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臨界線のインフィアリアル  作者: 中田滝
一章
13/104

十二話「未知の魔術:中編」




リネリット魔術ギルドの最奥、

屋外修練場の魔法陣近くで仕事に戻るマレッタを見送った後、誰も居ない事を確認してから、作ったテーブルと椅子を砂に戻して風魔術で飛ばした。



上手く風に乗ったのを確認して屋内修練場へと戻ると、来てすぐは全て空いていた魔法陣が半分埋まっていた。

時折火花や水柱が見えるが中に入らない限り勿論害はないし、見た目ほどの音も聞こえてこない。

声は通っていたはずだけど、多少の防音機能がついてるんだろうか?

出来ることなら、ついていてほしいとは思う。

上手く飛べずに落ちた時の音を聞かれるのはかなり恥ずかしいからな。

失敗しなければいい話なんだが、マレッタの話を聞く限り相当難しそうだし、、、。


でも、どうしようか。

実のところ、まだどういうイメージで空を飛ぶのか決められていない。

紙を浮かせた時のように、風で勢いをつけてから飛ぶのが一番楽そうだが、体を浮かせるほどの風となると相当な強さになるし、加減が難しそうだ。

下手をすれば突風に煽られて結界に激突する事になるだろう。

となると、俺の乏しい発想力で考えられる方法は2つ。



■ジャンプする、もしくは高い所から飛び降りて体を浮かせてから周辺の重力を失くす。


■地に足が着いた状態で無重力にして体を浮かせる。



今すぐ思い付くのはこれだけだ。

一つ目の案で飛び降りるのを選んだ場合のみ、無重力にするのではなく重力の方向を上に変えなくてはならない気もするが、それはまたやってから考えよう。


、、、と、思ったが。


一つ目の案はとりあえず却下だ。

理由は、失敗した時に地面に打ち付けられる可能性が多分にあるから。

防音性能が定かではない状態で醜態を晒すのはいただけない。

となると消去法で2つ目の案になるわけだが、、、。

出来るんだろうか?

漫画やアニメなら空を飛ぶなんてものはザラにあるけど、創作物の世界の中でのものだから、勿論実際見た事はない。


(どうしようか、、、)


どうするのが最良か、頭を悩ませる。

イメージが出来上がらず不安ばかりが募るが、一度試してみるしかないか。









結論から言おう。

当然のように体を浮かせる事は叶わなかった。

いや、分かっていた。

分かっていたが、心の中で淡い期待を抱いてしまっていた。

ここまで、不安を覚えながらもとんとん拍子に上手くいってるから。



今の失敗で分かったが、やっぱりきちんとイメージを作り上げてから、魔術の発動に取り掛かったほうが良さそうだ。


(となると、イメージの基になるものを考えなくてはいけないわけだが)


浮くといって一番に想像するのは、宇宙飛行士がふわふわ浮いている映像。

でも、実際問題映像だけで見るという点ではアニメや映画と然程変わらないんだよな。

イメージを組み上げ易いのは、自分が体感したことや実際間近で見た事のあるもの。

その中で空を飛ぶ参考に出来るものは、、、、






「あ、、、、」






一つ、思い浮かんだ。

水中で浮かぶあの感じを再現すればいいんだ。

〝空中〟というわけではないが、浮かぶという点では一番想像し易いだろう。

見ただけではなく、授業などで幾度となく体感もしているし。

実際に水を大量に出すわけにもいかないから、あの浮かぶ感覚をイメージして、魔力を持って再現するだけ。





「ふう、、、」





目を閉じて全身の力を抜き、体を徐々に浮かせる感覚を思い出す。

自分が水中にいるようなイメージで、少しずつ、少しずつ体を水面に近付かせていく。



(、、お?ちょっと浮いてきた?)



数cmの浮遊も虚しく、目を開けたら一瞬で着地してしまった。

これは、今までのものとは桁違いの集中がいる。

今もかなり集中を高めたはずなのに、着地した時の感覚から推測すれば、近くで見ないと分からない程度の僅かしか浮かんでなかっただろうし。


だが、僅かでも浮かんだのは確かだ。

感覚を忘れない内にもう一度、目を閉じて深く息を吐いてから、、、


(そう、この感じ)


地面から徐々に足の裏が離れていく感触を感じる。

地面に体のどの部位も触れていない状態になったら、そこからさらに高く浮かび上がっていくイメージ。

ここからは、今の立ったままの姿勢なら、水中よりエレベーターのほうが想像し易いか。


徐々に高く、、、高く、、、、。


、、、これ、本当に上がってる?

目を閉じた状態だと、宙に浮いた以降の変化がわからない。

かといって、目を開けて油断して想定以上の高度から落ちる事になるのも怖い。

でも、ずっと目を閉じたままっていうわけにもいかないよな、、、。

いつまでも上がり続ければ、天井に頭を打つ事になるし。




(よし)




意を決してゆっくりと目を開ける。

イメージが頭から離れないように、自分は今無重力の中にいると強く念じながらそーっと。

両瞼の端以外が開いて、目の中央から石造りの内壁が見えたところで確信した。


(浮いてる!しかも、ちゃんと高く飛べてる!)


俺、もしかして結構凄いんじゃないか?

マレッタがあれだけ難しいって言っていたものを、数回のチャレンジで出来てしまうなんて。

これはちょっと調子に乗ってもいいんじゃないだろうか?





「・・・・」





ああ、うん。

高度を確認する為とはいえ、視線を落とすべきではなかったな。

足裏から魔法陣までは3m程の距離がある。

流石に、ここまで高く飛ぶとちょっと怖い。

喜び以上の恐さが込み上げてきたのは、言うまでもない事だ。


高い建物とかアトラクションでこの程度の高度なら全然問題ないしむしろ好きな部類なんだが、命綱もなく、落ちるかどうかは自分の集中力にかかっているこの状況は、少しの安心もなく不安になる。

何度か深呼吸をしてから、意を決して、正面に向けていた視線を再度、真下に落とした。



「うわ、、」



落ちても構えていれば然程問題ない高さであるとはいえ、見てしまうとやっぱり怖い。

恐怖でイメージが崩れ、空中で少しふらついてしまった。

緊張で強張って足が攣りそうだ。



「ふぅ、、」



今一度深く息を吐いて、恐怖を出来得る限り薄める努力をする。

これで終わりじゃなくて、ここから空中を自在に移動出来るようにならないと駄目なんだよな、、。

リビィ曰く風魔術と組み合わせるって事だから、おそらく進行方向に向かって適度に風を吹かせるんだろうけど、、、。

この状況まで持ってこれたからこそ、それをする事の難しさがはっきりと分かる。

浮かび続けるだけでもかなりの集中力がいるのに、これを保ったまま風魔術を使わないといけない。

それも、威力の微調整を繰り返しながら。

そうしなければ、透過板を持っている今では、結界をすり抜けてしまう。


最初はそよ風程度で、少しずつ強くしていこう。

ひとまず、前方から自分に向かってそよ風を吹かせて、、、。




威力が弱過ぎた。

吹かせた風は、ローブをほんの少しはためかせるだけで後ろへ流れていってしまった。

次はもう少し。

もう少しだけ強めてみる。



(、、うおっ)



一度目の倍ぐらいをイメージして風を吹かせてみると、少しだけ体が後退した。

それに驚いて、少し高度が下がってしまったが。

元の位置に戻って、今の風の威力を忘れない内に、今度は背後から風を吹かせてみる。


(よし、大丈夫)


きちんと体が動く事を確認した後、同じ強さの風を前後から順番に吹かせる。

前、後ろ、前、後ろ、、。

空中で2m程の範囲を前後に動くだけという、見えない二人の敵に交互に殴られているような動きが完成したところで、少しずつ風を調節して左右の動きも加える。

これで、直線的ではあるが、とりあえず前後左右はある程度自在に動けるようになった。


(とはいえ、、、)


想定していたより、かなり疲労感が強い。

精神力もそうだけど、普段味わわない感覚を体に与え続けると、筋肉が強張って変に力が入ってしまう。

まだ時間はあるだろうから、少しくらいなら休憩しても大丈夫か、、、。








朝、ここに来る途中にウルから言われたのは、

〝仕事が終われば迎えに来る。それまで魔術の訓練をしておけ。おそらく、日が傾き始めた頃には迎えに来られるだろう〟

という連絡事項だった。

仕事に行く前に連れて来てもらって仕事終わりに迎えに来てもらうなんて保育園みたいだなと思ったが、言っても伝わらないだろうし心の中での自己完結に留めた。



多少の余裕が出始めてから感じるが、正確な時間がないのは結構不便だ。

いや、まだ聞いていないから本当はあるのかもしれないけど。

日本なら至るところに時計があったし、時計がなくとも携帯を見れば何処にいても時間が確認出来た。

そんな生活が窮屈に感じる事もあったが、突然一切の時計がなくなるとそれはそれで不安を感じるものなんだな。

俺に太陽の位置を見て時間を把握出来る程の知識があれば、、、。

それがあったところで、こっちの世界で意味を成すのかは分からないけど。



とりあえず、もう少しだけ休憩したら訓練を再開する事にしよう。

今日の目標としては、この魔法陣の中を自在に飛び回れるようになることかな。

流石に外に出て景色を楽しみながら空中浮遊を楽しむなんていきなり出来るわけないだろうから。

いや、今の調子なら上手くいけば今日中に出来るのかもしれないが、そこまで集中力を保たせる自信がない。

外で集中が切れて落下したら、どんな程度の怪我を負うか分からないし。

ひとまず、集中力を少しでも回復させる為に今は体と頭を休めよう。


占領して申し訳ないと思いつつも、魔法陣の上にマレッタから借りた毛布を敷いて、その上に適当に作った岩の椅子に座り、背凭れに体重を預ける。

魔法陣との間に毛布を一枚挟むだけで、魔力を注ぎ続けていなくとも崩れないらしい。

簡単楽チンで便利だ。


座り心地の悪過ぎる硬度に悪戦苦闘ししながら、漸くマシな体勢を見つけ、その体勢で固定して瞼を落とした。

15分くらいで起きれるかな?
























「待たせたな。どうだ?魔術の使い方は分かってきたか?」


少しの休憩の後、魔法陣の中をぎこちないながらも自在に動けるようになった頃、仕事を終えたウルが迎えに来た。

突然中に入ってきたせいで気が緩んで落ちそうになったのはバレてないと思いたい。

危うく床に叩きつけられるところだった、、、。

ウルの言葉に返答する前に高度をゆっくり下げて、おおよそ一時間振りの地面に足をつける。




「、、、あれ?」




着地を確認してから魔術を解くと、足に上手く力が入らず膝が地面スレスレまで落ちた。

何だろう。

フラフラする。



「大丈夫か?」

「は、はい。ずっと浮いてたから感覚がおかしくなったんですかね、、?」



宇宙飛行士が地球に帰ってきた時に自力で立って歩けないように、俺の体も重力への適応力を一時的に失ってしまったのかもしれない。

支えてくれようとするウルを手で制して、軽く屈伸してからゆっくりと立つ。



「普通、そんなになるまで集中力保たないだろ、、。どれくらいやってたんだ?」

「マレッタさんとお昼を食べてから今までずっとです。途中少しだけ寝ましたけど、土魔術で作った椅子は寝心地が悪くてすぐに起きたので、殆ど休んでませんね」

「俺が押し付けた課題とはいえ、まさかそこまでやるとはな、、。朝伝えた内容、どこまで出来るようになった?」

「えっと、、」



ウルに今日習得した魔術を伝える。

全魔術の強化版と、少しだけ飛べるようになった事。

強化版は身振り手振りを加えて、出来るだけ詳細を伝えられるように努力した。

強面の顔が一つ伝える度に少しずつ険しさを増していっているのが気になる。

え?

もしかして全然ダメだった?

自分としては、結構頑張ったほうだと思うんだけど、、。

最近の若い奴はとか、こっちでも言われてしまうんだろうか。




「ケイト。お前本当に魔術使うの初めてか?」




報告が一通り終わった後のウルの言葉は、予想していたものとは全く違っていた。

なんでそんな当たり前の事を聞くのか。



「間違いなく前回ウルさんに教えていただいたのが初めてですよ。前居た世界には魔術なんてものはありませんでしたから。〝科学〟ならありましたけどね」

「科学?」



あれ?

てっきり前の訓練の時に話したと思ってた。

気のせいだったか。



「はい。この世界で使われている魔術に似たものを、誰でも簡単に使えるようにする技術、みたいなものです。魔術がない分、頭と時間を使って文明を進めてるんですよ」

「なるほどな。それならまあ、少しは納得がいくか」

「納得、、ですか?」

「ああ。使ってみて分かったと思うが、魔術を覚える上で一番苦戦するのはイメージだ。同じ現象を起こす方法を魔術以外に知っておかなくては、イメージを作り上げる事が出来ない。未知のものを再現することは出来ないからな」



確かに、マッチを知らなければ火魔術を使う事は出来なかっただろうし、水に浮かんだ事がなければ重力魔術のコツは掴めなかったと思う。

魔力はないが、科学に身近で触れている転移者こそ、魔術の使用に適性を持っているのかもしれない。



「お前がさっき言っていた〝科学〟というものはこの世界に、、、いや、魔人域にはないからな」

「魔人域には、ですか?」

「ああ。武人域にはそれに似たものがある。科学ではなく、恩恵と呼んでいるが」



ウルも詳しい仕組み等は知らないらしく、詳しい情報は得られなかった。

だが、科学に似たものがあるのなら、魔力のない俺は武人域に住んだほうがいいんじゃないだろうか。

そう思って、ウルに聞いてみた。



「結論から言おう。お前は武人域に渡れない」

「えっと、、なんででしょう、、」

「初めて聖域の向こう側へ渡る時は、一年前から通行の許可を申請しなくてはいけない。その際、腐愚民でないかどうかの検査をされる」

「あ、、、」



つまり、申請をした時点で詰みという事だろう。

いや、もっと前の段階。

魔人域側へ転移してきた時点で詰みとも考えられるか。



「諦めます」

「そうしておけ。だが、悪い事ばかりではない。科学を知っているおかげで、お前は凄まじい速度で魔術を習得出来ているのだからな」



不器用なウルのフォローはなんだかくすぐったい。

本人は、フォローしているつもりすらなさそうだけど。



「マレッタさんにも驚かれたんですが、そんなに早いんでしょうか?同時に魔術を始めた人がいなくて実感が湧かないんですけど、、、」

「俺も覚えるのは早いほうだったが、それでも今のお前みたいに飛べるようになるのには二月と少しかかった。おそらく、この早さで習得した事のある魔人はいないだろうな」



あれ?

マレッタにさっき聞いた話だと、最短でも飛べるようになるのは三月掛かるって言ってた気がするんだが、、。

褒められてるのは分かるが、あまり素直に喜べない自分がいる。

、、まあうん。

きっと、ウルが特別凄いんだろう。

なんたって魔人の中で三指に入る実力者なんだからな。

そう思い込むことにしよう。

そうでもしないと、半日頑張った自分を褒める事が出来なそうだから。


それよりも。

マレッタに話を聞いた時に浮かんだ疑問が、ウルの驚き方を見て益々大きくなってきた。

なんでそんな難しい事を今日一日の課題にしたんだろう?

魔人の中で三指に入るウルですら二月掛かった事を、魔術を覚えたばかりの俺にさせるなんて無謀であるとしか思えない。

何か打算があったんだろうか?



「ウルさん。一つお聞きしてもいいですか?」

「なんだ?」

「今日僕に与えた課題、本当に全部出来ると思ってました?」

「いや、全く」



チョットドウイウコトデスカ。

何の淀みもなく、ウルに否定の言葉を投げつけられた。



「本来一朝一夕で習得出来るものではないからな。それでもお前なら何か感覚は掴むだろうなとは思って無理難題を押し付けた。まさか全部熟すとは思わなかったが、、」

「そうだったんですね、、。出来なかったらどうしようって結構焦ってました、、」



それならそうと予め言っておいてほしい、、。

余裕があるのであれば他の魔法陣で訓練している人達を見て学んだりもしたかった。

重力魔術のコツを掴んだから、結果オーライではあるんだが。



「悪かったな。だがケイト、何故そんなにも必死に覚えようとしてくれている?以前話した事が原因か?」

「原因っていうほど悪いものじゃないですよ。ウルさんに言われたからっていうのも勿論ありますけど、個人的にリビィさんもセナリも守れるようになりたいですから。あ!決してリビィさんをそういう目で見ているわけではないですからね!」

「大丈夫だ。もうお前をそこまで疑ってない」



本当だろうか、、?

鬼の形相で手に炎を浮かべるウルの姿が脳裏に焼き付いて、どうしても疑ってしまう。

これが実は引っ掛けで、迂闊な行動を取った瞬間に消し炭にされるとかそういうのじゃないよな、、、。

探るような視線でウルを見た後、きっとそんな卑怯な手ではないだろうという結論に至った。

ウルが信用してくれているように、俺ももう少し。

ウルを信用しよう。



「ありがとうございます。あと、実は結構楽しいんです。自分で火を出したりとか、空を飛んだりとか。妄想の中だけだと思ってたことが現実になっている事が。想像してたより遥かに難しいですし、魔力が無いっていう難点はありますけど、それでもそれを上回るぐらい楽しいんです。なので、まだまだ初心者ですが、これからも教えていただけると有難いです」



魔術を使っていると、まるで、自分が創作物の主人公になったような、そんな気分が味わえている。

まだまだ基礎ばかりで、よく見ていたチート主人公のような事は出来ないけど。



「分かった。お前の覚えの早さなら、あっという間に形成単語も教えられそうだな」

「やっぱり難しいんですか?」

「いや、どちらかといえば空中を飛び回るほうが遥かに難しい。決められた単語を覚えなくてはいけないという難点がある分、イメージは大まかでも使えるからな。かといって込める魔力を間違えれば大惨事になるが」



大惨事と聞いてすぐに浮かんだ初日の魔術訓練の事は、口に出さないほうがいいだろう。

それに、あれは形成単語ではなくて精霊魔術だったはずだ。



「そうなんですね。出来るだけ早く覚えれるように頑張ります」

「ああ」



全貌とまではいかないが、今日で魔術の何たるかを少しは理解出来たし、コツは掴めた気がする。

後はイメージを出来る限り素早くする事と、読み書きの習得と形成単語と精霊魔術か、、、。

、、、、多いな。

今はとりあえず、あれこれ考えるのをやめておこう。

これ以上頭を使うと、明日を惰眠で潰してしまいそうだ。

何も話さずただ帰り道を歩いている今でさえ、頭がボーっとしているのに。


(そういえば、、、)


ウルに何か聞こうとしてた気がする。

なんだっけな、、、。

何か魔術についての事で、、、。

えっと、、、、あ!そうだ!



「そういえばウルさん」

「なんだ?」

「植物魔術ってご存知ですか?」



思い出したのは、植物魔術について聞こうとしていたという事。

あの精霊魔術でも自家魔術でもなさそうな不思議な魔術を、ウルなら知っていると思ったのだ。



「ああ。それがどうかしたのか?」

「正確には植物魔術と言うのか分からないんですけど、今日それを使う子と知り合ったんです。形成単語も精霊魔術も使わずに何も無いところから沢山の花を咲かせていたので、何か特別な力を持っているんじゃないかと思って」

「、、、ケイト」

「はい」

「その事はひとまず俺以外に話さないほうがいい。詳しくは調べてからまた話すが、まず間違いなく、言わずにおいたほうがそいつの為にもなる」

「、、、分かりました」



ベルの為だと言われれば、それ以上の追及をやめざるを得ない。

でもなんだろうか。

ウルの様子を見て、胸中に違和感が浮かんでいる。

それはおそらく、ウルの強張った表情と声色からくるものだと思う。

真剣で、それでいて緊張しているような、、、。


何がウルの表情を変化させたのか。

その全ては分からないが、ベルの事を知っていて、その上で何か(・・)から庇おうとしているという事だけは分かり得た。

その何か(・・)が何なのか、今のところ検討もつかないけど。




ウルの表情が、声色が。

落ちていく陽に同期して、体に重くのし掛かって深く詮索するのを躊躇わせた。

ベル。

一体何を抱えてるんだ、、、。

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