きらきらの音がする道
きらきら町には、ふしぎな道があります。
見た目は、ただの細い道です。石がならび、草が少しはみ出しているだけで、特別なところはありません。
でも、その道を歩くと、音がするのです。
きらん、ころん、しゃらん。
足を出すたびに、そんな音が、足元から聞こえてきます。
その音は、大きくありません。耳をすませないと、気づかないくらいです。
ソラは、ある朝、その道を通りました。
「……あれ?」
いつもより、音がよく聞こえます。
きらん。
ころん。
ソラは、歩くのをやめて、道を見ました。
「きらきらが、鳴ってるのかな」
しゃがみこむと、道のすき間で、小さな光がゆれていました。
そのとき、後ろから声がしました。
「その道、音がするでしょう」
振り向くと、パン屋のおじさんが立っていました。
「うん。きょうは、よく聞こえる」
「それはね、町が元気な日だからだよ」
「町が?」
パン屋のおじさんは、道をとんとんと足でならしました。
「みんなが、ちゃんと前を見て歩いている日。そんな日は、道もうれしくて、音を出すんだ」
ソラは、半分わかったような、半分わからないような顔をしました。
その日、ソラは、わざとその道を遠回りして歩きました。
学校へ行くときも、帰るときも。
きらん。
ころん。
音は、朝より少し、やさしくなっていました。
夕方、白いねこ――キラが、道のまんなかで座っていました。
「キラも、聞こえる?」
ソラが聞くと、キラは耳をぴくっと動かします。
そして、前足で、道をちょん、とたたきました。
しゃらん。
「やっぱり」
その夜、雨がふりました。
次の朝、ソラは心配になって、道を見に行きました。
「音、消えちゃったかな」
でも、道はそこにありました。
雨でぬれた石の間から、光がにじんでいます。
きらん……
ころん……
音は、小さくなっていましたが、消えてはいません。
「よかった」
ソラが言うと、通りがかった人が足を止めました。
「あ、本当だ。音がする」
「前は、気づかなかったな」
その日から、道を歩く人は、少しだけ足をゆっくり出すようになりました。
音を聞こうとして。
きらきらの音がする道は、町の真ん中で、今日も鳴っています。
急がなくていいよ、と言うみたいに。




