設定―人物紹介その3
今回はようやく主人公の解説になります。頑張ればもっと早く出せたのに、先延ばしにしたり他の予定が入ったりした結果、結局はいつもと変わらぬペースに……。申し訳ありませんでした。
身直 真留
皆をまとめ。モノが少ない環境で育ち、人々が悲しむ姿を見てきた少女。それにより、『誰にも奪われることの無い、みんなを助けられる力』を求め、独学で民衆守技を習得する。
正義会に入ったものの周りと上手くいかず、自分たち正事家の役割にも疑問を抱く。その性格や人柄から、朱将に改心刀を任され、有剣者となる。その後は正義会を抜け、民衆を守るため独自に行動。その中でツドウと出会い、物語が始まる。その後、正事家から街を守ったことが評価され、ツドウともども険岳界に招待される。
正義会の中で正事家の行いを見続けたこと、自分と同じく貧しい環境で苦しむ人々と出会ってきたことから、平和を願う心はとても強い。同時に、街のみんなには穏やかに暮らしてほしい、正義会と戦うのは自分たちの役目という考えも持っている。そのため、平和を掲げながらも、街の住民たちも戦いに駆り出そうとするサバキに対し、警戒心を持っていた。彼が自分たちを利用し、民衆を危険な目に遭わせたと分かると、その怒りで改心刀を暴走させた。
穏やかな性格である反面、全ての人―正事家などの悪いヤツらまで助けようとは思っていない。改心刀の特性上、確実に敵が生き残るため、攻撃をためらったり手加減したりすることも無い。『悪者を倒して世界を救う』といった、ある意味で人を選ぶような価値観にも理解を示す。正義会に所属していたのもこのため。迷いながらも最後までやり遂げる責任感も備えているが、それだけにやってから後悔することもしばしば。
一方で、罪の無い人々が巻き込まれたり、傷付けられたりするのを極端に嫌う。民衆が苦しめられるのに耐えられなかったり、強襲者をけしかけたサバキにキレたり、優しかった朱将を手にかけたショックで戦えなくなったり―有剣者としては強力だが、その純粋さが弱点にもなり得る。
戦うことにこだわっていない、特別な力を得たことで苦労する、独自の目的で組織に協力するなど、影騎士と共通する部分が多い。事実、敵同士ではあるがお互いに戦いを避けたり、時に力を合わせたりした結果、まともに剣を交えずに終わっている。彼が険岳界に加わった際、スムーズに周りに溶け込めたのは、彼女のフレンドリーな対応によるところが大きい。
シノグには能力を認めつつも、戦いを受け入れていることを心配するような素振りを見せる。たくさんの人と話したり、将来のことを考えたりするよう勧めるなど、良いお姉さん的な一面を発揮。民衆守技と装天剣―『特別な力を持つ女の子』同士、男どもより身近に感じたのだろう。影騎士にもシノグにも、『自分と同じようになってほしくない』『少しでも楽になってほしい』と考えていたようだ。
本人の性格上、正義会ではさぞ目立ちそうなものだが、正事家たちに名前が知られている様子は無い。朱将との繋がりに関しては、影騎士の目に留まってチクられたということで片が付く。のだが、彼らが人員の配置を変更したとすれば、それなりの混乱が生じるハズである。かと言って、周りを改心刀で一掃したのなら、やはりお尋ね者になっていなければおかしい。加えて、険岳界でサバキと会った時も初対面のようであり、彼から関係者に手を回されたとも思えない。以上のことから、周りと距離を置いていたか、正事家たちの入れ替えが頻繁に行われていたと見るのが妥当である。
戦闘では改心刀を使った敵陣のかく乱と、民衆守技を活かした味方の補助を担当。また、ツドウの仲間たちと協力した際は、辺りの暗さと敵の動揺を踏まえ、孤立した正事家を狙うよう指示。有利な流れを維持することで、堅実な勝ちをおさめた。主人公らしい大活躍こそ少ないが、『被害を抑え、全体を支える』という方針は一貫している。
物語終盤で離脱し、ラスト直前で戻ってくる。本人が言うには『本調子では無かった』そうだが、それでも充分な働きを残した。しかしながら、朱将と戦った直後、心を痛めた彼女に追い討ちを掛けるかの如く、聖剣が世間に普及した。犠牲者を出してまで解放した人々が、嬉々として戦いに臨んでいる―その様を目の当たりにし、自分のやってきたことに自信が持てなくなる。判断力が鈍ったことで、改心刀の切れ味が落ち、人を守る気が起きなくなったがために、民衆守技も封じられた―戦闘力も戦意も失った彼女は、改心刀に由来する自問自答のクセが染み付いたまま、聖剣を残して行方をくらませた。主人公なのにあまりにも悲惨な終わり方だが、彼女の望みは形を変えて、シノグが肩代わりすることになる。
律賢・改心刀
立憲改進党。初期型の聖剣の一つで、心にダメージを与える。相手の精神力を削り、行動不能に追い込む。心の傷は肉体的なものよりも残りやすく、治ってからも引きずることが多いため、名前らしからぬ凶悪な武器。ちなみに、コレを基にして生まれたのが偽隠槍である。
敵の防御力を無視出来るほか、斬り付けた相手を味方に引き込める。ただし、これは敵が心を改めて寝返ったらの話。確実性に欠け、自由自在にも操れず、しかもそのうち元に戻ってしまう。あまりアテにしないこと。
持ち主に対し、『考え続けること』を要求するのも特徴。間違ったことをしていないか、周りに被害が出ないか―自分も含め、誰かが何かをするごとに頭をフル回転させることになる。これは、悩むことで考えを深め、精神的な成長を促すため。ただし、コレ自体に頭を良くする働きは無く、考えても答えが出るとは限らないため、人によっては持っているだけで精神的苦痛に襲われる。有剣者を強くするのと同時に、一段と人を選ぶ要素でもある。『頑固者を作る』のが神鎖剣、『心配性を作る』のが改心刀。
また、使用者が怒り狂うなどして、冷静な判断が不可能になると性能が変化。本来の機能が失われる代わり、攻撃能力が跳ね上がり、かすっただけでも相当なダメージを弾き出すようになる。肉体的にも強化されるが、一度こうなると精神力か体力が尽きるまで止まらなくなる。
他の聖剣に比べ、運動能力の上昇率が大きい。恐らく、物理的な威力を持たない通常時に、有剣者の生存率を高めるためと思われる。これにより、避けるか耐えるかして生き残り、敵の消耗を誘うのが楽になっている。先に述べたように、暴走した時にはさらに強くなる。
使い手の精神状態を受け、自動的に機能が切り替わるため、制御は非常に困難。心理的な負担も大きいため、使える人間も自然と限られる。したがって、有剣者不在の状態となっても、再生刀ほど徹底した管理はされていない。また、有剣者の心と深く関わることで、新たな民衆守技の実現にも貢献した。
民衆守技
民主主義。読んで字の如く、民衆を守るための技。誰かを助けるためであれば、敵への攻撃にも使用可能。その反面、人助けと関係の無い、個人的な勝負には使えない。加えて、自分の心に迷いがあったり、相手の方が正しかったりする場合には、使えたとしても何らかの不都合が生じる。このことから、常に考えることを強制する改心刀とは若干相性が悪い。
精神力を消耗し、身体にも負担が掛かるとされているが、信憑性は薄い。どうやら緊急性の度合い―どれだけ事態が切迫しているかによって性能が変化する模様。事実、弱っている者、追い込まれた者をかばう時などは、ほぼノーリスクでの連発も出来るらしい。
精神統一やイメージトレーニングで習得する。厳しい特訓や修行の果てに覚えるモノでは無いためか、緊急時を除けば一般人と変わらない。しいて言えば、精神的な成長が早まるぐらいだが、ずば抜けて大人に近付いたり、冷静さが得られたりはしないようだ。
飛脚
飛脚。脚力を高め、空を飛んでいるかのようなスピードで移動する。さらに、高い場所まで飛び跳ねられるようになり、そこから一気に飛び降りても脚がダメージを受けなくなる。本来は、災害時に逃げ遅れた人、取り残された人を迅速に救出するための技。人助けから外れることと、相手の身がもたないことから、直に人を蹴ることは不可能。攻撃手段として用いるなら、蹴り飛ばしたブツを頭に直撃させるなどの工夫が重要。
遠眼
沿岸。視力を向上させ、離れた所まで見えるようにする。見張りなど、周囲の安全確認を行うのに向いている。細かい部分もハッキリと見えるため、特定の人物の発見にも効果的。目の周りの筋肉を酷使するため、あまり長時間やりすぎると目が乾いたり痒くなったりする。
空耳
空耳。聴覚神経を研ぎ澄ませることで、遠くの音までよく聞こえる。しかし、声で個人を特定したり、話の内容を判別したりといった使い方は難しい。あくまでドコに人が集まっているか、周りに敵が潜んでいないかを探る程度のモノ。ただ、道に迷った時や、人気の無い場所などでは割と役に立つ。遠眼と組み合わせれば、建物などの障害物も含め、より正確な位置を割り出せる。が、両方いっぺんにやろうとすると、目も耳も使い物にならなくなる恐れがある。
硬体
交代。全身に力を込め、気合を入れることで、あらゆる攻撃を弾き返す。ガードした時と異なり、しばらくは効果が持続するため、立て続けに攻撃されてもへっちゃら。一方的に攻めることも可能だが、精神力を消費する以上、使える技は限られる。と言うか、敵の数によっては、ガードからのカウンターに繋ぐ方が効果的。味方をかばうなり、緊急時の脱出に使うなり、守備の補強に役立てるのが単純ながら確実。
千手
選手。背中から光で出来た腕を伸ばす。身体機能の強化では無く、『新しい腕を作り出す』というのは、それまでの民衆守技とは別次元の効果。この腕自体は武器を持っていないが、敵の姿勢を崩したり、攻撃を防いだり―攻めにも守りにも使える技。実際に千本も生えるワケでは無いが、思い通りに動いてダメージも受け付けない―そんな腕なら一本あるだけで戦力として事足りる。
改心刀がマトメの思いを増幅させることで実現した―まさに『有剣者だからこそ成し得た技』だが、同じ条件下でも他の有剣者に真似出来るのかは不明。
主な登場人物はあと3名。その他の細かい設定を1枠にまとめるか、今まで出したところに付け加えるかすれば完成の予定です。ただ、有言実行出来る可能性は低いため、ご了承下さい。作者としては、寄り道しながらでも1年以内には終わらせたいのですが……。