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1話 友達

 目を潰さんばかりの光が収まると、そこには見慣れない光景が広がっていた。体育館程の大きさの石でできた大部屋の中央に台座があり、教室に居たときのままの配置で周りを見渡したりへたりと座り込んだりしているクラスメイトが確認できる。そして、わしのいた場所が教室の隅だったことも関係しているのだろうが、台座を取り囲むように佇む白いローブを身に付けた異様な集団が祈りを捧げているのがハッキリと見えた。


「おいおい、どうなってんだよこりゃあ」


 坂岡が呆然と立ち尽くしたまま白いローブの集団を見て言った。それだけではない。みな、突然ここにいることに戸惑いを露にしている。


「みんな!大丈夫か!」


 台座の中央にいた天王司の声が大部屋に木霊する。その声に反応して、白いローブの集団から一人の男が歩み出た。


「勇者とその一行。この度は突然このような場所にお呼びしてしまい申し訳ございません」


 男はハキハキと聞き取りやすい声でそう言った。


 勇者?その一行?まるでファンタジーだ。まさに勇者っぽいやつなら後ろにいるけどな。


 そんなことを考えていると、その当人である天王司がわしの隣まで出てきた。天王司は白ローブ集団を見てあからさまに動揺したが、それでもまっすぐ先程歩み出た男を見据えた。


「僕たちをこんなところに連れてきて、どうするつもりだ!」


 いや、どうするつもりもなにも、勇者とか言ってただろ。どう考えても面倒事を押し付けられるだけだろうよ。


「私は説明するのは苦手なので、単刀直入に申し上げましょう。あなた方には、魔王を討伐して頂きたいのです。それも、現状での実質的な魔族の頂点、冥界王を、です」


「ふざけんな!勝手に呼び出しておいて、誰がそんなことをするか!早く元の場所に帰せ!」


 その声に続くようにして、女子達やや一部の男子が「そうだそうだ」と喚き始める。


「申し訳ございません。我らが神の意向で、冥界王を討伐するまで元の世界に戻ることは許されません」


 おいおい、流石にそれは条件が重いんじゃないか?せめて帰りたいやつだけは帰らせろよ。わしは冥界王が気になるから残るけどな。


「なんでだ!その神ってなんだよ!冥界王ってなんだよ!僕たちはただの中学生なんだぞ!」


「私たちには、後が無いのです。人魔平和協定を魔族が破ってから、人類は危機に晒されているのです。魔族の王たる冥界王を倒さなければ、人族は救われないのです。どうか、私たちを助けて頂けませんか、勇者一行よ」


 なるほど、つまり自分たちが助かるためだけにわしらを呼んだと。まあこいつらからしたら必死なのだろうが、わしらからしたら相当な自分勝手だな。


「……それは、僕たちでなければいけないのか?」


 おおう、見事な心変わりだな。正義感が強いのかこいつなりの信条があるのか。


「はい。冥界王を倒せるだけの力は、あなた達でなければ持つことは出来ません。そして、あなた達はそれぞれが選ばれし力を持っています」


 選ばれし力か。当然わしにもあるんだろうな。どんなものか気になる。


「わかった、僕は引き受けよう。人が困っているなら助けなければならないからな。ただし、他のクラスメイトにはその冥界王と戦うかどうかの選択をさせろ」


「アルフがやるなら俺もやるぜ」


「青木……」


「ま、天王司君がやるなら手伝わなくちゃね」


「安藤も……」


 天王司と特に仲の良い二人が天王司の両隣へ歩み出た。すると、クラスメイトが次々と賛同の声を上げる。随分と人気者なこった。


「お前は、行くのか?」


 坂岡がちょっとした騒ぎの中話しかけてきた。気付くと、わしの周りにはいつもの3人が揃っている。どうやらわしの答えを待っているようだ。


「ああ。わしの力ってのも気になるしな」


「そっか。お前はそういうやつだもんな。いいぜ、俺も行くよ」


「若林がそう言うならついてくしかないっしょ」


「その、僕も行くよ。怖いけど……」


 わしも、いつの間に人気になったもんだなぁ。もしここでわしが行かないと言っていればこの3人は行かないを選んでいただろう。


「それでは、私についてきて下さい。国王があなた方との面会を待ち望んでおりますので」


 いきなり国のトップからか。魔王と対になるんだから、それなりなやつなんだよな?

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