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不死の死にたがりと異世界少女  作者: 陽炎 紅炎
第一部 三章 吸血魔戦争・前
26/43

好機

一言:やはり戦闘描写は難しい。

 イールと別れた後、俺は気怠い目覚めを味わっていた。

 意識があるころにあった『何か』に引っ張られそうな感覚はすっかり消えていた。

 恐らくあれはイールが呼んでいる感覚だったんだろう。

 そう考えると何故、本能が警告を挙げていたのか納得がいった。


 さて、話の脱線も程々にしよう。今はこの状況から抜け出すことを考えろ。

 現状を見ると意識を飛ばす前と変わらず、俺は魔具に縛り付けられていた。腕や足についている拘束具も変わらず付いている。


 身体の怠さも相変わらず。だが、冷静になると生命力は吸われているが魔力は残っているんじゃないか?

 試しに手に魔力を集めてみるとすんなり集まった。どうやら俺の推察は当たってるみたいだ。


 ということはもしかして魔力で壊せたりするんじゃないか?


 いや待て、ここで仮に拘束を解けたとしてアルカから逃げ切れるのか?

 見る限りじゃアルカの姿は見えないがこの魔具が壊れたりしたら流石にバレるだろう。それに、一度脱出がバレたら二度と自力で脱出はできないだろう。

 一度しかないこのチャンス、活かすなら機会が必要だ。


「やぁ、目が覚めたかい?」


 薄暗い部屋の奥からアルカが出てきた。


「あぁ、快眠だったよ」

「それは良かった。流石に一週間眠り続けていたから死んだんじゃないかと思ったよ」

「生憎、吸血魔に引かれるくらいにはしぶといんだよ」

「みたいだね、安心したよ。そのまま大人しくしてくれるともっと嬉しいけどね」

「は、出ていくって言ったろ」


 それだけ言うとアルカは再び薄暗い部屋の奥へと消えていった。

 一週間も経っていることには驚いたが、それだけ時間が経っていてもアルカが此処に居るということはクロはここを見つけれていないってことか。


 ここから出るにはクロの協力も必要だ。どうにかしてクロに居場所を知らせたいがどうすれば……。

 というか、そもそも此処は何処なんだ?

 知らない場所で行動するリスクは身をもって知っているので慎重に行動するべきだ。

 ただ、自力で拘束を破って、見ず知らずの部屋から脱出してクロと合流。絶望的だな。

 俺は突き付けられて現実に気怠くうなだれた。




 〇




 あれから更に時間が経った。

 時計とかないからどのくらい時間が経ったかわからないが、あれから状況はあまり変わっていなかった。

 アルカは変わらず薄暗い部屋の奥から出てきていない。

 脱出する機会を探しているが迂闊な行動ができない分どうしても慎重になってしまう。


 ……いや、よく考えれば俺はまたクロを頼ろうとしてる。

 こんな様で良く護るとか言えたもんだ。全く情けない。


「そうだよな、機会は待つものじゃなくて作るものだよな」


 大きな深呼吸をして両腕と両足に魔力を集める。

 集めた魔力は魔具に吸収されることもなく順調に集まっていく。

 魔具を壊さず、拘束具だけを壊すようにできるだけ慎重に魔力を調節する。

 集めた魔力を炸裂させ拘束具を壊す。


 今までピンキリの調整しか出来ていなかったが、五割位までなら出力の調整ができるようになったのだ。と言っても、まだ細かい調節はできないからさっきのも『炸裂させた』というより『炸裂してしまった』方が正しいかもしれない。


 クロとの特訓も無駄ではなかったってことだな。

 さて、此処からどうやって脱出するか。


「――やっぱり、そう上手くいかねぇな」

「まさか、本当に拘束を破るとは思わなかったよ」

「出ていくって言ったろ。俺は約束は守るほうだぜ?」

「計画の要である君をみすみす逃す訳にはいかないな。今度はもっと頑丈にしてあげるよ」

「お断りだ!」


 右手に魔力を集め解き放つ。さっきと同じ五割で放った魔力をアルカは涼しい顔で避けた。

 アルカには不意打ちで一度負けている。今度は油断しない。

 最大限警戒してさっさとここから出て行ってやる。だが、その為にはアルカを退けなければならない。

 見る限り通路はアルカが出入りしていた奥の薄暗い通路しかない様だ。


 ――まずは、アルカを通路近くからどかす。


 もう一度右手に魔力を集めアルカ目掛けて解き放つ。

 アルカには避けられるが間髪入れず連続で魔力を放つ。しかし、その全てを軽々と避けられる。

 考えさせるな、もっと手数を増やせ!


「近づけさせないつもりかい? それならこれならどうかな!」


 俺の攻撃を避けながら大量の魔力弾を放ってくる。

 一発一発は大した威力はなさそうだが、何よりその量が俺の手数を優に超えている。


 とっさに魔力を両腕に集め、ガードの姿勢を取る。

 それが功を奏したのか、ダメージは余り無かった。

 だが、俺からの遠距離攻撃が無くなったアルカは一気に俺との距離を詰める。


 その勢いのままガードの上から回し蹴りをくらい、コアに叩き付けられる。そして、体勢を立て直す暇も与えられず壁に投げ飛ばされる。


「がはっ!」

「チェックメイトだね」


 俺の首を掴み、壁に押し付ける。そのまま、万力の様に徐々に力を加えられ呼吸が苦しくなっていく。


「おいおい、良いのかよ……。大事なコアが壊れるぜっ……!」

「心配はいらないよ、この程度で壊れるほど軟な造りはしていない!」

「そうか……」


 その言葉を聞いて右手に魔力を集める。

 少々予定とは違うが予定通りだ!


「それは、良いことを聞いたぜ!」


 集めた魔力を地面に放つ。

 床が抉れ、砂埃が舞い、視界が白一色に染まる。

 俺もアルカも衝撃で吹き飛び、互いを見失った。




 〇




「はぁ、はぁ、はぁ」


 薄暗い通路を走り続ける。

 通路には電灯こそあるが、今はそのことに安堵できるほど精神的な余裕は無い。

 どうにかアルカを退けることはできたが一時的なものに過ぎないのだ。


 すぐにここから脱出できなければ全てが水の泡だ。だが、いくつかドアを見かけるだけで出口は全く見えてこない。

 走り続けたこととは別に、焦りと緊張で息が荒くなってくる。


「タケルさん!」

「タケル!」

「クロ、とケンジと誰!?」

「自己紹介は後にしましょう!」


 それもそうだ。

 どうやら賭けには勝ったようだ。

 ケンジと見知らぬ人までいるのはわからないが、そんなことは後回しだ。

 走る勢いを止めず、そのまま四人で出口を目指す。


「お前らよくここがわかったな!」

「この施設の近くで地響きがあったので、もしかしたらって思ったんです」

「そしたらビンゴだったって訳よ」


 本当にタダのラッキーで肝が冷えそうになった。

 もしクロ達が近くに居なかったと思うとゾッとした。


「出口はこっちです。急ぎましょう」

「わかった!」


 クロ達の後に続くと広い部屋に出た。

 コアのある部屋と同じくらい広く、両端の壁には何やらカプセルのようなものがあった。

 暗くて中身までは見えないが、今はそれに気を取られている暇は無い。


「タケルさん避けて!」

「はぁ!?」


 クロの警告が聞こえたと同時に俺の後ろから魔力弾が飛んできた。

 避けろと言われても全力疾走の途中で方向転換できるタイミングは逃していた。


「こっちだ!」

「うごっ!?」


 突然横からケンジに襟首を捕まれ息が詰まる。

 そのお陰で魔力弾は避けれたが、喉にダイレクトに来た衝撃で胃の中身が出てくるかと思った。


「げっほ、うぇ、サ、サンキュー」

「お、おう。悪い……」


 床に倒れ伏す俺の背中を擦ってくれる。


「鬼ごっこは終わりだね」


 逃げ切れたと少しだけ期待したが、やはりそう上手く事は進まないらしい。

 俺達は戦闘態勢を取る。

 辺りに張り付いた緊張が走る。


「お仲間も到着とは、やれやれどうしたものかな」

「いい加減、諦めてくれると助かるんだがな」

「君もいい加減、僕の復讐のために快く協力してもらえると助かるんだけど」

「――俺は俺達の居場所を護る。だから、お前の復讐には付き合えねぇ」

「そうか。なら仕方がない、力尽くで従わせる!」

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