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第11話ですわ!



 ……あの日から……入学式から一週間後のあの日から……わたくしの日常と計画は儚くも崩れ去りました。

 プレイヤーさんであるエルミーさんは自称ドMで、叩かれたり罵られたりするのが大好きなんだそうです。

 いつもわたくしに「叩いてください!」「殴ってください!」「お尻蹴ってください!」「縛ってください!」「罵ってください!」「詰ってください!」「罵倒! 罵倒カモーン!」「美少女の恐怖に歪む顔フォーーーーーゥ!」……等、強要してこられるのですわ。


 わたくしが!

 思ってた!

 悪役令嬢ライフじゃ、ありません!


 い、一体どうしたら……。

 悪役令嬢らしく振る舞うにしても、エルミーさんの言動が怖くて思ったように体が動かなくなってしまいます。

 これではハイル様に嫌われるどころではありませんわ!

 お、お祖父様やお父様に相談してみれば……いえ、なんとなくエルミーさんはそれすら喜びそうなんですよね。

 プレイヤーは貴族の設定ですが、ゲームなので家に圧力をかけたところで効果はないでしょうし。

 ……そもそもあの方に効果があるとも思えませんし……。

 し、しかし、今日は確か孤立したプレイヤーさんがハイル様とお食事をされる日のはずですわ!

 チュートリアルで『剣』『弓』『槍』『銃』『斧』の最低限の武器の知識を得たら起きるイベントなのですわ!

 ですから、今日! 今日食堂でプレイヤーさんはハイル様とお食事をされるはず!

 それを見届けてからわたくしはプレイヤーさんに張り手とお水をお見舞いするんですわよ!

 そして、帰宅してから毎日練習してきた高笑いを、今日こそ……!


「キャリー、今日は食堂で一緒に食事しないか?」

「え?」


 意気込んでいたわたくしが席を立つと、ハイル様が笑顔で近づいてこられましたわ。

 あ、あら?

 ハイル様、本日は用事(イベント)があるはずなのに……?


「……え、えーと、その、せ、生徒会のお仕事はよろしいんですの?」

「ああ、最近奇行の多い例の女生徒のせいで仕事が立て込んでいたが……片付けた」


 …………。

 し、仕事を、ですわよね?

 ハイル様、お目が怖いです!?


「なんにしても今日は! 邪魔が入らないはずだ。行こう」

「え、え、あ……えーと」

「そ、それとも友人の誰かと約束していたのかい?」

「いえ」


 それは特にないのですが。

 お食事の後、少しお話致しましょうとお約束している方々はいるのですわ。

 あまり皆様を巻き込みたくはありませんが、ゲームのイベントでは取り巻きと共に登場していましたので、一応それっぽく振る舞おうと……。

 もちろんエルミーさんに張り手をして、水をかけるる役目はわたくしがやりますわよ?

 それも、お食事後ではなくハイル様とエルミーさんが一緒にいる時にやる予定なのですわ!

 わたくしの目的はハイル様にも早めに嫌われる事ですから!

 ハイル様の目の前でエルミーさんを虐めるんですわ!


「では行こう」

「はい。……………………」


 あれ?




 もぐもぐごっくん。

 はあ、大変美味しく頂きましたわ〜!

 こんなにゆっくりお食事を楽しめたのは久しぶりです!

 ゲームの中であるという事を忘れてしまいそうになりますわね〜。


「…………」

「はっ! し、失礼致しました」

「いや、気にしなくていい。美味しかったかい?」

「はい! とても!」


 そういえば最近はお友達のNPCたちと差し当たりないサクッとした味気ない昼食を個室で食べてばかりでしたから、ハイル様と一緒にゆっくり雑談しながら食べるお食事は久しぶりですわね。

 ハイル様とお話ししながらですと、同じメニューもとても美味しく感じますわ。

 それにしてもハイル様は今日とても上機嫌ですわね?

 なにか嬉しい事でもあったのでしょうか?

 それに、本日はエルミーさんとのお食事のはずなのに……わたくしのご機嫌とりをわざわざなさるなんて。

 わたくし放置されても構いませんのに。

 いえ、むしろ積極的に放置してくださらないと。


「…………」


 わたくしを喜ばせても仕方ないのですわよ、ハイル様。


「それで、キャリー……学院にも慣れてきたし、今度どこかへ遊びに行かないか?」

「え?」

「狩りでもいいし、採集でもいいな。それとも、町のお菓子屋さんに行ってみるかい?」

「…………え……」


 狩り? 採集?

 ええ、それは……貴族であっても、スキルがあればそれは普通に行いますわね。

 だってここゲームの中ですし……。

 お菓子屋さん、も……もちろんとても興味深いですけれど……。


「えっと、ど、どうしてですか?」

「え? どうしてって、最近一緒に出かけていなかっただろう? 俺が生徒会で忙しかったせいもあるけれど……」


 え? ご機嫌とりの為にわざわざお出かけを?

 ハイル様の貴重なお休みの日を、建前の婚約者の為に?

 そんな、申し訳ないですわ。


「それとも、行きたいところがある?」

「い、いえ……特には……」


 ですのでお断りします。

 わたくし行きたいところはございません。

 ハイル様、どうぞわたくしの事は気にせず、エルミーさんとお出かけを……あ、そのイベントはまだ先ですわね。


「じゃあ洞窟探検に行こう! 学院の側にある初心者用の『小さな洞窟』! あそこなら大して危なくないし、時々金が採れるらしいし!」

「へ!?」

「金が採れたら、加工して……装飾品にするよ。それで、キャリーに贈っても良いかな?」

「……っ、え、あ……わ、わたくしに?」

「ああ。嫌か?」

「……い、い、いえ! 嫌だなんてそんな!」

「じゃあ決まりだ。明後日でいいかい? 色々下準備しておかなければいけないからね。色々。色々と……」

「? は、はい、分かりましたわ」


 下準備?

 良く分かりませんけれど、ハイル様のお仕事の関係でしょうか?

 とても強調なさいますのね?

 ……明後日……明後日、ハイル様と冒険に……!


「楽しみですわ!」

「俺もだよ」


 でもなにか忘れているような?

 なんだったでしょう?




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