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侵略学園  作者: 南 勇気
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その4

 4


 護人は、素早い動きで岡部の正面に立つと、口角をつり上げたまま、拳を振り上げた。エヴァンに操られているであろう岡部は、護人の動きに反応する事が出来ずに、護人のパンチを顔面に諸に受けて地面に崩れ落ちた。サラリーマン風の男も護人に襲いかかろうとしたが、護人の回し蹴りを後頭部に諸に受け、後方に吹っ飛んで行った。ここまで、僅か数秒。

 「ほう、なんの躊躇いもないな」

 エヴァンの言葉に護人は、

 「悪いな、俺は以外と弱い物いじめが好きなんだ」

 「ケッ、ふざけた野郎だ」

 「人間の身体と融合しても、人間には戦闘に有利は特殊能力はないぜ。身体の形状を自在に変化出来る細胞粘土の方がよかったんじゃないのか」

 護人が言うとエヴァンは、

 「いやいや、この男は相当イケてるよ。融合支配した私には、分かる。この男の身体は、全ての攻撃を吸収してしまう脂肪の塊さ。きっと、おまえの攻撃も効かないさ」

 (ちっ、仕方ない)護人は、素早い動きでエヴァンの後頭部目がけて、軽い跳躍から鋭い蹴りを放った。エヴァンは蘇我の頭部に融合しているので、頭を狙ったのだ。

 「ぐわっ!」

 蹴りを受けたエヴァンは、低い声で唸るとその衝撃で前屈みになった。が、そのまま腕を振り上げて、着地したばかりの護人の腕を掴んで身体を引き寄せた。

 巨大な脂肪の塊の中に顔面を押し付けられ護人は身動きが出来なかった。完全に人間離れしたパワーだった。エヴァンに融合され、操られている蘇我の身体は護人の想像を超えるポテンシャルを発揮していた。

護人の口と鼻は完全に肉の塊で塞がれてしまった。

 「このまま、おまえの頭に同化してやる」

 エヴァンは、身動きの出来ない護人の顔をさらに脂肪の塊であるブヨブヨの身体に押し付けた。

 既に普通の人間であれば窒息死しているであろう時間、エヴァンは護人の顔を押さえつけていた。

 護人の身体から力が抜け、両腕がブラーンと力なく垂れ下がった。

 エヴァンは、押さえつける力を僅かに緩め,護人の身体を引き上げ自分の顔に護人の頭を近づけた。

 その時、護人の両腕に力が入り、蘇我の頭であるエヴァンに左右から挟み込む様な協力なパンチを放った。


 「グゥ、グゥェェェー」

 エヴァンが咆哮し、地と肉片が飛び散った。


 護人は、後方に軽くジャンプし、ニヤリと笑った。

 「俺が窒息する訳ないだろう!それでなくても地球は、酸素が多過ぎて俺は軽い酸素中毒なんだぜ」

 蘇我の頭となったエヴァンが蘇我の頭から分離を始めた。融合した蘇我の脳が完全に破壊されてしまった為に蘇我の身体を操る事が出来なくなったのだ。

 エヴァンは、その姿を緑色のスライム状に変化させると蘇我の身体を伝ってドローンと地面に落ちた。エヴァンも護人の攻撃によってかなりダメージを受けている様だ。動きが超スローになっていた。


 ズドーン!!


 エヴァンが抜けた蘇我の身体がそのまま後方に倒れ込んだ。顔面は完全に破壊されていた。

 誰かがこの死体だけ見ればかなり、残忍な殺され方をしたと思うだろう。まぁ、実際そうなのだが・・・。

 地面に落ちた緑色のスライム状のエヴァンは、その姿を本来の姿に戻ろうとしていた。大きなカエルの様な身体からクモのような6本の細い手足が伸びて来る。ゆっくりと護人から遠ざかる様に、いや、逃げる様に移動しながら。

 「だいぶ、お疲れみたいだな」

 護人は、ニヤリとしながら言った。

 「しかし、醜いな。そんな姿じゃ何かに融合しなくちゃ確かにやってられないよな」

 護人は、無造作にエヴァンの身体を右手で鷲掴みにして持ち上げた。

 「さて、始めるか」

 護人の右手首についている装置トラッカー(追跡装置)から、数本の細長いまるで何かの生物の触手の様な黒い細長いコードが伸びてきてその先端にあるピンが弱っているエヴァンの身体に突き刺さった。

 「これでオマエが地球に来てからの行動のすべてが把握出来る。一緒に来た仲間の事も少しは分かるだろう」

 少しして、トラッカーが何かの電子音を発すると同時にエヴァンの身体に突き刺さっていたピンが抜け、その触手の様なコードが”シュルシュル”と戻って行った。

 「はい、ご苦労さん。殺さずにギリギリのところで情報を引き出すのも結構面倒なんだぜ」

 護人は、エバンを鷲掴みにしたまま言った。


 ギリュギリュ・・・グゥグゥエェェ・・・

 エヴァンが言葉にならない声を発していた。本来の姿、今の形状では巧く言葉を発する事が出来ないらしい。

 「はいはい、今訳すからね〜」

 護人がトラッカーに手をやり小さなスイッチを押す。


 ”俺を殺すと俺が今まで精神を喰った人間達が殺し合いを始めてみんな死ぬぞ”

 ”俺をこのまま、宇宙刑務所に戻せ”


 「なるほど、そう言えばそうだったね!今、それが何人だったかオマエの行動記録から調べるからね」

 護人がトラッカーに目をやる。すると、数字の様な記号がトラッカーの上部、護人の右腕の空中に投影された。

 「・・・346人、まぁ少ない方かなぁ。しかも、全員のこ近辺の人間達だね。タコ好きの人間が含まれてない事を祈ろう」

 護人は、エヴァンを鷲掴みにしている右手に力を入れた。


  ギギュゥ、ギギグゥグェェェ!!!!


  護人の右手の中から握りつぶされたエヴァンの肉片がドロっとこぼれ落ちた。


 「あっけない最後だったね、エヴァン。〜まぁ、俺が相手じゃしょうがないか」


 (あとは、雷翔君にまかせるか)


 護人は死んだ蘇我の服で右手を拭くとそのまま、ゆっくり歩いて公園を出て行った。


 数分後、暗い茂みの中からヨロヨロと男が歩いて出てきた。

 繁雄だった。


 「どうなってんだよ・・・。なんなんだよ」

 繁雄は、顔面を破壊されて横たわる蘇我の死体を見下ろしていた。

 奥には、頭を切り離された谷田と、顔面が陥没している岡部の死体も転がっていた。さらに、後頭部を陥没させたどこかのサラリーマン風の男の死体。


 ”オエェ〜、グエェー”


 繁雄は、たまらなくなり地面に両手をついて吐いた。胃の中が熱く苦しかった。何度も何度も吐いたがまだ、吐き足らなかった。


 地面に口を近づけて嘔吐している繁雄の口の中に”何か”が飛び込んだ。


 それは小さな、虫だったかも知れない。口の中が嘔吐した残骸で溢れていなければ気づいたかも知れないが、繁雄は気づかなかった。



 (アブナカッタ、アブナカッタ・・・)


 何かが繁雄の身体の中で思った。


 繁雄は、よろよろと立ち上がり公園を後にした。

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