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思念の国  作者: 水無月雨音
3/9

第三話


「うわあぁぁ〜」

体内の全臓器が浮かぶ心地がした。嫌な汗が毛穴から一斉に噴き出す。

(僕を一思いに食う気か?!)


ドサッ…。ふわん。


(ふわん…?)

感触の違和感に怯えながら、少しずつ目を開けてみる。


(口の中じゃない!?)

ふわふわ。さらさら。それに、全身があたたかく心地良い温度に包まれている。

「いきなり掴み上げて悪かったなぁ。驚いたかぁ?」

今まで見上げていた獣の瞳が、下に見える。


「少し確かめたいことがあってな。

移動するなら俺の方が速いと思った次第だ。

許してくれぇい。それじゃあ行くぜい!」


地面を蹴り上げ、風を切る音が聞こえた。

(え…?何?どういうこと!?)

考える間もなく早急に獣にしがみついた。



しばらくの間、振り落とされないようにすることで精一杯だった。

(この手を放したら…速攻落ちる!)

握力に限界を感じ始めたその時、獣が急に速度を落としピタリと止まった。


「おぉーい!見てみろよぉ〜!」

言われるがまま、屈めていた上半身を起こしてみる。

山や森の緑、湖や海の青、目の前に広がる景色すべてが、

太陽の光を浴びてキラキラと輝いていた。

何色にも重なっているはずのそれらの色合いは、

混ざり合いながらも互いを尊重するよう表現されている。

(何だろう…久しぶりに見た気がする。)

全身から程よく力が抜ける感覚を覚える。


「お前さん、やぁ~っと笑ったな。」

獣はしたり顔で僕を見ながら言った。しかしその得意気な表情はいただけない。

「ここ、綺麗だろう?どうしてもお前さんに見せたくてなぁ。」

何も考えてなさそうな獣に気を遣われたことが、恥ずかしくもあり嬉しくもあった。


「お前さんは、移動しているときも全然楽しそうじゃないんだもんなぁ~」

「あんたがあり得ないスピードで走り出すからだろ!!」

身体中の肉が、剥がれ落ちそうな程のスピード…。出している当人は、分からないんだろうな…。


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