きらきらが消える雪
朝、目をさますと、きらきら町は、白くなっていました。
音が、しません。いつも聞こえる足音も、遠くの話し声も、雪に吸いこまれたようでした。
「雪だ……」
ソラは、そっと窓を開けました。
空から、雪が、ゆっくり落ちてきます。ひとつひとつは小さく、でも、町ぜんたいを、しずかに包んでいました。
白いねこ――キラは、窓辺にのぼり、外を見ています。
ソラは、外に出ました。
足を出すと、きゅっと音がします。
そのとき、ソラは気づきました。
「あれ……きらきらが、ない」
いつもなら、道の上や、屋根の端に、光が見えるはずです。でも、今日は、どこにも見えません。
雪の上は、まっ白で、何も光っていないようでした。
「雪の日は、きらきら、消えちゃうの?」
キラは、雪を少し踏んで、前足を引っこめました。
冷たそうです。
ソラは、町を歩きました。
パン屋のおじさんの店の前も、学校の門の前も、きらきらは、見えません。
かわりに、雪が、すべてを覆っています。
川の近くまで来ると、年をとった女の人が、ほうきを持って立っていました。
「こんにちは」
「おや、雪の日に、元気だね」
ソラは、たずねました。
「雪の日は、きらきら、なくなるんですか?」
女の人は、空を見上げました。
「なくならないよ」
「でも、見えない」
「雪はね、光をかくすんだ」
女の人は、ほうきで、そっと雪をどかしました。
すると、その下に、小さな光が、ちかっと見えました。
「あ……」
「雪は、きらきらを守ってるんだよ」
ソラは、しゃがんで、雪を手ですくいました。
冷たい雪の下で、かすかなあたたかさを感じます。
「見えないだけなんだ」
雪は、町を静かにするために、きらきらを、そっと包んでいたのです。
昼すぎ、雪は、少し弱くなりました。
屋根から、ぽた、ぽた、と水が落ちます。
その水の中で、きらきらが、ゆっくり目をさましたように光りました。
夕方、雪は、やみました。
町は、まだ白いけれど、あちこちで、光がもどってきます。
「おかえり」
ソラは、小さく言いました。
キラは、雪の上に残った光を追いかけて、くるりと回りました。
雪の日は、きらきらが消える日ではありません。
静かに、守られる日なのです。
きらきら町は、今日も、白いしずけさの中で、光を大切にしていました。




