表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/23

きらきらと約束の音

 冬の朝、きらきら町は、いつもより静かでした。


 雪は降っていませんが、空気が張りつめていて、音が遠くまで届きます。足音や、戸の開く音が、いつもより、はっきり聞こえました。


 ソラは、マフラーを巻いて、外に出ました。


 白いねこ――キラも、あとをついてきます。


 そのとき、ちりん……と、小さな音が聞こえました。


「あれ?」


 ソラは、足を止めました。


 音は、風にまじって、もう一度、ちりん……と鳴ります。


 音のした方を見ると、古いポールの先に、小さな鈴がついていました。


 だれかが、ひもで結びつけたようです。


「こんなところに、鈴、あったっけ」


 ソラが近づくと、鈴のまわりに、きらきらが集まっていました。


 光は、音が鳴るたび、ふるえるように動きます。


 パン屋のおじさんが、通りかかって言いました。


「ああ、その鈴はね、約束の音だよ」


「約束?」


「待ち合わせとか、帰る時間とか、だれかが、忘れないようにつけたんだ」


 ソラは、鈴を見上げました。


「音で、約束を思い出すの?」


「そうさ。音は、消えないからね」


 風が吹くと、鈴が、また鳴りました。


 ちりん……


 その音といっしょに、きらきらが、道の先へ流れていきます。


 しばらく歩くと、角の家の前で、女の人が立ち止まっていました。


「……あ」


 女の人は、鈴の音を聞いて、急に走り出しました。


「思い出した!」


 どうやら、だれかとの約束を、思い出したようです。


 ソラは、胸があたたかくなりました。


 午後、ソラは、友だちと遊ぶ約束がありました。


 でも、家で本を読んでいるうちに、時間を忘れてしまいます。


 そのとき、遠くから、ちりん……と聞こえました。


「あっ」


 ソラは、立ち上がりました。


「約束!」


 急いで外に出ると、きらきらが、道を照らすように、きゅっと光っています。


 キラも、元気に走りました。


 公園に着くと、友だちが、待っていました。


「おそいよ」


「ごめん。でも、鈴が教えてくれた」


 二人で笑うと、その声に、きらきらが、ぱっと広がりました。


 夕方、鈴の前を通ると、音は、前よりもやさしく聞こえました。


 きらきらも、静かに、鈴のまわりで光っています。


 約束は、見えないものです。


 でも、音があれば、思い出せる。


 思い出せば、心は、ちゃんと向かいます。


 きらきら町では、今日も、約束の音が、そっと町をつないでいました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ