2-1
しばらくお互いの顔をじろじろ見つめあった。
同じ空間に、同じ顔の人が二人。
一ヶ月前まで毎日見てきた、自分と同じ顔が今目の前にいる。
「お姉ちゃん。・・・姉ちゃん。さきょちゃん!」
「・・・右京?本当に右京?」
「う―――。左京ちゃーん。会いたかったよう」
思わず涙が溢れてきた。
もう会えないと思っていた。
しゃべれないと思っていた。
私の大事な大事な、片割れ。
走っていって抱きついた。
暖かい左京の胸の中。
私をぎゅっと抱きしめ返してくれる、温かな腕。
死んだなんて嘘のように、左京の身体は温かかった。
「右京、なんでここにいるの?」
左京は私が泣き止むまで待ってから、優しくそして戸惑い気味に尋ねてきた。
落ち着いてきた私はさみしかったこと、どこか遠くに行ってみたいと思ったこと、そしていつもとは逆の電車に乗ったらいつのまにかここにいたことを詳しく話した。
左京は車掌に切符を見せた時のことを話すと、その切符を私にも見せてと言ってきた。
「切符?」
「うん」
「えっと、確かここに・・・」
私はポケットの中から車掌に見せた黄色の切符を左京に見せた。
「良かった、黄色ね。赤色だったらどうしようかと思ったよ」
切符をみた左京はほっと安心したのか、ふーっと息を吐きながら地面にへたりこんだ。
「赤色だったらぶん殴ってたからね!」
「赤色だったら?」
そういえば車掌も『切符が赤色になる』とか言っていたなぁということを思い出した私は、左京同様地面に座り込み尋ねた。
「切符の色が変わるって本当?黄色だとよくて、赤色だとなんでだめなの?」
「何も訊いてないの?」
「うん。でも・・・」
「でも・・・?」
続きを言わず黙ってしまった私を、下から左京が覗き込む。
落ち込んだ私に、いつも左京がしていたしぐさ。
左京とこんな風に目が合うことなんて、ないと思っていた。
「左京とまた会えるとも思わなかったから」
「右京・・・」
「なんで?なんでここにいるの?生きてるなら帰ってきてよ!お母さんもお父さんも悲しんでる。私だって左京がいなかったら嫌だ!お願いだから帰ってきてよ。一緒に帰ろうよ。うちに一緒に帰ろう」
「それは・・・」
生きている訳ではないと、頭のどこかで分かっていた。
動かなくなった左京の身体も見たし、骨になったのも見た。
それでも言わないと、帰ってきてと言わないと、私が壊れてしまいそうだった。
もう会えないと思っていた人と会えることほど嬉しいことはないだろう。
ましてや死んだ人と・・・。
でも、また別れないといけないと思うと身が引き裂かれそうで・・・。
苦しくて、苦しくて・・・。
無茶だと自分でも分かっている。
ここがどこだが薄々感づいている自分もいる。
あの電車の中であった女の子。
あの子をどこでみたか、私は思い出していた。
それは、新聞の中。
左京と同じ交通事故で亡くなった、加藤美和子さんだったんだ。