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5話 国王閣下

辺りを見回すと、クラスメイトが一ヶ所に集まっており、中には伊野や坂岡、田中がいた。

 彼らもこちらに気付き、駆け寄ってきた。

 相変わらずのメンバーだが今はとても安心する。

あの恐ろしい夢を見たからだろうか、少し感傷的なだけかもしれないが。

 

 彼らと雑談もかねて、自分達の能力については話し合った。


 坂岡は、Aクラスの銀の魔狼。

 電気や雷などを武器とする。また、自発的に発電ができる。

 肉体と体力が強化、自身も狼に近い身体に変身できる。   


 田中は、Bクラスの鋼の天使 アーマードセラフ

身体能力の向上と空中の飛行、体術などが使える。

また、身体が硬質化し、防御に秀でている。


 伊野は、Cクラスの神聖な霧 セイクリッドフォッグ

 指先から噴出する霧によって、自他共に体力などを回復させる。

 身体能力が多少は向上している。

 身体的ダメージを受けてもある程度回復する。 

 

 天王司の周囲にはいつものように、人だかりが出来ていた。そこからは天王司の能力を讃えるような声や天王司がSクラスなのは当然だ、などと言う声が飛び交っている。中には何を思ったか、天王司ならどんな敵も戦う前に降参するわ、などと言った、根拠の有ることを無いことが飛び出していた。


 その後、雑談などをしているとバタンと勢いよく広間の扉が開いた。

 何事かと驚いていると、先ほど地下で見た白いローブの軍団がするする入ってきて、広間の壁にそって整列した。

 そして、そのうしろからオーランドがやってきた。

「これから、我が国家ウロボロスの国王閣下、ロヴェルト様の王室まで、ここの部屋ごと空間転移魔法で移動します。少々揺れますが、ご了承ください」

 ニコリと愛想よくオーランドが微笑み、指をパチリと鳴らす。するとオーランドの分身達が一斉に手を取り合い、ゆっくりと回り始めた。

 前回、能力を調べる部屋に転移する時と同じ感覚が襲ってきた、しかし今度はかなり大きな感覚だった。 

 まるで、空気が鳴り響いているような。


 周囲の景色がいつもどおりきちんと認識できるようになると、広間よりも少し大きい場所に出てきた。周りの柱には、金色の蛇を模した彫刻などが施されている。どうやらここが王室のようだ。 

 なるほど、絵になりそうだな。しかし、わしはアマチュア、そこまでセンスは無い。だが、とても興味深い。

 周りに分身達の影は無く、オーランドとクラスメイト達があった。

 「到着しました、ここが王室です。国王閣下はこの先です、私に着いてきて下さい」

 オーランドは廊下をまっすぐ歩みだし、わしらもそのあとへついて行く。移動がゆっくりとしているため、ここの世界についてある程度観察しておくことにした。

 もとの世界、地球で西洋などの王室などは写真などでは見たことはあったが、実際に自分の目で王室を見ることはなかった。

 ぱっと観察する限り西洋の王室に近いもので、王の近衛兵と思われる兵士が鋼の甲冑を着て見回りをしていた。胸の辺りには金色の勲章らしきものがあった。

 中には緑色や赤の色をした勲章を複数持つものもいた。よほど腕の良い兵士なのだろう。

 そして、時折現れるメイドさんが坂岡達の興味を引いていた。



 しばらく歩くと、装飾の施された大きな扉が見えてきた。両側には近衛兵が控えており、オーランドが手で合図すると扉を開いてくれた。

 部屋の中は様々な色の宝石と金属で装飾が施されていた。まさに王室、金にものを言わせた場所だ。さすがは王、だな。

 奥には金色の玉座らしきものがあり、これもまた豪華な装飾が施されていた。

 クラス全員が中に入ると後ろで大きな音をたて、扉が閉じられた。

「これから国王閣下がこちらにいらっしゃる。くれぐれも失礼のないようお願いしたい。」

 

 しばらくすると、黄金の甲冑を身につけた戦士達が、一糸乱れぬ行進でこちらに向かって来た。六列に並んだ行進のうち、四列が王座の横に固まり、まるで王を守るが如く、不動の姿勢で立ち並び、強烈な威圧感を振りまいている。

 残った二列はこちらに向かって来て、ほんの数ミリのところで止まった。戦士達は均等な間隔で立ち並び、横に携帯していた大きな旗を交差するようにして掲げ、後ろの兵士達のように立っていた。

 旗の掲げられた、その下はちょうど二人通れるくらいの道が出来ていた。

 王のみが通ることの許される、王の道と思われる。

 カツカツと硬いものが床とぶつかる音がする。王の道の奥を見ると誰かが一人、こちらに向かってくるのがわかった。

 次第に王の道を堂々と歩いてくる一人の人物の容姿が浮かび上がってくる。

 オールバックの金髪と胸まで伸ばしたアゴヒゲの、厳しい目付きをした人物が立っていた。

 その体は所々に細かい装飾が施された黄金の鎧を着用している。

 顔に谷のように深く刻まれたシワがこの人物が生きてきた歳月を代弁しているのがわかる。瞳は深い青色をしており。そして老いなど感じさせないほどの胸板の厚さと身体と全体の筋肉の太さが遠目から見てもわかった。

 それらが何よりも、王特有の威圧感をより一層引き立て、にじみ出ている。

「おお、ロヴェルト国王閣下、ご命令に従い。勇者様がたをお連れしました」 

 ロヴェルト国王閣下はぎろりとこちらを見ると険しい形相のまま、声色のみにこやかしゃべった。

 

 「やあやあ勇者諸君。この度は我々の力となっていただき感謝する」

 天王司を筆頭に建二を含めたクラス全員は深々とロヴェルト国王にお辞儀をする。

 今、自分達の眼前にいるには、この国における最高位に居座る人物。くれぐれも失礼の無いようにしたい。

 全神経を尖らせて、自身の行動の一つ一つに注意をする。


「諸君、面を上げよ」

 クラス全員が元の姿勢に戻るとロヴェルトはつかつかとこちらに向かって来て、天王司の前で足を止めた。

 かなりの至近距離だ。国王が三歩でも踏み出せば、おそらく天王司にぶつかってしまうほどの距離だ。

「きみ、名前をなんと言う」

「はい、天王司アルフと申します」

 ロヴェルトは天王司の顔をまじまじと見て言った。

 こちらからはよく見ることは出来ないが、国王は天王司の目を見据えているように見える。どうしたのだろうか。

 沈黙を破るようにして、国王が口を開いた。

「いい目をしているな、決断と覚悟の決まった良い目だ」

 常に表情がとても険しく岩石のように固まっているため、外見からすると怒っているように見える。

 全く動くことの無い巨大な巌のような印象が、近くにまで来たために。巌を通り越して、険しくそびえ立つ山を前にしたようだ。

 そんな重圧が国王から伝わってくる。そう言うものに全く耐性の無い、弱い者ならば、この人物を前にしたのなら、気絶していただろう。

 しかし、口調に少し優しさが含まれているため、怒っていないと受け取れる。そして何よりも、国王の重圧を和らげているのだ。

 まるで、厳格な山が、一瞬微笑んでいるようにも見えた。

 それを受けてか、天王司の表情も少し和らぐ。

「はい、ありがとうございます」

 天王司は堂々と王のほめ言葉を少し誇らしく、かつ礼儀を正しくお礼の言葉を述べ、再びお辞儀をした。

 

 ロヴェルトはくるりとオーランドの方を向き言った。

「さて、私はこれから会議へ向かう。オーランド、勇者様がたのことはよろしく頼むぞ」

 くるりとこちらを背にして、扉の方にズンズンと歩きはじめる。

 その様子を見送りながらオーランドは応えた。

 「承りました、国王閣下」 


 ロヴェルトはそれではと言って、部屋を出ていった。

 それに合わせて、軍隊も王に引かれるように、移動して行く。まるで、大きな台風が通り過ぎたこのように、周囲の空気に漂っていた威圧感が払拭した。

 クラスには未だに緊張の余韻が残っていた。


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