きらきら町
きらきら町は、特別な町ではありません。
大きな城も、ふしぎな門も、空を飛ぶ道具もありません。
それでも、この町には、毎日、きらきらがあります。
朝、静かに始まる光。
昼、笑い声にまじる光。
夕方、帰り道に並ぶ光。
夜、約束を守る光。
ソラは、町の中を、ゆっくり歩いていました。
白いねこ――キラは、いつも通り、少し前を歩きます。
広場では、子どもたちが集まり、きらきらを追いかけていました。
「待ってー!」
きらきらは、逃げるふりをして、すぐ近くで止まります。
店先では、大人たちが話しています。
むずかしい顔の人もいますが、足元には、ちゃんと光がありました。
ソラは、気づきました。
きらきらは、だれにでも、同じように見えるわけではありません。
見えない日もあります。
少ない日もあります。
それでも、消えることは、ありません。
川のほとりに立つと、水の上に、たくさんの光が映っていました。
空の色と、町の色と、人の気持ちが、そこに重なっています。
「ねえ、キラ」
ソラは、立ち止まりました。
「きらきらって、なんなんだろう」
キラは、川を見つめたまま、しばらく動きません。
やがて、しっぽを、そっと水面にふれました。
光が、ゆらりと広がります。
ソラは、わかった気がしました。
きらきらは、形ではありません。
だれかを思う気持ち。
安心する時間。
大丈夫だと思える瞬間。
それらが、光になったものなのです。
町は、変わっていきます。
新しい家ができ、道が変わり、人も増えます。
それでも、きらきら町であることは、変わりません。
なぜなら、きらきらは、町ではなく、人の中にあるからです。
夕方、ソラは、家へ帰りました。
ドアを開けると、あたたかい空気が迎えてくれます。
キラは、いつもの場所で、丸くなりました。
窓の外には、今日も、静かな光が、町に散らばっています。
ソラは、思いました。
この町でなくても、きらきらは、きっと見つかる。
でも、この町で、それを知ることができて、よかったと。
きらきら町は、今日も、だれかの一日を、そっと照らしています。
それは、目立たなくても、確かな光です。
そして、その光は、これからも、続いていくのでした。




