転生先は、死の未来と逃げる私
「…あ、れ」
え、ここはどこ?さっきまで、スマホ見ながら歩いてたはずじゃ?
目の前には、ふかふかのベットにレースのカーテン。
「何、何、ここはどこ!夢?」
ぽっぺをつねってみたら
「痛ー--。」
部屋にあった鏡の前に駆け寄って急いで自身の姿を確認した。その世界で
鏡に映るのは、金色の髪に淡い青い瞳を持つ美しい少女。だけどそれは、前世で冴えない社畜OLだった私の姿じゃない。手には見覚えのないレースのついたドレス、そして豪華なベット。こ、これはー-乙女ゲームの世界だ。
「え、これって、もしかして『バラと契約のルミエール』じゃない?」
そう、前世で唯一の趣味だった乙女ゲーム。推しはもちろん、冷たくて優しいタイプの皇太子アルヴィン。私が転生したのは、その世界でも悪役令嬢でもモブでもないして、主人公の義姉という超絶中途半端なポジッション。名前はキャロル。父が再婚して義妹ができた、控えめでまじめな印象の子。
でも、私には一つだけ、この世界で他の誰にもない力があるー--未来が夢に現れる力。
そして昨晩、その力で見えたのが、
「義妹が私を殺す未来」なのだ。
義妹レティシアは、可憐で儚く周囲から天使のように愛される少女。けれど、ある夜私の部屋でナイフを手にいったのだ。
『お姉さま、ごめんなさい。だって、皇太子様の婚約者には私がふさわしいでしょ。』
あまりの恐怖で目が覚めたとき、体中が汗でびっしょりになっていた。
(え?まって、まって。私、皇太子殿下と婚約なんてしないし、ただの義姉でしょ?)
そう思っていたのは数日前まで。だが、運命は容赦なく牙をむく。
「キャロル嬢。陛下かrのご命令です。皇太子アルヴィン殿下との婚約が、本日発表されます。」
「…は?」
思わず固まる私。
(ちょっと待って、話が早すぎだし⁉ゲームにこんな展開なかったよね⁉)
な、何かがおかしい。この世界は、ただのゲームと同じじゃない。
しかも、その発表の瞬間、義妹レティシアの瞳は震えていた。笑顔のまま、だけど確かにあれは憎しみだった。
そしてその夜、また夢を見る。
私は、崖の上に立たされ、背後から彼女の声がした。
『お姉さまは邪魔なのよ。これですべていくわ。』
突き落とされる瞬間、私は確信した。
(こんな未来がくるなんてー--)
だから、逃げよう。できるだけ遠くへ。
この未来を変えるには、まずは生き残ること。婚約を破棄する?無理。皇太子様に選ばれたなんて、どんな理由があるかわからない。でも、ただ一つ言えるのはー--
(私、ぜっらいに殺されるわけにはいかない!)
そして、運命の歯車が静かにまわりだした。
レティシアは笑顔で私にそっという。
「お姉さま、婚約おめでとうございます。…心から、祝福いたしますわ。」
その言葉の裏にある“本心”に私だけが気付いている。
(この世界で生き延びるには、可愛く、ずる賢くなきゃ)
そう覚悟を決めた私は、逃亡と反撃の準備を始めるのだった。
ー-未来はどうなるのか?