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侵略学園  作者: 南 勇気
4/5

その3

 3


 蘇我はそのまま、女?を見ながらゆっくり一歩二歩と後退した。拳銃もまだ、女?に向けている。しかし、岡部は、何事もなかった様にその場に立つ女?の顔から目をそらす事が出来なかった。

 「私、カワイイでしょ?・・・ねえ、好い事しない」

 女?は岡部に近づきその手を取った。そして、岡部の口に、自分の唇を押当て舌を入れた。

 「うっぐっ」

 その時、岡部が白目を剥いて、口から涎を流した。

 「岡部、逃げろ!」

 女?から離れた蘇我が岡部に大声を出した。しかし、岡部はまだ、女?に抱きつかれて口を吸われていた。そしてゆっくり、女?の露出した胸の膨らみに顔を埋めた。

 「いったいどうなってる!岡部はなにやってんだ」

 そう言って、蘇我は振り向き、護人を睨みつけた。

 護人はゆっくり蘇我に近づいて来た。蘇我は、女?の方に銃口を向けている。岡部はこちら側に背を向けて女?に抱きついている為に、護人や蘇我は岡部の顔を見る事が出来なかった。

 「おいガキ!おまえは此処で何をやってた!あの女は、なんなんだよ」

 「あの女は人間じゃない。信じなくても構わないが宇宙人って奴だ。だから、おまえは逃げろ」

 「何ふざけた事言ってやがる!」

 「後は俺にまかせろ!奴を倒したらおまえの記憶も消しといてやるよ」

 護人がそう言った時、女?に抱きついていた岡部の身体が地面に崩れ落ちた。

 「岡部!」

 それを見て、蘇我が女?に向けて構えていた拳銃の引き金を再び引いた。

 バァーン、バァーン!

 弾は2発とも女?の上半身に命中したが、やはり女?は何事もなかった様に立っている。よく見ると女?の身体には、先に撃たれた3発と合わせて、5カ所の銃創があった。それは、血液や体液が流れる事無く、ただ黒い小さな穴だった。

 「・・・どうなってる?」

 蘇我は、無表情で小さな声で呟いた。

 「痛ぁ〜い!って言った方がいいのかしら」

 しゃがれた声になった女?が微かな笑みを浮かべた様に見えた。そして、女?は、ゆっくりと護人と蘇我に向かって来た。腕がスゥーと肘から下が伸びて長くなり、手首から先が鎌の様な形状に徐々に変化していった。

 「なんだよ、本当に宇宙人なのかよ」

 蘇我がそう言ったと同時に護人が女?に向かって走った。女?が振り回した鎌状の腕を低い姿勢で躱し、屈み込んだ姿勢から女?の顎に下から強烈なパンチを浴びせた。腕が長くなった分、動きが大きくなった女?は、護人の強烈なパンチを諸に喰らった。身体を仰け反らして暗い空を見上げた女?は更に横から飛んで来た護人の回し蹴りをその頭に受けた。

 バキッ、ビシィー!

 「グェー!」

 女?が悲鳴を上げた瞬間、女?の頭が首の付け根から、身体からは引きちぎられた様に飛んだ。緑色のスライム状の粘液が、僅かに身体とその頭を繋げている。頭のなくなった女?の身体はその場にバタッと倒れた。その倒れた身体から数メートル離れた所に転がった女?の頭は、小刻みに揺れながら地面の上を転がった。その頭を追いかけ、護人は踏みつぶそうと脚を振り上げた。しかし、蹴り落とされたその脚を避け、その女?の頭は倒れている岡部の所まで転がった。

 すると、倒れていた岡部が女?のちぎれた頭を持ち上げ立上がった。

 「おい、岡部!大丈夫なのか?」

 蘇我の言葉に

 「あいつは、あの女の頭に操られているんだ」

 護人は、そう言って女?の頭を抱えた岡部に駆け寄り、その腹部に蹴りを放った。

 岡部は護人の蹴りを受ける寸前に女?の頭を蘇我に向かって投げつけた。

 「なに!」

 驚いた護人は、岡部を蹴りで後方に吹っ飛ばすと、その女?の頭を捕まえようと手を伸ばしたが、その女?の頭は、自ら飛んでいるかの様にコースを変え、なんと蘇我の顔にぶつかった。その瞬間、女?の頭から蜘蛛の手足の様な細い触手が何本も伸びて蘇我の頭を抱え込んだ。

 「ぐわぁー!」

 蘇我の口の中に女?の舌が潜り込んで来た。蘇我はなんとか女?の頭を引き剥がそうとするが女?の長い舌が頭の中にまで入ってくる感覚を感じながら、片膝をついたまま、意識を無くした。

 (しまった、あのデブを操られるとかなりやっかいだな)護人は、蘇我から少し距離を取り、身構えた。最初に蘇我に投げ飛ばされた時に感じた、人間離れした蘇我のパワーを思い出していた。


 蘇我がゆっくり立ち上がり、顔を上げた。蘇我の顔は女?の頭と融合してもはや人間の顔ではなくなっていた。2つの顔がぐちゃぐちゃに混ざり合い、目が4つ、鼻が2つ、口も2ある。

 「やはり直接融合した方が扱い易いな」

 女?の頭に融合され、蘇我であった者が不気味な声を発した。

 「やはり、頭が本体だったか」

 護人が言った。

 「そうさ、最初の身体は造りものさ。この地球で自由に活動する為に造った細胞粘土の塊さ。てっとりばやく人間に化けれるんだが、やはり動きが鈍くてね。人間と融合するのは、ちょっと難しいのさ。馴れないと、こんな姿になっちまう、あまりに可愛くないだろ」

 蘇我と融合した女?は、ケッケッケッと笑った。

 よく見ると、女?の元の身体は、ブクブクと小さな音を立て融解している。本体である頭が離れたのでその機能を失ったのであろう。

 「おまえ、”エヴァン”だな」

 護人は、右手首にあるトラッカー(追跡装置)に目をやった。ブレスレット型の装置、トラッカーには、小さなモニター部分がありそこに様々な情報が表示される。

 少しニヤリとして、

 「おまえは、チビのエヴァンだ。他の生物に乗り移らなければ、まともに闘う事も出来ない野郎だ」

 「ほざけ!私は、これまで多くの惑星を滅亡から救った英雄だ。なぜ、私が惑星連合に捕まらなければならないのか理解に苦しむ」

 護人にエヴァンと呼ばれた”その者”は答えた。

 「私は、戦争を引き起こし、滅亡寸前の高度文明生命体に融合し、操り、戦争を回避し平和な世界を幾つも造ってきたのだ」

 「おまえに操られた生命体は、自我を失い、考える事を放棄し、生ける屍と化した。それが戦争の無い平和な世界と言えるか!戦争によってその星の文明が滅びたのなら仕方のない事だ。おまえに他の惑星に干渉する権限はない!」

 護人がそう言った時に護人の背後からゆっくりと一人の男が歩いて来た。最初にこの公園で”女子高生に化けたエヴァン”に良い事の最中に襲われた男だ。サラリーマン風のこの男もエヴァンに精神を喰われ、岡部の様に操られて起き上がって来たのだ。その目はうつろで焦点が合っていない、まるでゾンビの様だ。

 「この男達の様に私に精神を喰われると不安や苦痛のない世界で生きられるのさ。この星の人間達全てがそうなれば、永遠に争いの無い世界となる。素晴らしいじゃないか」

 蘇我の頭部に融合した、エヴァンが醜く笑った。

 護人の蹴りを受けて倒れていた岡部もフラフラッと立上がった。そして、サラリーマン風の男と2人で護人の後方を塞いだ。前方には、エヴァンがいる。

 「その2人は、私が支配を解けば、元の人間に戻れる。すなわち、”只の人間”と同じなのさ。おまえに殺せるのか?文明上位のおまえが文明下位の生命体の命を奪ってはいけないなぁ。それは、おまえ達の掟に反するんじゃないのか」

 「おまえを殺せば精神の支配を解けるのか?」

 「いやいや、それが困った事に私が死ぬと、一度私に精神支配された生命体は、私の後を追うかのごとく自殺するのさ。それも相手がいれば殺し合ってなぁ、ケッケッケッケッ」

 「・・・そうか。ならば、おまえもこの男達も殺す」

 護人は、口角を以上な位つり上げて、笑った。

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