プロローグ
短い連載作品です。初めて書き上げた作品です。
棲み処である洞窟を目指して、一匹のスライムが必死にポンポンと草原の中を跳ねつづけている。『スライム』とはいってもスーパーボールの方が性質的には近いが。
後ろからはハンター気取りの10才くらいの少年が安物ナイフを握って、このスライムを倒すべく追いかけて来る。
人間たちにとっては少年の握っているナイフなど、剣と比べたら只のオモチャだ。しかし、スライムからすればすえ恐ろしい鋭利な刃である。
少年足音がだんだん大きくなってきているように感じた。だがスライムは振り向かずに跳ねつづける。振り向いたらそこでオワルからだ。
そして――「つっかま〜えたっ♪」
スライムは数十秒の逃亡の末、捕まってしまった。少年は満面の笑みを浮かべている。このスライムを倒せば、経験値のメーターがいっぱいになってレベルアップするからだ。
ヤバい。どうしよう。ヤバい。どうしよう。ヤバい。ヤバい。ヤバい、ヤバい、ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいっっ…………!
さっき身代わりとなった仲間の死が無駄になってしまう。けれども、もうどうすることも出来ない。後は自分も仲間に続いて死んでいくだけ。少年に捕まったスライムは思うのであった。
――掟を、破らなければ良かった、と…………。
少年は穢れを知らない、純真な笑みでナイフを向けて、斬撃を繰り出すべく近づけてくる。不思議なものだ。こんな時に限ってナイフの動きがやけにスローモーションに見える。
――――ブシュッ!
刹那、少年の斬撃によりスライムは死して一瞬だけ断末魔が響いた。
スライムの身体は融けてドロドロなマナに戻り始める。正直言って気持ち悪い。
それから断末魔よりも大きな音で、少年のレベルアップを祝福するファンファーレが鳴り響くのであった…………。