?」

「できてましたよ。優しい魔力でした」


 どうやら出来たようだ。

 ただ、優しいという部分だけは引っかかる……。

 そんなことお構いなしに説明を続けてくる。


「さっきの状態はいわば集中状態。その状態を保てれは精密な魔力操作ができますよ」

「理屈の方はおいおい理解していく……」

「さぁ、次はより長い時間集中状態を保つ特訓ですよ」

「え……」

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