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境界駅  作者:
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1-3

駅は近所では見たことのない、木造の平屋の建物だった。

 初めて見る風景に、どれだけ遠くまで来てしまったのかと不安になる。

 車掌にちょっと待って、と言おうと電車の入り口から車内を振り返って見たとき、乗っている人の少なさに驚いた。

 私と車掌を外して、五~六人の男女が席に別れて座っていた。

年老いた人、サラリーマン風の男性、主婦。

その中に私と車掌のやりとりをじっと見つめている人がいることに気がついた。

二つ結びの私と同じ年くらいの女の子。

淋しそうに、そしてどこか羨ましそうに私を見つめている。

どこかで私はこの子を見たことがある。

そんな気がした。

それがどこだったか思い出そうとした時、車掌の言葉で私は我に返った。 

「では、ご利用ありがとうございました」

「え、あの、ちょっと・・・まだ分からないことが・・・」

 にっこり笑う車掌と、混乱して頭が真っ白の私の間にドアという境界線がしっかりと引かれた。

 電車は私を一人置いて徐々に動き出し、そしてついには見えなくなった。

 分からない事ばかりだ。

 買った記憶のない、初めて見る切符。

 『境界駅』と書かれた見慣れない名前の駅。

 ここでじっとしていても、分からないことは分からない。

 仕方なしに、私は180°方向転換することにした。

 ここは自動改札口ではなく、昔みたく駅員が入り口に立って切符を確認していくようだ。

 しかし肝心の駅員の姿がない。

 あれ?

 切符を買うところさえない。

 どこで切符を買うものなのだろうか?

 そういえば時刻表もない。

 そもそもこの駅でなぜ私だけが降ろされたのだろうか?

 一緒の車両の方は何故何も言われなかった?

 切符の色が変わるって?

 赤になったら戻れない?

 疑問だけがふつふつ湧いてくる。

 そうだ、あの車掌は駅員に尋ねろと言っていた。

 しかし、さっき言ったとおり駅員の姿はなく、お客らしき姿もどこにもない。

 途方に暮れていた時、駅の入り口が勢い良く開いた。

 「震、いる?」

 開いた入り口と同じくらいの勢いで入ってきたのは、私と同じ顔の女の子だった。


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