4話 能力発現
そう言って渡されたのは分厚い一枚の紙だった。
「この紙は、君が触れると君の能力のランクと、能力名と能力の内容が浮き出る、魔法道具なのだよ」
眺めていると、右端の方にSの形に似たマークが出てきた。
何だろうか?オーランドに見せるととても嬉しそうに言った。
「おお、あなたは、S級の能力者ですか。頼もしいですね」
オーランド曰く、能力にはランクがあるらしい。
Dランク 総合値5
Cランク 総合値15
Bランク 総合値46
Aランク 総合値81
Sランク 総合値150
総合値とは、魔力と、能力を足した力を数字としたもの。
この世界の成人男性に置き換えてみると、平均43程である。
この世界では、7歳に成ると測定がされ、国に報告する事が義務付けられている。
これによってその人の人生も大きく変動する。Sランクならば選べる仕事も多く、Dランクならば貧しい生活を強いられる可能性もある。
個人の努力によってランクが上がることも有りうるが。
しかし、個人差が大きくあまり期待出来ないそうだ。ランクの上昇によって能力も進化する可能性もあるそうで。中にはBランクでありながら、4回くらい進化した記録もあるらしい。
また、魔法を使うためのエネルギー総量もこれに左右されている。翌日にはきちんと回復しているが、これは消費できる割合が一日においてあらかじめ決まっている。
これが限界を下回ると生命維持に関わってくるのだとか。
しかしながら、限界近くまで1日おきに減らし続けると総量が増えるらしい。ちょうど筋トレに似たような感じだ。
このランクは、生まれながらにして決まるものであり、最初から人生のスタートラインが一緒という訳ではない。
とは言え、高いランク同士の結婚によって出世する子供のランクが高いことは事実である。そのため高いランクの持ち主をめぐって修羅場となることも珍しくなく、真実の愛か、子供に苦労をかけるかで、葛藤する者も少なくない。
余談だが、オーランドはS級の魔術師であるらしい。国王の側近なので当然だろう。
その時、自分の右腕が鈍く輝き始め、驚きながら見守るうちに段々と光は強くなり、目を開けていられない程になったのを最後に、光は消えた。
目を恐る恐る開けてみると、目に写っていたのは純白の自分の右腕だった。
何の変哲の無い筋肉質な腕だったものが、甲殻類のように固そうな甲殻が至るところに鎧のように付き、不可思議な青色の紋様が純白色の表面を彩り、何処と無く神々しさのある右腕になっていた。腕の太さも以前と比べるとかなり大きくなっていた。
また、身体中の筋肉が隆起し、ボディビルダー並の凹凸が洋服の上からでもわかるほどに膨れ上がっていた。
魔法道具の紙を見てみると、能力の名前なのか神の右腕と文字が浮き上がってきた。
神の右腕か、悪くない響きだが。若干ネーミングがなぁ。
能力の説明も出てくると聞いたのだが、いっこうに浮き上がってこない。
そうこうしているうちに、紙が突然手から離れ、まっすぐにこちらへすっ飛んできた。
唐突な出来事だったので、驚き目を閉じた。
しばらくたったが、なにも起きない。目を開けると紙が消えていた。
すると突如、頭の中にずらずらと文字が出てきた。少し戸惑っていると、オーランドが教えてくれた。
「この魔法道具は、能力の内容を他人に知られないようにその能力を調べた者の体と融合するようになっておる。ちなみに、ステータスと言えば情報を閉じたり開いたりできるんじゃ」
なにそれ、若干はずかしい。
なんにせよそれを言わなければ、ゴッドハンドについてなんの情報も得られない。
仕方がないか。あー恥ずかしい。
「.......ステータス」
なんだろうか、突然目の前に青く光る文字の書かれた板のようなものがでてきた。
しっかりとはつかめないものの、上や下へなぞることで板の中に映っているものを動かせるものだった。
そこには、こう書かれていた。
神の右腕
能力の発動時、通常の腕力の2倍~3倍。この時、持ったものは原子の結び付く力を失うのでもはや数値など関係ない。体力なども増強される。
身体中の筋肉の全ても強化される。
その右腕は、無限に力を受け止めることができる。
読めたのは、前半の数行のみだった。残りは全て、認識できない文字で書かれていた。まあ、あとからわかるだろう。
能力的に近距離の敵しか攻撃できないのが少し残念だが、原子レベルで敵を粉々にして倒せるのが強みだな。相手の弱点などを消せば、楽々かたづけられるだろう。
無限に力を受け止められる部分が活用次第で防御にも、攻撃にもなりそうだ。相手の武器を壊しつつ、殺せるだろう。
また、地球にいた頃に柔道を習っていため体術などでも相手を圧倒できるだろう。
ちなみに発現した能力は、自分の意思で元に戻すことができるらしい。
現在のところ使わないので、神の右腕をもとの腕に戻した。
「さて、能力の調査が終わったので、着替えを済ましてしまおうかのう」
そう言うと、オーランドは杖から黒い煙を吹き付つけてきた。もろに煙を吸い込んだせいで、せきこんでしまう。
煙が消えると、白いシャツだったのが、黒い洋服とコートという格好になっていた。
「では、皆の待つ広間へ行くとするかのう、では捕まりなさい」
最初と同じようにして移動し、こんどは壁が白い石で作られ、床に赤いカーペットの敷かれた広間に着いた。