きらきらと小さな願い
きらきら町には、だれにも言わない願いが、たくさんあります。
声に出さなくても、紙に書かなくても、胸の中に、そっとしまわれた願いです。
その日、ソラは、少し早く目をさましました。
理由は、ありません。
ただ、胸の中が、静かにざわついていたのです。
白いねこ――キラは、いつもより近くで、丸くなっていました。
ソラは、外へ出ました。
空は、前の日より、少し明るく、空気は、澄んでいます。
町を歩くと、きらきらが、いつもより低いところで光っていました。
道のすみ、石の間、木の根もと。
光は、小さく、ひかえめです。
「今日は、きらきらが、静かだね」
キラは、答えるかわりに、しっぽをゆらしました。
広場に着くと、だれもいません。
でも、きらきらは、ぽつぽつと集まっていました。
ソラは、ベンチに座り、しばらく、光を見つめました。
そのとき、胸の中に、ぽつりと、ひとつの思いが浮かびました。
「……この町が、ずっと、このままでありますように」
声には出しません。
ただ、心の中で、そっと思っただけです。
すると、足元のきらきらが、ふわっと動きました。
光は、ソラの足元から、ゆっくり広がっていきます。
まぶしくはありません。
でも、あたたかい光でした。
そのとき、町のあちこちで、人が立ち止まりました。
パン屋のおじさん、学校へ向かう子ども、散歩中のおばあさん。
だれも、理由は分かりません。
でも、少しだけ、胸があたたかくなったのです。
きらきらは、願いを、遠くへ運びません。
大きなことは、しません。
ただ、その場に、やさしさを残します。
ソラは、立ち上がりました。
キラが、前を歩きます。
町は、いつもと同じ朝を、むかえていました。
でも、空気は、ほんの少し、やわらかくなっていました。
願いは、かなうかどうかよりも、持つことが、だいじなのかもしれません。
だれかを思う気持ちがあれば、それだけで、きらきらは、生まれるのです。




