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大神殿 1

その後ひとしきり、件の話をセリカから聞いていると、コンコンと扉が叩かれた。


まぁ、これだけ広い部屋があるような家だ、きっと立派な建物なのだろう。

他に誰か居たところで何ら不思議ではない。


「入ってもよろしいでしょうか?」


女性の声がそう尋ねてきた。

決して大声というわけでは無かったのだが、ドア越しでも良く通る声。

なんとも柔らかい印象をその高めの澄んだ声色に感じた。


「どうぞお入り下さい、鍵は開いております」


俺が答える間も無く、椅子に座ったままで扉の方向に顔だけを向けセリカが答えた。


ギイィィィ、と木の軋む音を立てて高さ3メートル以上はあるであろう扉が開いた。


「お初にお目にかかります、わたくしは大天使セラ。主よりあなた様方お二人と、天界の伝令役を仰せ付かりました。 私の知らない魔法の力を感じたので、もしやお目覚めになられたのかと思い様子を伺いに参りました」


金色で細やかな細工の入った祭服に身を包み、二対の大きな翼を持つ天使が扉の外から現れた。

ミトラといっただろうか、頭には冠のようなものを被っている。


眩い金髪に片目が隠れる前下がりボブのような髪型。

隠れていない若干垂れ目ぎみの大きな瞳は、蒼く神秘的な輝きを帯びていた。


つい比較対象に例のギャルを持ち出してしまったのは言うまでも無い。

180°対極の存在と言っても過言ではないだろう。


「このイルミンズール大神殿で大司教として仕えております。 お二人の事情につきましては智天使ケルビム様より聞き及んでいます。 微力ではありますが、不安無くお過ごしいただけますよう尽力いたしますので、よろしくお願いしますね」


口調は優しいものの、淡々と文章を音読でもするように話していくセラという天使。

ちょうど奴の姿を脳裏に思い浮かべたところで、その名前を耳にしたことによりイライラが再燃した。


想像の中で、奴の大きな尻を角材でフルスイングして殴打するという制裁を加えた。

しかし……、あれはエロいケツだったな。


「大神殿の中は自由に使用していただいて構いません。夕食の刻限になりましたらまたこちらの部屋にお迎えにあがりますので、仔細はまたその時にでも。それまではゆっくりお過ごし下さい」


小柄な見た目と幼い顔立ち、身長150センチに満たないぐらいだろうか。

落ち着いた物腰と丁寧に話すその様子が、容姿とのギャップを強くする。


残念ながら俺にロリ属性を嗜好する趣味は無いはずなのだが、相槌すら挟むことも出来ずに、そのセラと名乗った天使から目が離せないでいた。

絵画的な美しさとでも言うのだろうか?

先程のギャルはさしずめ、コスプレAVのパッケージってところか。



「ところで、アンドウ様はなにゆえ全裸でおいでなのでしょうか?」



それに気付いてくれるとは、まさに天使だ、……いや天使なのだが。

ようやくこの可及的速やかに解決せねばならぬ問題を指摘してくれたようだ、俺が一糸纏わぬ全裸という問題に。


「……セラさん、俺は別に全裸になるという歪んだ性的な趣味があるわけではなく、……これはその、なりゆきですっぽんぽんで、もちろん陰部も一糸纏わず丸出しなわけであって……」


何か着るものを持ってきて欲しいと言えばそれで済むはずなのだが、自分でも何を言っているのかわからない状態になりしどろもどろしていると、ふいに隣のセリカと目が合う。


セリカは一瞬、えっ、そうなの? という表情になった後、ハッと何かに気付いた表情になってから、セラの方を向き言った。

あの、貴女は何故驚きの表情を一瞬浮かべたんですか?


「ご主人さまに何か着るものを持ってきて下さい、セラさん」


少し上擦った調子でそう言った後、セリカはこちらに向き直るとにっこりと微笑んだ。


たった今浮かべた疑問の表情は、俺が全裸になるという趣味が無い事に対してなのか?

セリカ自身が、俺が全裸である事を忘れていたからとでもいうのだろうか?


追求するほどの気概は俺には無かった。


ともかく、これで晴れてフルチン状態からの解放となりそうなことに静かに安堵を覚えた。



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