第一章 転生チート、限界突破
プロローグ
気がついたら俺は真っ白な空間に立っていた。
身体がない。声も出せない。ただ意識だけが浮かんでいる——そんな感覚だった。
「……また転生希望者か」
どこからともなく声が響く。姿の見えぬ存在は、いかにも「神様です」と言わんばかりの荘厳な響きだったが、俺の心はどこか冷めていた。
(ああ、これ、よくあるやつだな)
ブラック企業にこき使われ、過労死寸前にトラックに轢かれた俺にとって、ここが死後の世界であることは疑う余地がない。
「お前に特別なスキルを授けよう。新しい世界でやり直すがいい」
神様がそう言うと、俺の頭にステータス画面のようなものが浮かび上がった。
そこに記された数値を見て、俺は目を疑う。
ステータス
名前:カケル
レベル:無量大数
HP:∞
MP:∞
力:∞
魔力:∞
スキル:「概念掌握」「存在超越」「チート無効化無視」
「……って、無量大数って何桁だよ!」
思わずツッコミを入れる。何百京どころじゃない。想像すらできない。
すべてのステータスが意味のないくらいカンストしていて、しかも「チート無効化無視」なんて訳のわからないチートもついている。
「その力で、異世界を救うがよい」
神様の声を最後に、俺の意識は暗転した。
第一章 転生チート、限界突破
目を覚ますと、そこは中世ヨーロッパ風の街だった。活気にあふれる石畳の市場。だが、雑踏の空気からは緊迫した雰囲気が漂っている。
「やばいぞ! 城門の方角から魔王軍が攻め込んできた!」
人々が恐怖に駆られ避難していく最中で、俺は悠然と立っていた。
——試すには、ちょうどいい。
視線を向けると、遠くの空を黒き竜が覆い尽くす。炎を吐き、人々を蹂躙する魔王の軍勢。
その姿を一目見るや、俺は呟いた。
「……消えろ」
バシュッ。
音もなく、竜も軍勢も、全てその場から消滅した。
「……え?」
周囲の兵士や市民が呆然とする中、俺だけが苦笑した。
どうやら、本当に“無量大数”の力は伊達じゃないらしい。
俺は決めた。
このチート……全力で使ってみよう。
異世界を救うとかそんな義務感じゃなくて、ただ俺自身が、どこまでやれるか試したい。
——これは、俺が「限界という概念」そのものを超え、異世界で無双する物語である。