第18話ですわ!
『川べりの森』は以前説明した通りビギナー用のダンジョンですわ。
川が側にあり、『釣り』のスキルを持っていれば釣りができます。
釣ったお魚は『料理』のスキルを持っていればお料理の素材として使えますわ!
ふふふ、というわけでわたくしにはエルミーさんに勝利する為の秘策がございます!
そう!
「エイラン様、もしかして『釣り』や『料理』のスキルをお持ちではありません?」
「え? あるよ?」
おーっほっほっほっほっほっ!
これでわたくしの勝利は確定したも同然ですわ!
『貴族』の身分からスタートしたら、この『釣り』や『料理』のスキルはゲットできませんの!
ですから『上質』な『魚』を『料理』して持っていけば、確実にわたくしの勝利ですわ!
おーっほっほっほっほっほっ!
わたくしもこの実践訓練で『狩り』スキルを覚えれば、試験は合格ですし!
おおおおっーほっほっほっほっほっ!
「では早速川で釣りを致しましょう! 教えてくださいませ!」
「へ? モンスターを狩るんじゃないの?」
「後回しですわ! ご安心ください、わたくしスキル『集敵』と『挑発』を持っております! 悪役令嬢固有スキル『嗾ける』もございますわよ! それでモンスターを集めてエイラン様に狩って頂ければあっという間ですわ!」
「は、はあ……」
このスキルはヒロインを虐める為のスキルですわよ!
シナリオの中のキャロラインは悪役令嬢としてとても優秀ですから!
わたくしもシナリオのキャロラインに負けないように『集敵』と『挑発』を新たに習得しましたの!
わたくしだって学院に通っているのですから、新たにスキルを習得するくらいの事できますわ!
まあ、普通ビギナープレイヤーは習得しないスキルですが。
「……けど、ずいぶんオレの事を高く評価してない?」
「え? あら、謙遜なさらなくてよろしくてよ? 双剣スキルをお持ちの時点でビギナープレイヤーさんではありませんでしょう?」
「! 分かるんだ?」
「先程申し上げた通り、わたくし特別なNPCですの! それにこう見えてわたくしも双剣スキルは——」
……双剣スキルは……。
「…………使っていた、事、が…………?」
「え、そうなの?」
「…………?」
そんな事ありましたっけ?
いえいえ、わたくし生まれてこのかた学院から出た事は…………あ、いえ、これは、多分あの夢の中の……わたくしが『誰かと冒険していた』夢の情報ですわ。
無意識に言葉として溢れてくる。
これは、わたくしが忘れている、わたくしが思い出そうとしている思い出……!?
「…………あ、あの! エイラン様……ご相談がありますの!」
「え、なに?」
「実はわたくし、NPCでありながら不思議な記憶の混濁が見られますの。バグかと思ったのですが……それにしてはなんだか違う気がしますし……」
「バグ? 運営に報告したら……あ、でもキャロラインさんはNPCなんだっけ? ……ん? NPCのバグってメンテナンスで直るんじゃないの?」
「メンテナンスがいつ行われているのかはよく分かりませんわ。このゲームはシステムAIが自動で随時メンテナンスを行っていますから……。それでも直る兆しがありませんの」
「そうなんだ……オレから運営に報告しておこうか?」
「いえ、それは……」
そうした方が良いのは、分かっていますの。
でも、わたくしは今のわたくしの方が、多分、好きですし、自分の役目は分かっていますわ。
「そうではなくて、わたくし時々自分が昔『プレイヤー』だった気がしますの。今もあのように『双剣スキルを使っていた』感じがありまして……」
「ああ、そんな事言ってたよね……プレイヤー、だったの?」
「よく分かりません……。でも、思い出せるならはっきり思い出したく思います。なんだかそれが必要な気がするのです……」
「…………記憶喪失……みたいな?」
「それとはまた違うと思うのですが……自分が誰なのかがどんどん曖昧になっている感じがするのです。わたくしはこのゲームのNPC……悪役令嬢キャロライン・インヴァーであると……そう信じ込まされている……ような……」
「えぇ……? なんか、それは……怖いね?」
「はい」
言葉にして、違和感の正体が掴めた気が致します。
わたくしは……悪役令嬢キャロライン・インヴァー。
そう、これまでははっきりと言えたのに、今はそこにわずかな違和感があるのです。
思い出した、となぜあの時思ったのか。
その記憶が誤りだと疑いもしなかった。
ここは……ゲームの世界です。
こうしてプレイヤーさんとお話ししているとどんどん違和感が増していきます。
なぜでしょう…………エルミーさんと話している時はさっぱりそんな事ありませんでしたのに!








