きらきらと静かな朝
朝、きらきら町は、音をひかえて目をさまします。
まだ人の声は少なく、鳥の鳴き声だけが、冷たい空気の中をすべっていきました。夜の名残は、町のすみに、そっと残っています。
ソラは、ゆっくり目をあけました。
外は、明るすぎず、暗すぎず、ちょうど目にやさしい色です。
「……朝だ」
カーテンを少し開けると、空は、うすい水色でした。雲は、急がず、ゆったり流れています。
白いねこ――キラは、もう起きていて、窓辺にちょこんと座っていました。
ソラが外へ出ると、ひんやりした空気が、ほほにふれます。
町は、起きているけれど、まだ話しかけてこないようでした。
道を歩くと、足元で、きらきらが、ひとつ、またひとつ、小さく光ります。
でも、すぐには広がりません。
まるで、「おはよう」と言われて、ゆっくり体をのばしているみたいでした。
「おはよう、きらきら」
ソラが小さな声で言うと、光が、ふるっとゆれました。
パン屋の前を通ると、店は、まだ閉まっています。
けれど、奥から、かすかに、あたたかいにおいが流れてきました。
そのにおいにさそわれて、きらきらが、静かに集まります。
光は、はねたり、目立ったりせず、空気の中に、すっと溶けました。
川のほとりへ行くと、水は、鏡のように空を映しています。
水の上のきらきらも、夜の名残を抱えたまま、ひかえめに光っていました。
ソラは、ベンチに腰を下ろしました。
キラは、となりで丸くなり、しっぽを足元にたたみます。
「朝って、静かだね」
ソラが言うと、キラは、目を細めました。
静かな朝は、何も起きていないようで、じつは、たくさんの準備をしています。
音が目をさまし、光が場所を思い出し、町が、少しずつ、呼吸をはじめる時間です。
遠くで、戸の開く音がしました。
またひとつ、別の音も聞こえます。
町は、少しずつ、動きはじめていました。
それに合わせて、きらきらも、道や屋根や川の上で、少しずつ増えていきます。
まぶしくはありません。
でも、確かに、そこにある光です。
ソラは、立ち上がりました。
「今日も、はじまるね」
キラは、にゃあ、と小さく鳴いて、歩き出しました。
静かな朝は、長くは続きません。
でも、その短い時間の中には、一日をやさしく始めるための、たくさんの光が、しまわれています。
きらきら町の朝は、今日も、だれにも急がされず、そっと始まっていました。




