11話 十一の神錠
視界は再び暗黒に覆われ、魔法も引き剥がされた。段々と息苦しくなっていく中、全速力で上を目指す。
最早、一刻の猶予も無い。しかし、ここを抜け出ればこちらの安全は確保されたも同然だ
。天王司の体はまだ少し暖かく、溺れて呼吸が止まってからさほど時間が経っていないことが分かる。
天王司に気づかいながら光の一筋すら見えない前後不覚の闇の中を自身が前だと思う方へ、突き進む。
何分、何時間たっただろうか、一向に光が見えない。
(おいおいおいおい、嘘だろぅ)
建二は軽いパニック状態に陥りながらも、浮上を続ける。
また、三半規管が狂って逆に浮上ではなく潜っているのではないかと言う疑念が渦巻いていた。ヒルリカを出そうにも天王司がいるため取り出すことが出来ない。
今度こそダメか。そんな風に思ってしまう。
だが、ふと強く白い光が眼を刺した。
眼を少し開いてその発光している場所に目をやった。
それは天王司の腰の辺りから発せられていた。天王司の携えた剣が白く光っていた。
水をかいていた右手を剣の柄に当たる部分を握り、何となく引き抜いてみる。朦朧とする頭の中で何かがそうしろと叫んでいたようにカ感じた。
引き抜くと同時に一段と強い光を放つ剣の刃が顔を見せた。目を開けていられず、瞑ってしまう。しかし、身体中を少し温かな物が包んで行くのがわかった。
しばらくすると、一気に引き剥がされた魔法が戻って来た。身体中の血液に新鮮な酸素が隅々まで行き届き、苦しさから解放される。
目を開けると黒い渦を抜けてからかなり泳いだ所を泳いでいた。眼下には小さくなった黒い渦が二人を見上げるようにとどまっている。
(いったい何が起こったんだ?まぁ、天王司の剣のお陰でだってことは確かだな)
そう思いつつ、浮上を再開する。エラの付与魔法が戻って来たため、存分にエラ呼吸をして力強く四肢を動かし、湖を出た。
湖のへりに右手をかけ、自分の体と天王司を陸へ引き上げる。付与された魔法が消滅し、元に戻る。
「おお、建二殿、天王司殿!」
すぐさま、オーランドが迎えてくれた、顔はとてもにこやかだ。一方、天王司と言う単語を聞いた安藤、青木もこちらに向かってくる。
「「天王司(君)!」」
かろうじて生きているであろう天王司の側へ寄り、必死に呼び掛ける。が、当然いくら呼び掛けても起きない天王司。
泳いで荒くなった息をを整えつつ、オーランドに質問する。
「オーランド、心肺蘇生系の魔法ってできるか?」
オーランドは少し、口ごもると言った。
「心肺蘇生ですね、できるはできるんですが・・・・、苦手なんですよね、その詠唱が」
とりあえず、この世界にも心肺蘇生と言う概念があると言うのはありがたかった。実際、国家ウロボロスの医療機関の少数がその方法を知っている。
しかし、それを使える者が限られている上に、詠唱がとても難しいらしい。国家最高の魔術師のオーランドでも約12分ほどかかるらしい。
それでは遅すぎる。心肺停止後から時間が経つにつれ、蘇生後の体への影響はもちろん、死亡するリスクも高くなる。
それを聞いていた安藤がくるりとこちらを向き、怒鳴った。
「あんた、何とかしなさいよ!!」
やけっぱちになって応えた。
「はいはい、わかりましたよ」
天王司の体を横たえ、心肺蘇生を試みる。ちょうど、学校で習っていたため手順は覚えている。胸の中央を押す度に天王司の口から水が大量に出てきた。顔は横にして、吹き出した水が気道を塞がないようにしてあるため、問題なくスムーズに蘇生手順を進められる。
数分後、天王司の体の中にあった水は、あらかた出すことに成功した。
後はオーランドが詠唱を終えるまで胸骨圧迫をし続け、時間を稼ぎ続ければ良い。
天王司の顎を指で上げ気道を確保、準備は整った。胸骨圧迫をしたまま、安藤の方を向き言った。
「安藤、少し手を貸してくれるか?」
「ええ、良いわよ」
少し微笑を浮かべた安藤が側にかがんだので、頼みを告げることにした。
「人工呼吸を頼む」
「ふぇっ?」
すっとんきょうな声を上げ顔を真っ赤にしする安藤。
それもそうだ、マウストゥーマウスなんて元の世界でもしたことが無いのだろう。実際、わしもその経験は無い。女子の友達いない歴=年齢な男なのだから。
「何言ってんのよ、バカッ!セクハラよっ!」
頭の中でそれを想像したのか恥ずかしさで体が子犬のようにプルプルと震える安藤が抗議する。そんな彼女に真顔で現実を告げる。
「こっちは真面目に聞いてるんだが?あっそう、知らないよ。されなかったせいで天王司が死んでも」
苦虫を噛み潰したようにギリギリと歯を食い縛り、上目使いで目の端に涙を溜めこちらを睨む安藤。
「おっ...俺がしようか?」
青木が戸惑いがちにとんでもないことを言ってくる。
この男のこう言う所は全くもって予測しがたい。仲間への思いやりに徹したがためか、普通に考えるとおかしなことさえ真っ向から言うのだ。
青木の発言に吹き出しかけるが、この雰囲気の中そうするのは不謹慎と言うもの、内心で笑いこけておくことにした、その言葉の根底にある安藤への思いやりを感じながら。
「わかったわよ、やれば良いんでしょ!?やれば」
安藤は羞恥心で耳まで顔を赤く染め、こちらをまた睨む。
「ああ、やってくれ」
その後、安藤が人工呼吸、建二が胸骨圧迫をすることで、オーランドが詠唱を終えるまで天王司の命を繋ぎ留めさせることができた。安藤は人工呼吸をする度にハァハァと荒く息をしていた。
そして、オーランド魔法によって心臓の活動が再開され、天王司が目を覚ました。
「ゲホ、ゲホ、あれ?確か僕は········」
咳き込みながら周りを見渡し、ぼんやりとする天王司。顔はぽかんとして何とも間抜けな面をしていた。
そんな彼に安藤がタックルにも似た抱擁をする。
「天王司くぅーん」
ドスッと言う音が辺りに響いた。おそらく、天王司のみぞおちにストライクしたのだろう。
「うわっ、あ、安藤さん?」
天王司はより大きく咳き込みびっくりした様子で、自分に抱きつく安藤に目を白黒させた。
心配だったんだからねと天王司に告げると安藤は強く彼を抱きしめ、泣き始めた。彼女の胸がぎゅっと押し付けられていたが気にしないことにした。
近くでは青木が寄り、良かった良かったと涙ぐんで喜んでいる。
「ふぅ、一件落着ですな」
オーランドが冷や汗を拭い髭をいじくる。ひどくくしゃくしゃになった髭が、オーランドの先ほどまでの心情を表していた。
オーランドとわしはほぼ完全に蚊帳の外の扱いを受けている。気にすることでは無い、彼らの今の空間にはわしらは必要が無いのだから。
暫く見ていると、天王司はよろりと立ち上がったものの、また座り込んでしまう。完全に身体機能は回復しておらず、脳にまだ十分に酸素が行き渡っていなかったためだろう。尻餅を打ち、イタタとうめく天王司に近づき、手を差し出す。
「・・・ほら・・・」
ポカンとしてこちらを見上げる天王司。
「ほら、立てよ」
天王司の手を掴み、ぐいと引き上げる。今度は多少よろめいたがしっかりと立ち上がる事が出来たようだ。少し嬉しそうなオーラを放つ天王司を無視しつつオーランドに次の指示を委ねる。
「オーランド、これからどうする?」
オーランドは少し唸ると答えた。
「そうですね、取り敢えず天王司殿のご容態が気になるので一旦今日は退きたいところですね。安藤殿と青木殿はそれでもよろしいですか?」
「はい、問題ありません」
オーランドは安藤と青木の答えを聞き、城へ戻るように言った後、出発した。帰り道の途中、ずっと天王司の隣を離れないはずの安藤がわしの近くに寄ってきた。
安藤の足取りはこちらへ向かって来るごとに、少し嫌々とした様子に変化して行く。安藤がわしに抱いている感情はと言えば、ダイキライのみだと常々予想していたため、この行動には少し驚きが隠せなかった。
「・・・・・・」
建二の歩幅に合わせつつしかし時々離れるような、そんな曖昧の行動をしながらも、時々話かけるような仕草をするもすぐに知らん顔をする。その曖昧な行動に建二は苛立ちを感じていた。
「おい、らしくねぇね。あいつの周りを離れるなんて」
少し嘲るような口調で安藤そう話しかける、しかし、普段そう言われると口論を始める安藤だが今回はやけに大人しく聞いていた。
少しの間をおいて安藤が話しかけてきた。
「・・・い・・・・でよ」
「は?」
ひどく小さい声だったので何と言ったのか分からなかった建二は聞き返した。次に聞こえてきた声ははっきりとしていたが、天王司の人工呼吸を頼んだ時のように声が震えていた。
「天王司君に、言わないでよ」
頬をほんのり赤く染め、安藤はそう建二に告げた。何の事かは大体想像がついていた建二はこう伝えた。
「そうかわかった。しかし、条件がある」
「・・何よ」
相手の弱味を握ってある条件をつける、そしてその条件の内容はろくなものがない。そう言うシチュエーションを何度も少女漫画で見ていた安藤はそれを思いだしていた。
ボンと言う効果音が似合う程、顔を赤くして安藤は激しく動揺し言った。
「まっまさかあんた・・・今夜一緒に寝ようとか、そう言うハレンチな事じゃないでしょうね」
「いいや、違うが?」
何を言っているんだろうかこの女子は、そう思い、真顔で断固とした拒否の旨を伝える。
それを聞いた安藤は驚き7割恥ずかしさ3割と言った様子であたふたし始めたため、その条件を早急に言うことにした。そうでもしないと収まりそうな気がしなかったためである。
「その条件ってのはな、わしが天王司はもちろん誰にも天王司を助けたことは言わないでくれってことだ」
建二が天王司を助けたと言う真実を口止めするのは更に対立を激化させないためでもあった。
「・・まぁ良いわ、それじゃあそうしましょう?」
条件を了承する安藤。すんなり受け入れてくれたため面倒なことにならなくてすんで良かった。だが、あまり信頼出来ないのが本心である、そのため賄賂を持たせておくことにした。
「そうだ、これを持っていけ。口止め料だ」
差し出した物は、帰る途中に皆の目を盗んで再び採集した鉱石、紅・蒼・黄色の三種類とおぼしき魔鉱石の類いである。大きさは親指五センチ位のものである、角張った部分は神の右腕を利用して丸くしてあるため見栄えはあまり悪くない・・・はずである。
それを見た安藤は引ったくるようにしてわしの手からもぎ取って行った。うははーと感嘆の声を漏らし、じっくりそれらを見た後、こちらを見て言った。
「後で返してくれなんて言わないでしょうね」
内心少し呆れていたが、そんなことはしないと告げる。ようやく安心したのか小声でヤッターと口にするとポケットにしまいこんだ。
「お主も悪よのう」
「女子からその言葉を聞くことなんてないんだが?」
弾けるような笑顔でありがとうとわしに言うと、照れ隠しなのか太ももの外側、膝から数センチ上の箇所。
俗称モモカンと呼ばれる部分にに蹴りを入れると所定の位置(天王司の隣)へかけて言った。
「いってぇ!!おい!安藤てめぇ···」
罵声を上げたものの、まんまり怒る気にはなれなかった。何故だろうか、心の中で許せと呟く男の声がする。しかし、彼は少しも思い出せなかった。
そして、彼は錯覚していた。他人を救出したことの嬉しさのためだろうか。それとも安藤、青木と協力したことからの仲間意識か。
普通の彼なら見落とさないはずの彼女と癖を忘れていた。
彼女は何かを誤魔化す時に決まって、笑いかけることを。
それはいつかの記憶に、残滓のように残り消えかけていた思い出、記憶であった。
どさりと一人の少年が地面に叩きつけられる。右の頬は赤く腫れ上がり、彼は目の前に不動尊の如く険しい表情の自分の父親を睨め上げていた。
事の発端は彼が苦心して捕まえた蝶からだった。
夏のある日、特に珍しくもない、よく見かけるアゲハチョウを彼は今朝、ある山の近くの原っぱで捕まえた。今となってはアゲハチョウなど見ても、何かアゲハチョウが飛んでいる暗いにしか彼は気に止めなかったが、当時の彼にとってはこの上ない獲物であった。そして今まで見てきたどんな蝶よりも大きな獲物だった。
捕まえて少し観察してから放す、それだけでも彼の心は満ち足りた。ただそれだけで良かった。
彼らを捕らえて延々と虫籠の中に閉じ込めるよりも、その一時だけ捕らえ、その姿を目に焼き付ける、それだけで十分だった。
いつもするように大きな石の上に胡座をかき、捕まえた今日の戦利品のアゲハチョウをじっくり観察していた彼を見つけた少女がいた。
彼女の名前を彼は思い出せ無かった、ただその少女は彼の観察していたアゲハチョウに目を止め、駆け寄ってきた。白いワンピースにちょこんと少し大きすぎる麦わら帽子をのせた少女だった。
「なにそれ、チョウチョ?きれいだね」
突然の来客に彼は驚いたが、自分の興味を持つものに興味を示してくれたことに、彼の幼い無垢な心は喜びに跳ねた。
「うん、そうだよアゲハチョウって言う種類なんだ・・・」
それから二人は蝶について会話を続けていた。
小学校一年生の他愛ないその会話は小一時間続いた。端から見れば何とも微笑ましい光景だった。
が、その最後の別れ際に問題があった。
「ねぇ、そのアゲハチョウ、ちょうだい?」
その少女の問いを受け、彼はとても悩んだ。
自分はもう観察し終わったからもうこのアゲハチョウは放すつもりだったが、この少女にあげても良いのだろうかと。
小学生の、幼稚園から上がりたてのまだ無邪気な彼の心はそれを善しとした。
「いいよ、けどあとで放してあげてね」
そっと傷付けないようにゆっくりと彼女の手に移し、彼女は満面の笑みを浮かべて、言った。
「ありがとう、それじゃあね」
颯爽と走り去っていく少女を見ながら、彼の無垢な、ひどくお人好しな彼の心は、ありがとうと言われ、自分のしたことの心地よさを感じていた。
少しして、家に帰る途中、彼はあのワンピースの少女を見かけた。手にはあのアゲハチョウがとらわれていた。
ただ、彼女のまわりには、彼女と同じくらいの年齢の女子が二人いた。
何をしているのだろうと思った彼は近くの電柱に隠れ、彼女達の会話を耳を立てて聞いていた。彼女等に見つからないようにしていたため誰が話していたかは分からなかったが、聞こえてきた内容は幼く無垢な彼の心に強い衝撃を与えた。
ねえねえ、今日はどうだった?何人私たちのびぼうのとりこになった男子の人数は。
うーん私は十人かな。ほんと男子ってバカよね。少しほめただけで、あんなに喜ぶんだから。ねぇ○○はどうだった?
えへへ、私は十三人よ。その中にいたさ、バカな奴から、これもらったわ。
うわっ何よそれ、虫じゃない。気持ち悪ッ、よくそんなもの持ってられるわね。でもこの遊びは止められないわね。
ええ、とっても楽しいわ。多分日本でこんなに楽しい遊びをやってるのは私たち美少女三人だけよ。それはそうといつまでそんな汚いもの持ってるつもりよ○○。
ええそうね、でも何で今の今まで持っていたかわかる?
いいえ、わからないわ。どうしてなのかしら?
こうやって、踏み潰して遊ぶためじゃない。そらッ
パン、とサンダルが地面を踏んだ音がして、それに続き他の二人も踏む音が、怒りに打ち震える彼の耳に入り込んできた。
男子が女子からバカだと言われることは仕方ない、と思っていた。自分にも他のクラスメイトの男子にもバカな所はあるのにはわかっていたし、自分のそれは地道に直していこうとも思っていた。
虫を女子が、キモいとか汚いとか言うことにも仕方がないと思っていた。女子には女子の、男子には男子の見方があるからだ。
ならば、そのか弱い拳を握りしめてその幼い顔を憤怒の形相になるほど怒る理由は?
直接的に害が全く無いにも関わらず、面白半分に命を奪うその行為。そして、少しも怪しもうともせず信用してしまった結果、アゲハチョウの命を奪う結果になってしまった自分への自己嫌悪のためである。
「やめろよっ、てめぇら!」
大声で電柱から飛び出し、アゲハチョウを踏み続ける女子を睨み付ける。
「なっあんたはさっきの!」
先程のワンピースの少女と他の女子が驚きの声を上げ、彼の姿を視界に映す。
「誰よあんた、さては盗み聞きしてたわね、このすとーかー、へんたい」
「そうよそうよ、このバカ男子」
「・・・そ・・よ」
うつむき震える彼の声を、責め立てられ泣き出すかと思ったのか右の方にいた女子がここぞとばかりに言う。
「ねぇあんた、なぁにせいぎのひーろーでもきどってたの?」
答えない彼。
「まじでほんとにキモいんだけど、ねぇ。聞いてんの」
うつむいていた彼がゆっくりと顔を上げ、彼女達を睨め上げる。その形相に、ヒッと小さく悲鳴を上げる白いワンピースの少女。
「そうだよ」
「・・・・」
「お前達が俺のことをどう思い、罵るかはあんたらの勝手だよ。だが・・・」
言葉を濁す彼に反撃にとでも口を開きかけた少女の口が開かれたが、彼の次の一言によって閉じることになった。
「だが、面白半分に命を奪って言い訳じゃないっ!!」
その一声と同時に彼の怒りは大爆発をした。
バキッと勢いよく、三人のうち一人の頬を彼は殴っていた。それがまるで引き金にでもなるかのように、彼の暴力も大爆発した。
肩、頬、鼻、腕、腹、いたる所に彼の拳や蹴りが入っていく。容赦など無かった、ただただ、いかに相手をいためつけ、苦しませ、彼女らがしたことを後悔するかだけを考えた暴力だった。
彼の暴力が静まる頃には、彼女たちは大声で泣き出し始めていた。
彼は怒るとともに、嘆いていた。粉々に踏み潰されたアゲハチョウの残骸を見ながら。
その後、そんなことさえを彼女の行動を咎めず、当然のように彼には避難の嵐が襲ってきた。
彼が少しも反省しないことに腹を立てた彼の父親は平手打ちをした後、庭に彼を蹴落とした。
彼の父親は言った。女性に暴力をふるんじゃない、我慢しろ、許しなさいと。
それを受けて彼はしぶしぶ謝ったが、心のうちでは疑問と自分のしたことに少しも共感してくれない親への怒りで充ち満ちていた。
今では忘れてしまった建二の幼い頃の記憶、されど彼の心の根幹に刻まれた記憶である。
人間の本性は残虐の性分を誰しもが持つものだ、そう言う考えの根幹を成すものとして。




