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不死の死にたがりと異世界少女  作者: 陽炎 紅炎
第一部 三章 吸血魔戦争・前
21/43

手掛かり

一言:祝20話!

 翌日、途中で起きてしまったこともあり微妙に眠気が残る頭で俺達は調査をしていた。

 深夜に違和感を感じた場所まで来たが特に何か特別なものがあるわけでも無かった。


「それで、何を見たんですか?」

「いや、見た気がするってだけだからな。正体を聞かれても困る」

「……ん、あそこ路地がありますね」


 クロの言う通り、少し先に細い路地があった。

 また路地か、この世界に来てからというもの路地に入っていい思い出は全くない。ガキが殴られていたり、クロが死にかけたりと碌なことにならなかった。

 かと言って無視する気にもなれず路地に入ってみることにした。


 まだ昼前だが路地の中は薄暗く、嫌な湿気もあった。

 できることなら何も起きないでほしい。

 そんな願いが通じたのか、路地では何も見つけられなかったが路地を抜けると広い通りに出た。


「大通りに出ましたね」

「通りで広いわけだ」


 これじゃあ追跡は無理だな……。

 人通りが多すぎるし、この通りに通じる道も多いだろう。

 一応、辺りを見ると通りの先に変わった建物があった。

 鉄でできた宮殿とビルが一体になったような建物で奇妙なセンスの建物だった。


「なぁ、あの建物なんだ?」

「あれはアイゼンの貴族の王城みたいなものです」

「みたいなもの?」

「アイゼンは王じゃなくて貴族が統治しているんです。だからその住まい兼集会場って感じです」

「なるほどな」

「行ってみますか?」

「入っていいのか?」

「一部ですけど一般公開されてる部屋があるんですよ。もしかしたら調査に関係あるものがあったりして」

「んなわけ。まぁ、行ってみようぜ」


 そんなわけで俺達は奇妙な建物に行くことにした。


 建物の中は博物館の様になっていて一部の人間からは有名な観光スポットらしい。

 ガラスケースの中には魔物の剥製、職人が作り上げた美術品、歴史に関する書物と様々だった。

 流石にこんな場所で吸血魔の情報が転がってるとも思えないが……。


「やっぱり目ぼしい情報は転がってねぇか」


 どれを見ても普通の展示品にしか見えない。

 わかっていたがやはり求めている情報はないだろう。

 それなりに広い建物中を彷徨いながらクロを探すと奥にあるデカい展示物のところに居た。


「何見てんだ?」

「あ、タケルさん。コアを見ていたんですよ」

「コア?」

「この都市全体のエネルギーの実に九割を占める装置です。まぁこれはレプリカなんですけどね」


 コア等、『魔力を持っていない人間でも魔法が使える道具』のことを総称して魔具と呼ぶらしい。

 魔鉱石を加工してできた魔鋼に魔法を封じ込める。

 それに魔力を流すことで封じ込めた魔法が発動するという仕組みになっているそうだ。

 コアは自然の生命力を別の魔具で吸い取り、コアに封じ込められている魔法で魔力へと変換して都市のエネルギーにしているのだとか。

 生命力を魔力に変える魔具、それがコアだと力説してくれた。


「それだと自然が枯れたりしないのか?」

「普段は自然のサイクルを崩さない程度に抑えているそうですよ」

「便利なもんだな」

「一歩間違えれば強大な兵器ですけどね。だからこそ、コアの場所や管理者とか具体的な情報は秘匿されてますし、この街の貴族でも一部の人間しか知らないみたいですよ」

「へぇ、でもあれば探すのが人間だろうに」

「名前も形も知らないものからエネルギー提供を受けてても気味が悪いでしょ?」

「確かにな」


 クロからの授業もほどほどに俺達は博物館を後にした。


 大通りに戻るとさっきと変わらず活気づいていた。

 やはり当てもない調査は行き詰ってしまう。

 前回だって偶然会長が吸血魔であることを自白してくれたから見つかった。


「はぁ、どっかに吸血魔専用の探知機みたいなのねぇのか」

「ありますよ」

「だよなー……ってあるのかよ!」

「はい、魔狼の血を預けたときにマリーさんにお願いしてて、マスターから依頼と一緒に渡されました」

「早く言えよ! 何だったんだよさっきまでの時間は!」


 上着のポケットから赤黒い結晶が付いているペンダントを取り出しながら、軽く謝ってくる。

 よくよく考えれば、昨日は街に付いたらすぐに依頼に取り掛かり終わったらすぐに寝てしまったからタイミングが無かった。仕方のないことだ。


「でもこれで調査が捗るでしょ?」

「あぁ、さっさと終わらせちまおう」


 クロが魔力を込めるとペンダントは薄く光りだし方位磁針の様に行き先を指した。

 その方向はさっきまでいた博物館のある方向だった。


「マジか……」

「本当にありましたね、手掛かり」


 意外とクロの戯言も馬鹿にできないかもしれない。




 〇




 ペンダントに導かれるままに博物に戻ってきたが、さっき見たコアのレプリカの前で止まってしまった。

 辺りを見ても特に何もなく、この先は一般公開はされていないので白昼堂々と入るわけにはいかない。


「どうするよ」

「ペンダントは下を指してるみたいですね」

「てことは地下か」

「……出直しましょう」

「だな、今回ばかりはお偉いさんに協力を仰ぐしかないだろうな」

「いえ、そういう事ではなく。夜になったらこっそりと忍び込みましょうってことです」

「……本気か?」

「冗談だと思います?」


 マジか

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