きらきらが並ぶ夕方
冬の夕方、きらきら町の空は、ゆっくり色を変えます。
青だった空は、うすいオレンジになり、やがて紫へと沈んでいきました。太陽は、山の向こうへ、静かにかくれます。
ソラは、学校の帰り道を、キラといっしょに歩いていました。
「もう、夕方だね」
白いねこ――キラは、少し急ぐように、前を歩きます。
そのとき、ソラは、道のはしに、光が並んでいるのに気づきました。
「……あれ?」
きらきらが、点々と、道にそって並んでいます。
昼間のきらきらよりも、落ち着いた光です。
ソラが一歩進むと、次の光が、すっと明るくなりました。
「道を、作ってるみたい」
光は、家へ帰る道を、ていねいに示しているようでした。
町の人たちも、同じ道を歩いています。
仕事を終えた人、買いもの帰りの人、散歩の人。
だれも急ぎません。
きらきらは、人の歩く速さに合わせて、静かに光っています。
パン屋のおじさんが、店の戸を閉めながら言いました。
「夕方のきらきらはね、並ぶんだ」
「どうして?」
「一日の終わりに、みんなが迷わないようにさ」
ソラは、足元を見ました。
きらきらは、道の角でも、ちゃんと並んでいます。
遠回りにならないように、危ないところをよけるように。
まるで、見えない手紙みたいでした。
橋の上に来ると、川の水も、夕方の色を映しています。
水の中のきらきらも、横一列に、ゆらゆら並びました。
「川も、帰り道なんだ」
キラが、橋のまん中で立ち止まり、川を見下ろします。
しっぽが、きらきらにふれて、少し光がゆれました。
町のあちこちで、明かりがともりはじめます。
家の窓、街灯、店の小さなランプ。
その明かりと、きらきらが、自然につながっていきました。
ソラは、ふと思いました。
一日が終わるとき、人は、少し疲れています。
だから、夕方のきらきらは、目立ちすぎないのです。
ただ、そばに並んで、「こっちだよ」と教えてくれます。
家が見えてくると、きらきらは、少しずつ、消えていきました。
役目を終えたみたいに、静かに、地面にもどります。
「ありがとう」
ソラは、小さく言いました。
キラは、玄関の前で、くるりと振り返りました。
夕方は、終わりの時間です。
でも、同時に、帰る時間でもあります。
きらきら町では、今日も、光が並んで、だれかを家まで送っていました。




