第四話
どれくらいしがみついていただろう。
気がついた時には、知らないところで寝かされていた。
獣の頭上ではないことは確かだった。快適さで分かる。
(まさか振り落されたのか…?)
その不安とは裏腹に、僕の身体は厚めの植物の葉で包み込まれていた。
(あの手足でどうやってかけたんだ…?)
率直にそう思った。
起き上がり、辺りを見回して見る。獣の姿が見当たらない。
あんな大きな図体をしているのに見つけられない。
(ちょっとその辺を探しに行ってみるか。)
知らない場所ではあったが、穏やかな雰囲気が流れている。
・・・ザザーン。ザザーン。
目の前に広がる海沿いの風景は綺麗で、繰り返し聞こえる波の音が心地よい。
両腕を伸ばしながら歩いていると、だんだんと身体も起きてくる。
やっと目が冴えてきた頃、ふと遠くの木陰にモヤモヤしたものを見つけた。
少しずつ近寄ってみると底が見えないような真っ黒い影があり
そこから、うめき声のような音が聞こえた。
(なんだ…?これ…。)
僕が手を伸ばしたその時。
「それには触れない方が良い。」
後から声が聞こえた。
直ぐに振り返ると、岩の上に腰かけてこちらを見ている人がいた。
「おぉ~い。ここにいたのかぁ!」
大声を上げながら、ものすごい勢いで獣が近寄ってきた。
「海なんか見つめてどうしたぁ?」
息一つ乱れていないことが恐ろしい。
「いや、あの岩場にいる人から止められたんだよ。そのモヤモヤには触れるなっ
「あれに触れたのか!?」
説明し終わる前に、ものすごい剣幕で顔を近づけてくる。
僕が動揺しているのを見ると、ますます恐ろしい顔を近づけてくる。
(何か言わないと…)
「おや、久しぶりじゃないの!」
そんなピリリとした空気を裂くように、急に女性が現れた。