きらきらを分ける影
夏の午後、きらきら町には、長い影ができます。
太陽が高くのぼると、家の影はくっきりと道にのび、木の影は葉の形まで地面にうつります。
人が歩けば、人の形の影が、あとをついてきます。
ソラは、公園で白いねこ――キラと遊んでいました。
「見て、ぼくの影、のびた」
ソラが両手を広げると、影も大きく広がります。キラが前を歩くと、しっぽの長い影が、地面をすべりました。
そのとき、ソラは、足元に目をとめました。
「……あれ?」
影の中が、ただ暗いだけではありません。よく見ると、細い光が、すーっと流れているのです。
「影の中が……きらきらしてる」
ソラは、そっと影の中に足を入れました。
すると、足元のきらきらが、ふわっと動きました。
光は、影の中と、外の明るい地面に、半分ずつ分かれたように見えます。
「分かれた……?」
キラも影の中に入り、前足で地面をちょん、とさわりました。
影の中のきらきらは、キラの体の下にも、やさしく広がります。
そのとき、公園のはしから、大きな声が聞こえてきました。
「それ、ぼくのだよ!」
「ちがう! さきに見つけたのは、わたしだもん!」
二人の子どもが、同じおもちゃを持って、引っぱり合っています。顔はまっ赤で、今にも泣き出しそうです。
ソラは、キラといっしょに、そちらへ歩きました。
二人の足元には、二つの影がありました。
影は、けんかをしているみたいに、ぐしゃっと重なっています。
そのときです。
重なった影の中で、きらきらが、ふわっと増えました。
「……見て」
ソラが小さな声で言うと、二人も足元を見ました。
影の中のきらきらは、ゆっくり形を変え、おもちゃの形を、二つ作りました。
「あ……」
二人は、思わず手を止めました。
「半分こ、できるね」
ソラが言うと、二人は、しばらく考えてから、こくりとうなずきました。
「じゃあ、交代で使おう」
「うん」
影の中のきらきらは、それを聞いたみたいに、すっと小さくなり、元の光にもどっていきました。
公園に、また静かな時間がもどります。
夕方になると、太陽は少し低くなり、影は、だんだん短くなりました。
それにつれて、影の中のきらきらも、元の場所へ帰っていきます。
ソラは、ベンチに座って、地面を見ました。
「影って、ふしぎだね」
影は、光があるから生まれます。
そして、その影の中には、分けるためのきらきらが、ひそんでいるのです。
キラが、ソラのとなりで丸くなりました。
その日から、ソラは、だれかがけんかをしているのを見ると、足元の影を見るようになりました。
影は、何も言いません。
でも、ときどき、どうしたらいいかを、そっと教えてくれます。
夏の午後、きらきら町の影は、今日も静かに、光を分けていました。




