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鉱山での交渉

「このあたりだったはず。」 


その場所は山肌のあちこちで仄かに光っている。虹色のきらめきが、陽の光を浴びてキラキラ輝くその姿は、まるで宝石のようだった。

「これに、人生かかってる!」


私は、こっそり鞄から、義母の屋敷で盗み見た鉱物図鑑をとりだした。

魔力を安定させる特性があり、魔道具や結界に使われる希少鉱石。しかもこの山は“魔鉱山”として有名だった。


「よしっ、交渉しますか!」


私は、岩陰からたちあがると、山の入り口に立つ警備らしき男たちに向かって手を振った。身なりは労働者風。みんな鋭い目をしていたが、その中のひとりーーまだ若いが落ち着いたふんいきの青年が、こちらに気づいて近づいてきた。


「立ち入りは禁止されている。観光なら引き返してくれ。」


「いえ、観光ではなく…交渉に来ました!」


私は、勇気を振り絞っていった。声に緊張が走ったが命がかかっていると思うとおちつくことができた。


「交渉?何をだ?」


「この山にあるルクス石の端材や廃棄鉱石を買い取らせてもらえませんか?」


最初、ポカンと私を見た。突然現れた金髪の少女が鉱山資源の商談を持ち掛けるなど、そうあることではない。


「…あんた、商人か?」


「いいえ、ただの…ええと、アクセサリー職人の見習いです。」


そう名乗ってみた。ちょっと嘘だけど、思いを込めた願いに近いなら、きっと神様も許してくれる。


「ふん、あんなクズ石で何を作る気だ?」


役人の一人が鼻を鳴らす。彼の背後には、くず石と呼ばれる廃棄鉱石が山のように積まれていた。鉱石の中には不純物が多く加工に向かないものも多い。でも、色合いや模様はまるで天然石のようで、私はそこに“美しさ”をみた。


「そのくず石で、可愛いアクセサリーを作って売りたいんです。長く継続的に仕入れられたらと思っています。」


交渉内容は、買い取る価格は捨てるのでほんのわずかで、廃棄するよりお金にした方がお互いに経済が回る。持参したようなアクセサリーを作る。乗り気でなかったが、試作中のアクセサリーを渡した時


「こんな感じに加工します。王都でも、若い女性の間でこういうのが人気なんです。」


「…悪くないな、これは」


「ちょうど村の若い娘たちに、小遣い稼ぎさせるにもいい。磨いて紐に通すだけならこどもにもできるしのう。」


「おお、うちのマリナも暇しててな…」


村の役人たちは、しだいにざわつき、私の提案に現実味をもちはじめた。これは、いける。


もちろん、契約書なんて立派なものじゃない。手紙一枚に近い。でも、村長のサインは私にとって大切な命綱になった。


夜、小さな宿で布団にくるまりながら、私は初めて安心して涙が流れた。


「やっと、やっと少しだけ、変わった…」


未来はまだ不確かだ。義妹の陰謀も、継母の呪縛も、何も解決していない。でも、私はもう“あの日の未来”をなぞっていない。


翌朝、私は村の娘たちに簡単なアクセサリーの作り方を教えながら、村に材料と小さな希望を残して出発した。


「また来るね。今度は、もっと大きな注文を持って。」


振り返った先で、少女たちは無邪気に手を振る。その中には、小さな私自身の姿が重なって見えた。


そう、私はもうーー“殺されるお嬢様”なんかじゃない!自分の力で未来を編んでいく。


次に狙うは、あの宝石を王都で売るための販売先の確保。そんな中、届いた手紙が私を動揺させた。

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