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気まぐれ金魚の玉手箱  作者: ゆずりは わかば
星の点を結ぶ線
14/39

一応ホラーなので苦手な人は注意。

ホラーと言えるほど山も谷もありませんが。

『ちょっとトイレ落ち笑笑 俺が戻ってくるまで勝手にステージ選んだりするなよ』


午前6時過ぎ。冬の日の出は遅い。6時半を過ぎてやっとこさ日が昇ってくると言うのだから太陽も怠惰なものである。

トイレのドアに鍵を閉めて便器に座って一息ついた。昨日から休みなしのぶっ通しで大学の友人とオンラインゲームをやっていて、気づいたらこんな時間になってしまっていた。

流石にそろそろ朝日が差すころだしちょうどいいや、もうゲームは切り上げて寝よう。などと考えているとトイレのドアの前に何かの気配を感じた。


俺は上京してきて一人暮らしをしているから部屋には誰もいないはず。だがドアの向こうには確かに何かがいる。じっとりとして生臭い気配だ。いつの間にそんなものが現れたのか知らないが、謎の気配と行き当たることが怖くてドアを開けられなかった。


しばらく冷たい汗をかきながらトイレの中でじっとしていると気配が部屋の中へ向かって移動し始めた。


ミシッミシッと床を踏みしめる音が遠ざかっていく。


得体の知れないものが遠ざかる安堵よりも何か悪いものが部屋に入っていくことに対する不安の方が大きかった。便意などとうに消え去っていた。

部屋の方から何かが部屋の中を歩いている音が聞こえる。得体の知れないものが、部屋の中をぐるぐると歩き回っている様子が眼に浮かぶようだった。

怪物は何かを小さな声でブツブツ呟きながら部屋の中を徘徊している。

俺に気付く前に早く出て行ってくれ…それか早く日が昇ってきてくれ…と念じた。太陽さえ昇ってきてくれれば妖怪や物の怪の類は霧と消えるのがお決まりである。



窓の外がだんだんと明るくなり始めてきた。トイレに入っておそらく10分程度しか経っていないはずだが、俺は1時間もここで固まっていたような疲れを感じた。

これで部屋にいる怪物も消えて一息つけるな、などと考えながら体をほぐすために立ち上がった際に床がミシリと音を立てた。

部屋にいたあの気配が迫ってくる。マズいと思ったがこの狭いトイレには隠れる場所も武器も無い上に逃げ場もない。


怪物が足音を立てて部屋からトイレのドアの前まで走って来てトイレのドアをめちゃめちゃに叩く。

ドアを打ち破りそうな勢いでひたすら叩きまくる。

ドア越しに奴の生臭い息づかいが伝わってくる。

トイレの狭い窓から見える空は完全に日が昇ったことを知らせてくる。


俺の頭の中はいろんな考えでごちゃまぜになっていた。ドアが破られたらどうしよう、窓から飛び降りるのが一番いいのか?夜が明けてもなぜこいつはいなくならない?

見た目もわからない怪物と戦うか…?

戦うか…


覚悟を決めて握りこぶしを作ると、トイレのドアを勢いよく開いた。

だが、トイレの外には何もいなかった。さっきまであんなにドアを叩いていた怪物の姿は影も形もなく、薄暗い見慣れた自分の部屋があるだけである。

あんな勢いで叩かれていたドアにも特に傷や凹みは無く、部屋も荒らされた形跡は無い。

パソコンのファンの音が静かに聞こえるのみで足音も呟く声も聞こえない。


「徹夜してゲームやったから幻覚でも聞こえてたのかな」


ぽつりと呟いて部屋に戻ろうとした時、首筋に生暖かい息づかいを感じて……

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