表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死ノ国  作者: 月島 真昼
二章
43/110

ユ・メイ=ラキ=ネイゲル 3



「よお、ガキんちょ」

 シンの本陣を訪れていたユ・メイが、ライを見つけて片手をあげた。

「こんにちは、ライさん」

 イ・シュウが丁寧に言う。

「こんにちは、ユ・メイ。シュウさん。どうしたの? シンになにか用事?」

「次に向けての打ち合わせです。関を越えればもう王の国――ゼタの膝元ですから」

「俺はいつも通りわーってやってぶっ殺せばいいと思うんだがなぁ」

「確かに。あの魔法の威力ならそれでいけるのかもしれないね」

 ライはゼタの騎兵を蹂躙した水の魔法の威力を思い出す。津波に等しい水龍の波濤が敵を打ちのめした。水であるためにその龍には刃も矢も、槍も通じず、縦横を自在に泳ぎ回り敵の隊列をばらばらにした。切り込んでいった河賊達は乱戦に慣れていて、龍によって乱れた戦場の中で遊ぶように敵を殺した。最強の魔法とされる『炎』の魔法に匹敵する威力を持っているように思えた。

「つってもいつもあの威力が出せるわけじゃねーんだがな」

「え、そうなの?」

「大将?」

「水場が近くにあって、地盤にも水気が多くないとあそこまでの威力は出ねーよ。あのときは川が近かったからな。最近は雨も多かったしよ。例えば雨の少ない大陸の北側なんかじゃあ、俺の威力は半減する」

「たいしょー……」

「あん?」

「大将の魔法はうちの軍の核です。詳細をそんな簡単にばらさないでください」

「おう、わるいわるい」

 まるで反省した様子なくユ・メイがからからと笑う。

 シュウが掌で目を覆った。この気苦労の絶えない副官にライは少し同情した。

「ええと、ライさんは」

「僕はもう帰るところだよ」

「え、ここを離れるのですか」

「うん、僕らはスゥリーンのことが気になってきただけだから。ほんとういうと、ユーリーンはツギハギって人のことも気にかかってるみたいなんだけど、その人は馬の国にいるんだ」

「我々の目的は王の国の奪還、および正常化、そしてゼタの排除。その先の馬の国まで攻め込むわけではありませんね……その余力はシン王も計算していないはずですし」

「そう、向こうまで行くのは長丁場になりすぎてしまうから」

「そうですか、ではおわかれですね」

「寂しくなるね。どうだ、あんた。これが終われば河の国までこないかい? 歓迎するよ」

「嬉しいけれど、恐い人に怒られちゃうんだ」

 ライはギ・リョクを思い浮かべた。

 戻った時にとくに進展はなかったよ!なんていえばカンカンに怒るんだろうなと思う。

「なんだおまえ。俺よりおっかないやつがいるのかい?」

 ライはユ・メイの顔を見て少し考えた。

「同じくらい、かなぁ?」

「ははっ。いいね、もしうちに遊びに来るときは是非そいつを連れてきてくんな。楽しくなりそうだ」

「きっとね」

 ライは手を差し出した。ユ・メイがその手を自然に握り返す。

「それじゃあまた」

「ああ、次はもっとおもしろい場所で会おうぜ」

 二人は手を離し、それぞれの場所へ向けて歩き出した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ