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侵略学園  作者: 南 勇気
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プロローグ

 プロローグ


 ワタシの身体は、 フィギュアライザー(生体分子再結合装置)の特殊ジェル中で、この地球の”人間”そっくりにその姿を変えようとしていた。ほとんどの組織は出来上がっていて、最後の上皮組織の最終調整中だ。だいたい高度文明を持つ生物は、外見や特殊能力は多様だが、身体の階層構造は基本的に同じであり、”ワタシタチ”のテクノロジーを使えば 然程(さほど)、難しい事ではない。

 地球の大気成分も軽い酸素中毒を除けば、ワタシには問題ない。

 ワタシの生まれた故郷(別の天体)は地球より重力が大きいので地球の重力はワタシにとっては、好都合だ。

 まぁ、それもワタシが”選ばれた理由の一つ”だろう。


 ワタシは、地球人となって活動する国家に合わせ、人間になった時の人種を決定した。

 それと、性別は、”そのまま”男だ。


 特殊ジェルの中では、身体の変化だけでなく、地球で活動する為の学習も同時に行われる。ジェルに(まみ)れながらワタシは、人類の歴史を学び、文化を学び、言語も習得していった。


 地球時間で約200時間後には、ワタシは人間の姿になっている筈だ。

 人間の姿は、本来のワタシとは違うが、ワタシは人間の姿が気に入っている。なにより、人間の女は、美しいと思った。




 ー それから約1ヶ月後 ー



 アメリカ合衆国 ワシントン D.C ーホワイトハウスー

 オーバルオフィス (大統領執務室)



 「なんとか、話は付けたよ。これでMr.グィングヴァーは、ジャパンで自由に活動出来る筈だ」

 アメリカ合衆国大統領ウォルト・アーサーは、日本の総理大臣、近藤伸三とのホットラインでの会話を終えると目の前に座る男に言った。


 「助かるぜ、大統領。我々は、ジャパンと言う国家とは直接の接触は行っていないからな。何十年も前からMJ-12(マジョリティー12)を窓口に我々と取引しているアメリカ合衆国の大統領に適当な理由をつけて説得してもらった方が話が早い。それと大統領、グィングヴァーという名前は、俺の本当の名前を地球の言語に合わせて無理に発音した名前だから、言いづらかった”グィン”でいいぜ」

 Mr.グィングヴァーと呼ばれた男の口元は一瞬ではあったが、口角が以上な位つり上がった様に見えた。そのグィングヴァーは、顔の上半分を見慣れないゴーグル状の装置で覆っていて、口元しか見る事が出来なかったので、尚更”不気味な笑顔”に見えた。顔が隠れている為に年齢や国籍も良く分からない。


 「では、Mr.グィンと呼ばせてもらうよ。キミの正体を明かさずにジャパンの総理大臣を説得させるのは、多少、ほねが折れたが問題ない。ジャパンは我々の同盟国と言うか、支配下にある。領土問題等、我々に頼らなければ何も出来ない弱者の国だ。我々の頼み事は断れんのだよ」

 一瞬ではあったが、グィンのゾッとする笑顔を見た大統領は、気を取り直す為か、軽く腰を上げ、深々とその豪華な椅子に座り直しながら話を続けた。

 「Mr.グィンの身分は、表向きはアメリカ合衆国大統領直属のエージェントで最重要国家機密に関する極秘活動という事になっている。Mr.グィンの行う全ての活動に対してジャパンでは一切の干渉が出来ないことになっている。たとえ、ジャパンの国民を無差別に殺してもジャパンの警察に拘束される事はない筈だ。もし、聞き分けの無い現場の人間がMr.グィンを拘束したとしても、近藤総理とジャパンの警察機構のトップから忠告が入る筈だ。アメリカのエージェントに手を出すなと。更に情報操作も同時に行われる」

 大統領は、少し”どや顔”だった。

 「大統領、俺はそんなに派手に暴れたりしないさ。文明下位の惑星での活動マニュアル通りに目立つことなく、正体を知られずにその社会にとけ込み、”スマート”に目的を終えるさ」

 「Mr.グィンがジャパンでどの様に動いても自由だが、なるべく穏便に頼むよ。直ぐにジャパンに行き”行動”を起こすのか?」

 「ああ、そのつもりだ。しかし、どうもこの身体は、なかなか馴染めない。”元の身体”と違って、たった”2本になった脚”では、まともに走る事も出来ないぜ」

 グィンは太ももの辺りを両手で摩りながら言った。

 「Mr.グィン、良かったらキミには、どんな能力があるのか教えてはもらえないだろうか。我々の国で家畜殺しキャトルミューティレーションを行っていた連中を捕まえた男とは、能力が違うのかい」

 大統領は、興味ありげな顔をしてグィンに言った。

 「おぃおぃ、あんな低級能力者のグレイと一緒にされるのは憤慨だぜ。今、ジャパンに潜伏している”3人の脱獄犯”はその気になれば地球を破壊する事だって可能な程の連中だ。その連中をたった一人で相手にする俺の力は、あんたらの想像を遥かに超えてるぜ」

 (ちょっと、大げさな言い方になってしまったが、まぁ、そんな事はどうでもいい事だ・・・)とグィンは思った。

 「大統領、俺の特殊能力をあんたに教えるつもりはないが、俺もこの”身体”になってからまだ日が浅いんだ。自分の身体機能がどれだけ発揮出来るかはまだ、解らないのが本当のところだ。見ての通り、この顔もまだ、完全に出来上がっていなくてね。この装置をつけてまだ、微調整中さ。女にモテる良い男になるには時間がかかる」

 顔に装着しているゴーグル状の装置を触りながらグィンは、大統領に言った。

 「”惑星連合”が我々をまだ、完全に信頼していない事は重々解っているが、Mr.グィンの苦手な部分があれば何か協力出来る事があるのではと思ったのだがね。・・・まぁ、それは良いとして、それで、例の物はどうなっているのか教えて欲しいのだが・・・」

 大統領がそう言うとグィンは、

 「あぁ、分かっているさ。マザーシップからいつもの基地に転送される筈だ。なぁ大統領、分かってると思うが我々が行っている技術提供は、微々たるものだが、地球人にとっては数百年先のテクノロジーだ。”馬鹿”な使い方だけはしないでくれよ。惑星連合の規約では、他の惑星の文明には干渉してはいけない事になっているんだが、アメリカに技術提供を行っているのは、アメリカが人類の代表として試されているからだ。それを忘れないで欲しい。それと、俺のような者が地球で活動出来る様にあんたらの国でバックアップしてもらう意味もあるがな。まぁ、地球が”惑星連合”の仲間になれる様にせいぜい頑張りな」

 グィンは答えた。

 「多少ごたごたはあると思うがMr.グィンのご期待に添える様に我々アメリカ合衆国は、地球代表として、協力させてもらうつもりだ」

 大統領は、”やらしい”笑顔でグィンを見た。

 「では、そろそろ行くとするか。大統領、世話になった」

 グィンは座っていた椅子の肘掛けに両手を置いて、ゆっくり立ち上がった。グィンが言う様にまだその身体に”馴れていない”のか、大統領執務室を出ようと出口に向かって歩き出す姿は、どこかしら不自然な歩き方であった。


 「Mr.グィン、ジャパンに着いたら、 大山雷翔(おおやまらいしょう )という者が君を出迎える。ジャパンの国家公安委員会よりも上の組織に属する者だ。キミの依頼通り、新しい名前やジャパンで活動する為の全てを用意してくれている。ジャパンの中では、キミの存在を知る只一人の人間だ。元々、我々がジャパンに送り込んでいるスパイでもあるがね。大山と私は常に連絡を取り合っている」

 「了解した、大統領。それと一つ頼みがあるんだが、聞いてくれ。俺は、この地球でとっても”カワイラシイ”生物を見つけたんだが、その生物を大切にしてやってくれないか」

 グィンは、ドアの前で立ち止まり振り向きながら、言った。


 「ホゥ、その生物とはなんだい?」

 「それは、”オクトパス”という生物だ」

 グィンはそう答えて、またもや”不気味な笑顔”を大統領に見せると、ドアを開けその部屋を出ていった。


 既に部屋を出て行ったグィンの背に大統領は右手を軽く上げ挨拶をすると、軽く首をひねり苦笑した。

 (オクトパスねぇ・・・)

そして大統領は、グィンの”不気味な笑顔”を思い出し、身震いしたのだった。


 グィンがシークレットサービスの”手厚い見送り”を受け、ホワイトハウスを出てから数分後、大統領に一本の連絡があった。その内容は、ネバダ州の砂漠地帯にあるアメリカ軍基地からのものであり、”プレゼント”を受領したというものであった。

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