学院最弱になります!
魔法それは世界の構造を書き換えるものである。太古の昔この世界は膨大な魔力を持ち世界を支配しようとする魔王とその眷族である七爵位、魔物と呼ばれる魔力を持った悪魔たちと世界を守ろうとする四大守護神と呼ばれる王の使いたちによる争いが続いていた。たくさんの命が失われる酷い大戦が何年も続いたが最終的には四守護神たちが自分の命と引き換えに魔王を封印することに成功しその事は今も英雄譚として語り継がれる。ノエルディア学院。それは、15歳以上の子供が国の義務として通わされる学校の一つだ。そこでは正しい魔法の使い方や魔法の種類、詠唱の仕方などを教えてくれる。また、そこから優秀な生徒6人を学院の代表として年に1度ノエルディア学院とその他の3校で行われる魔法戦争と呼ばれる大会に参加する。だが、この学院からはまだ優勝者が出たことは無い。なんでもクレリア学院、レイディアント学院、ノグレスト学院の3校とうちのレベルはかなり違うらしい。特にこの魔法戦争が始まってから無敗のレイディアント学院は別格という話だ。魔力、魔法の使い方や詠唱の速さどれをとっても一流の魔術師と遜色ないらしい。俺、御剣 シュンはノエルディア学院に入学することになった。
「新入生の方はこちらからお入りください!」
見ると教師が受付をしている。
「すいません。今日から入学する者なのですが」
「はい、では、お名前と歳を教えてください」
「はい!御剣シュンです。歳は15です。」
「御剣シュンさんですね...あ、はい確認できました。ようこそ学院へ!あちらの先生の所で適性検査を受けてください」
右手で指した方に移動する。
「ここが...ノエルディア学院か...」
ここが...魔法学校内最弱...
「すいません。適性検査いいですか?」
教師は急に話しかけられ一瞬驚いた顔をしたがすぐに笑顔で答えた。
「はい。どうぞこちらにお座り下さい」
教師に誘導された席につく。席につくと教師から適性検査の説明が始まった。
「こちらの魔晶石に手をかざして魔力を注ぎ込んでください。その魔力でA~Eで判定されそれがモニターに映し出されます。それをこちらが記録するので」
「はい。分かりました」
学院では魔力の力によりランクづけされておりA~Eで判定されるのだ。もちろんそれは形式上のものでそのあとにある模擬試験の結果次第では動くことがある。
「では、お願いします」
俺は魔力を注ぎ込んだ。すると魔晶石は淡く輝いてモニターに俺のランクが表示された...
「...F...だと...」
教師が信じられないと言ったふうに呟いた。
「きっと機会の故障だもう1回測ってみよう!」
そう言われて俺はもう一度魔力を注ぎ込む。
Fモニターにはその文字が表示される。
「ありえない...」
教師はまだ夢でも見ているように信じられないと言った感じだ。だが、驚くのも当たり前だ。まずこの機会は確かにFまでは測れるようになっている。しかし、F程度の魔力というのは3歳児の魔力量と同じすなわち一番下のレベルだ。なのに15歳でこの魔力は異常としか言いようがない。世界最弱の能力値といっても過言ではないだろう。
「やっぱりか...」
確かにそんな気はしていた。なぜなら、普通魔力というのは歳をとる事に増えるものでありその過程で自分の異変や違和感を感じるはずなのだ。しかし、俺は1度も違和感や異変を感じたことがない。そして、もう一つ俺には心当たりがあった.....
「...あ!...君の名前は?」
思い出したように自分の仕事をする教師。
「御剣シュンです。」
「御剣シュン君だね...うん、そんなに気にしなくていいからね。まだ模擬試験の結果次第ではランクが上がることもあるし。新入生は競技場に集合するように言われてるから君も競技場に向かってて」
学院では魔力の適性検査とは別に模擬戦が行われるその総合評価によってランクが出されるのだ。
「まぁ...驚くよな...」
競技場に向かいながら独り言を呟く。
「ねぇ!君も新入生?」
不意に後ろから話しかけられ振り向く。するとそこには、雪のような白い肌に白い髪の美しい少女が立っていた。
「あぁ。そうだが」
一瞬見とれてしまったことを悟られないように素っ気なく答える。
「やっぱり!!!私も新入生でね!シャルワール・エンジュって言うの!よろしくね!君は?」
「御剣シュンだ」
「ミツルギか〜珍しい名前だね」
「それだけか?俺はもう行くが」
こんなやつにかまってる暇はない。
「待ってよ!どうせ今から競技場に行くんだよね?」
「そうだ」
「どうせなら一緒に行こうよ〜」
「断る。俺は一人の方が好きなんだ」
こういうのはめんどくさいからあまり関わらないのが得策だ。
「えぇ〜待ってよ〜シュン」
「名前で呼ぶな。馴れ馴れしい」
「じゃあなんて呼べばいいの?」
「まず名前を呼ぶな。俺に今後一切関わるな」
そう言って俺は一人歩き出した。
競技場につくと学院長が立っていた。学院長ワークス・サンジェルマン。第3回魔法戦争の優勝者にして、超上級魔法である時空魔法を唯一使える魔術師。当時は最強との呼び声も高かったが歳をとり段々と魔力も落ちてきているため今は昔ほどの力はないらしい。それでも今も世界で5本の指に入る強さなのだが...
「新入生の皆さん入学おめでとう!早速で悪いがこれから模擬戦を始めたいと思う。適当に二人組を組んでその相手と戦ってほしい。では、始め!!!」
生徒達が一斉に二人組を作り戦闘に移る中で俺は一人取り残されていた。まぁ一番いいのは一番弱そうなやつと戦うことだがこの場合それは俺だ。
「君?もしかして相手がいないのかい?」
いつの間にか俺の前に立っていた男が俺に話しかけてくる。身長は俺より少し高く顔立ちも整っている。
「あぁ」
「よかったら俺と模擬戦しない?名前は?」
「御剣シュン」
「シュンか、俺はキョウヤ神風キョウヤだ。よろしくなシュン」
「あぁよろしく」
「で、模擬戦どうかな?」
「こちらも丁度相手がいなかったところだからありがたい」
「よし!決まりだね!」
「「準備―セット―」」
二人の掛け声で魔法陣が二人の足元に浮かび上がる。俺は腰から剣をキョウヤはレイピアを抜く。これも魔法の一つで武器に魔法を付与して戦う。武器に魔法を付与することを魔術と言う。魔法と違って詠唱は短く魔力を込めて「付与―チャント―」のあとに魔法の名前を言えばいいだけだ。その分威力のある魔法を付与することは難しく基本的には肉体強化や切れ味を上げたり武器の長さを長くすると言った感じだ。
「「開幕―ゲート―」」
掛け声と共に足元の魔法陣が砕ける。これは模擬戦などに置いて大切なことでこうすることで相手に直接ダメージが入ることはなく傷を負うことなどはなくなる。とはいっても痛覚は別で殴られたり魔法で攻撃されると痛い。俺とキョウヤは同時に剣を抜き打ち合った。
「シュンも剣を使うとはね意外だよ」
「お前がレイピアを使う方が予想外だ」
まだ二人とも魔術を使ってはいない。
「付与 閃光―チャント ブリッツ―」
キョウヤの詠唱と共にレイピアが目にもとまらぬ速さで繰り出される。これは、速度強化と言ったところか。全ての攻撃を見る。そして、全てに反応出来ないまま攻撃が直撃する。
「.....ギブアップ」
「...は!?」
キョウヤが驚いた声をあげる。それもそのはず。まだ、開始20秒も経っていないのだ。
「いや!諦めるの早いだろ!」
「今の攻撃でわかった。俺はお前には勝てない」
「はぁ?そんなのわかんないだろ!やってみなきゃ!」
「お前は知らないだろうから教えてやるが俺の魔力の能力値はFランクだ」
「は?F?...嘘だろ?」
「嘘じゃねぇーよ。何だったら先生に聞いてみるか?」
「だって...Fって...そんなのほとんど魔力がないようなものじゃないか!」
流石に動揺しているようだ。
「だから俺はお前に勝てないってこと。納得した?」
「そんなのこの学院の誰にも勝てねぇーだろ!」
「そうかもな。てことで、模擬戦終わりな」
「あぁ...」
まだ信じられないという様子のキョウヤ。まぁすぐ信じる方が異常か。
俺は、キョウヤに背を向け他の生徒達の模擬戦を見る。キョウヤは確実にBランク以上だろう。俺は辺りを見渡し他に強そうなやつを探す。そこで目に入ったのはさっきのエンジュという少女だ。どうやら体格の大きい男と戦ってるようだ。見た感じエンジュは何も装備していないため武器に付与する感じでは無さそうだ。対する大男は大きな斧を持っている、おそらく付与型の生徒だろう。
「さーて、お手並み拝見と行こうか...」
俺は目に魔力を込めて
「付与 視力強化―チャント ボルク―」
こうすることで遠くのものも見やすくなる初級魔法だ。大男は俺の予想通り付与型のようだ自分の持っている斧に攻撃力を増加させる魔法を付与させている。対してエンジュの方は一向に詠唱をする気がない。どういう事だ?
「うぉぉぉぉ」
雄叫びをあげて大男が斧を振り上げた。だが、エンジュは一向に何かをする気がない。それどころか、その斧を避ける仕草すらない。
「付与 拘束―チャント バインド―」
エンジュがそう呟くと同時に大男の足元から鎖が出現し拘束する。
「バインドだと」
普通エンチャントは自分の武器などに付与するのだなのにあいつは地面に付与したというのか?それだけじゃないバインドは中級魔法の一つだ。それを付与するということは才能があるということだ。
「付与 強化―チャント レインフォース―」
対する大男は魔力を自分の体に流し込み身体能力をあげて振りほどこうとする。しかし...
「付与 雷撃―チャント ボルト―」
大男の頭上から雷が流れる。
「ぐぁぁぉぁぁぁ」
呻く大男。
「...ギブアップ...」
「ありがとうございました」
丁寧にお辞儀をするエンジュ。あいつの強さは確実にAランクだろう。
「お〜い」
こちらの気配に気づいたようで笑顔で手を振ってくる。
「チッ!」
舌打ちをしつつ俺はそれを無視しエンジュに背を向け歩き出す。
「おい!良かったのか?無視して」
先程から俺につきまとってくるキョウヤが話しかけてくる。
「いいんだよ...」
「あんな可愛い彼女いて無視とか羨ましいわ」
俺は顔をしかめた。
「ちげぇーよ!お前よくあの試合見たあとに冗談言えるな」
「あの子強いね。学院最強かもよ?」
「それはわからないぞ」
確かに強いが見た限りだと他にも力を隠してるやつがたくさんいた。
「あの大男もそんなに弱いわけでもないよね。むしろどっちかというと強いに当たる方だ」
お前がそれを言うかと思いつつ俺はキョウヤを見る。
「あぁ確かにそうだったが相手が悪すぎた。あいつの強さの格が違った」
「シュンはあの子のこと知ってるの?仲良いの?」
「そんな訳ないだろ。模擬戦が始まる前に話しかけられただけだ」
そんな話をしていると急に学院長が話し始めた。
「全ての模擬戦が終わったようだな!諸君の力は大変素晴らしいものだった!何人かはまだ、本気を出してない生徒もいたようだが」
そう言って俺の方に一瞬目線を変えすぐに戻す。おそらく俺が何かを隠していることに気づいたのだろう。まぁ、何かは気づいていないだろうが...
「君たちはあちらの掲示板に張り出された紙にパートナーの名前とランクが載っている。そこに載っているものとこれからはパートナーとして行動を共にしてもらう!」
この学院はパートナーを組み2人1組が基本だ。その、パートナーと寮を共にするし、模擬戦も基本はチーム戦となる。そのため、パートナーの存在はとても重要だ!互いの成績に関係するためだ。
「見に行こう」
キョウヤが学院長が指を指した方に向かって歩き出す。
「あぁ」
掲示板から自分の名前を探すとキョウヤの名前を見つける。ランクはAだ。パートナーはティーン・エルドレイク。ランクはBだ。
「お前の名前あったぞ」
「ん?どこ?あ...本当だ!ランクが一つ上がってる」
「模擬戦の結果だろうな」
「まぁ、あれはお前がすぐギブアップしたからだけどな」
模擬戦の結果はキョウヤの圧勝だったからだろう。
「それよりパートナーの名前だ。知ってるか?どんなやつか?」
「いや、全く知らないな。まぁ名前からして男だから良かったけど...」
この学院のルール上女子と寮を共にする可能性もある。そのため、男で一安心といった表情だ。
「それよりおまえの名前は?」
そう言いながらキョウヤは俺の名前を探す。俺も同じように自分の名を探す。すると、エンジュの名前を見つける。当然ランクはAだ。パートナーの名前は.....
―御剣シュン Fランク―
「.....マジか.....」