十一話
変化がおこったのは、それから少し経ってからだった。
「おはよう」
声をかけると、友達たちが、すっと流れるように行ってしまった。風花は、固まる。
気のせいかな。そう思って、何度か繰り返した。結果は同じだった。
「あの、私、なにかした?」
「ええ?べつに……」
「用事あるから、いこ」
思い切って尋ねてみても、半笑いで、去られる。
「自分で考えれば」
と、ある子には言われ「さけてないけど」とまたある子には言われ。風花は戸惑った。けれど、この感覚は覚えがあった。
私、いま、さけられてる。中学までのときと、同じだった。
千尋がすごく女子に人気があったから、傍目、目をかけられてる風な自分は、攻撃の的だった。風花が馬鹿で攻撃しやすかったのも要因だろう。そのときは、しかも千尋が仕向けているところもあったけど――。
河埜のことで、皆が、最近とげとげしていたことを思い出す。そもそも馬鹿にされてたし、堪忍袋の緒が切れただけかもしれないけれど。半笑いの皆の顔を思いだす。
どうしよう。どうすればいいかは、わかる。けど、どうしようもなかった。
◇
それから、こそこそ嫌味を言われるようになった。絶妙に主語を抜いて言うので、聞いたって「ええ?」と笑ってごまかされる。それはじわじわ、心に来た。
「生田さん、大丈夫?」
「――う、うん。平気!」
河埜が、心配そうにこちらを見ていた。にこっと笑って首を振る。風花にとって、河埜といられる放課後だけが、楽しかった。
でも、それが、余計に怒りを買うのはわかっていた。
SNSで、友達たちが悪口を言い合ってるのが、流れてくる。「馬鹿」「迷惑考えろ」「身の程知らず」「擦り寄りブス」、ひどい言葉に、風花はSNSをログアウトした。そもそも、付き合いでとったアカウントだから、不便はなかった。もともと、こういった嫌味は言われ慣れてる。けど、河埜に迷惑って言われると、堪えた。