序章
序章
毎日がひどく色あせて見える。
いつもと同じように朝起きて、いつもと同じように朝食を食べて学校へ行く。
そしてまたいつもと同じように学校で勉強し、友達とおしゃべりをして、帰宅する。
帰宅してからもいつもと同じように夕食を食べ、時に宿題をしたりテレビを見たり漫画を読んだりしてお風呂が沸くのを待つ。
お風呂に入って、いつもと同じようにお布団に入って眠るのだ。
毎日が同じことの繰り返し。
そりゃ、変化がある時だってある。
小学校から中学校にあがってから、高校受験の勉強漬けの日々、高校に進学して新しい友達に勉強に先生。
平日と休日の違い。
つい一ヶ月前までは、変化があろうとなかろうと毎日が楽しかった。
私の世界の中心には、いつも姉がいた。
それもただの姉じゃない。
双子の姉だ。
母のお腹の中にいたときからずっとずっと一緒に生きてきた、姉だ。
姉がいたから毎日に彩があり、笑いがあり、すべてのものが生き生きとしていた。
私も姉ももう高校生だ。
お互い彼氏ができてもおかしくないし、きっと彼氏ができたら世界の中心はそれぞれ変わっていったのだろう。
でも、それでもまだ、まだその時は、私の中心は姉で、姉の中心が私だった。
私のすべてが、姉だった。
そんな姉が、一ヶ月前十六歳の誕生日を迎えることなく、交通事故で逝ってしまった。
誕生日にあげる予定のブレスレットは、鞄にいれていつも持ち歩いている。
自分でつける気にはならなかった。
事故を起こした運転手は携帯を触っていて、姉がいることに気づかなかったそうだ。
私にとってそんなことどうでも良かった。
ただ、もう姉がいない。
今までずっと、悲しくても嬉しくても傍にいてくれた姉がいない。
一緒に笑い、泣き、怒った姉がいない。
その日から世界に色が無くなった。
今自分が笑っているのか、悲しんでいるのかわからない。
姉がいない。
ただそれだけで、生きている意味がない。
姉のいない世界なんて、なんの価値も見出せない。
かといって、姉の後を追って私までが死んでしまうと、両親が悲しむ。
生きている苦しみと、両親を悲しませたくない気持ち。その狭間で私はただ一人、もがいていた。