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緑の拳士~ゴブリンハーフは魔法が使えない~  作者: ハンドレットエレファント


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47.襲撃の理由

「もうちょっと粘ってもよかったが、人間みてぇによくばっちゃいけねぇよなぁ」

燃え盛る拠点の建物、その戦火の中心に巨大な影がそびえたつ

それはゴブリンどころか人としても明らかに巨大な影

不自然な三角形の様にみえる歪なシルエットが、枯れ木を折るかのように拠点の強固な門柱をへし折り通り抜けを困難にさせた


「さぁて野郎ども!収穫の時間だ!」

巨大な影の主、トランクの号令が拠点を揺るがした!



数百のゴブリンが続々と拠点に侵入し、負傷した冒険者に襲い掛かる!

「た、助けてくれぇ!」「こっちに来るなぁ!」

負傷し満足に戦えない冒険者達の悲鳴が響き渡り、やがてその声は血の匂いに変えられていく


「くそぉ!ふざけるなゴブリン風情がぁ!」

動けるものは武器を取り反撃を試みるが、一人反撃すれば10匹に襲われるという有様でまるで勝負にならない

抵抗を試みたものの押さえきれないと背中を見せ逃走を計るが、それもむなしくゴブリンに群がられる



「動けるものは武器を取れ!怪我人に手を貸して全員で拠点の南に下がれ! 何故こんな……見張りは何をやっていた!?」

グレイが叫ぶように指示を言い放つが、怒号と混乱にその指示は満足に通らない

そうしていると必死の思いで走ってきた冒険者の一人が息を切らせながらグレイに信じがたい報告を行った

「そ、それが……見ていたものが言うにはゴブリンの群れは突如として拠点の内部に現れたと言うのです!」

「な、なにぃ!?」


その話を聞いてグレイは燃え盛る拠点をグルリと見回し、その異常さに気づく

正面の門は巨大なゴブリンに破壊されているが、拠点の防壁のほとんどは破壊されていない


「このゴブリン共は一体どこから侵入してきたというのだ……!?」



「野郎ども、気合入ってるじゃねぇか……俺もさぼってられねぇなぁ……」


人の胴よりも太い腕でポリポリと頭を掻きながら、ゆっくりと巨大な斧を担ぎ悠々とトランクが歩く

その足元には恐怖で錯乱しながら折れた剣を振り回し抵抗しているつもりの怪我人


「く、くるなぁ……くるなぁ……!」

「おぉ、喋れるのかぁ 活きがよくて何よりだ」


決死の形相の怪我人が持っている剣を、大して気にもせず手首ごと蹴り抜く

指が不自然に折れ曲がり、剣は明後日の方向に吹き飛ばされる


「ああああ!」

「活きがいいのはいいが、逃げられると面倒だからなぁ」

トランクが持っている巨大な斧が、天を割かんばかりに振り上げれる


「その足、ちぎらせてもらうぜ!」


トランクの斧が振り下ろされる!

だがその刹那、その斧が何者かに弾かれ斬撃が地面に反れた!

一瞬理解できなかったトランクだったが、右手に起きる魔力の乱れと痺れにニヤリと笑う


「よぉ嘘つき君、兄貴分は今日はいないのかい?」

「やめろ!今すぐここから出ていけ!」


リンファの電光箭疾歩がトランクに炸裂し、その攻撃を妨害していた

だがその攻撃にトランクは苦痛の顔すら見せず、ニヤニヤとリンファに不気味に笑いかけていた


「おぉー、いてぇいてぇ これがソードが言っていた技か…… 外側ってより内側が痛ぇ感じだな」

「ま、まるで効いていない……! ステラさんよりタフなのかコイツ!?」



反撃を警戒してすぐさま飛びのき間合いを取るリンファ

助けられた怪我人は這う這うの体で逃げ去っていくが、トランクは特に気にもせずリンファを視線を向ける


「よう、数日ぶりだな 元気してたかゴブリンハーフの兄ちゃんよぉ」

「……僕のことはよくご存じって感じですね、トランクさん」

「おぉよ、お前はゴブリンの仲間内はそりゃもう有名人だからな! この前は笑いをこらえて話を合わせるのに苦労したぜ」



ジリジリと間合いをはかり相手の動きを誘ったり攻撃の瞬間を狙うリンファとは対照的に、斧をまるで杖の様に使い気怠そうに立っているトランク


「お前を捕獲できりゃ大金星なんだろうが、俺は生憎と欲張りじゃなくてな 他の仕事で忙しいから邪魔すんなよ」

「仕事……? この襲撃がそうだというのか!」

「襲撃じゃねぇよ、収穫みてぇなもんだ お前らも太った家畜は絞めて捌くだろ? そんな感じだわ」



そういうグリフとリンファの周りから今も変わらず悲鳴と怒号が響き、焦げ臭い匂いが鼻をつく

「お前らの息のいい番犬も何故だかお出かけしてくれたみたいだしよぉ、ちゃっちゃと刈り取って帰らねぇとな」

「ふ、ふざけるなぁ!」


その言葉に激昂する刹那、魔法の鎖がリンファの背後から放たれトランクの巨大な腕に絡みつき自由を奪う!

「おぉっと、なんだこりゃ?」


「リンファ!今だ!」

「おおお!」


アグライアのセイクリッドチェーンを合図にしてリンファは一気に飛び込んだ!

一応と言った感じで身を守ろうとするトランクの動きをアグライアはありったけの魔力を込めて妨害する!

「動くな!おとなしくやられろぉ!」



【八極剛拳 金剛鉄山靠】


トランクの腕をかいくぐるように懐に飛び込んだリンファが地面を割らんほどの力で渾身の魔導発勁を仕掛ける

直撃箇所から魔法煙がたちのぼりトランクの顔が苦痛に歪む


だが次の瞬間トランクの膝蹴りがリンファの胸部にねじ込まれ、その勢いでリンファが弾き飛ばされた!


「うっとおしいぞ姉ちゃん」

心底面倒くさそうにトランクが右手を強く振り回し、アグライアのありったけの魔力が込められた魔法の鎖をいともたやすく引きちぎる



「くっ……完璧なタイミングで打ち込んだのに!」

「おぉ、今の蹴りを防いだってのか、魔法みてぇな変な技を使えるだけじゃなくてちゃんとつええんだなお前 ちょっと感心したぜ」

リンファは直撃の瞬間に自らの腕を差し込み、攻撃を受け流して直撃をさけていた



「大丈夫かリンファ!? このでかいゴブリンといい大量のゴブリンといい、一体何が起きている……!?」

「な、何とか無事です…… 僕もいきなりすぎてまだ何が起きているのか……」


二人の会話を耳にして突然クスクスと不気味に笑いだすトランク

「あー……あー面白い! 人間ってのは自分が頭がいいと思い込んでるから実に滑稽で最高だねぇ!」


「な、なにがおかしい!?」

「これがおかしくなくて何がおかしいってんだよ、お前ら誰も気づかなかったのかよ! ボンクラすぎるだろ!」

とうとうこらえきれず声を上げてトランクが笑い出した


「どうせみんないなくなっちまうんだから教えてやるかぁ……いや言わせてくれ!聞いて反応を見せてくれ!」


喋りだそうとするトランクにリンファが冗談じゃないと言わんばかりに跳び蹴りを顔面に食らわせるが、トランクは意にも介さずリンファの首元を押さえつけた


「まぁ聞けって、傑作だからよぉ」

「おのれ!リンファを離せゴブリン!」

アグライアが剣に魔力を込めて切りかかるが、それすらもかわそうとせず肩口で受け止めはじき返す


「大丈夫だって、話し終わるまでの辛抱だからよぉ」

ジタバタともがくリンファ それが更に愉快なのかトランクはニヤニヤと笑い続ける


「気づいてるかどうか知らねぇけどさぁ、お前らにとって意外な魔法を使えるんだわ俺たち」

「て、転移の魔法のことだろ! それを使って冒険者を襲っていたんだな!」

「お、気づいてたのか! 頭いいじゃん、すごいすごい」


褒めるような言葉で相手を小ばかにし続けるトランクが、その巨大な手で自らの顔を覆い表情を隠す


「この転移の魔法って奴は便利なようで結構不便だよな、出口を作らねぇと自由に飛ぶことも出来ねぇ」

「出口……ゲートの事か?」

「おうそれそれ! 姉ちゃん博識だな ゲートを用意しておかねぇと使えねぇんだよ」


そういうとトランクは表情を隠したまま静かになる


何とか拘束を外そうとするリンファの物音とアグライアの鎧の金属音

そして周りから聞こえてくる人間とゴブリンの喧騒……



「なんで俺たちはここに転移できたんだろうなぁ?」

その言葉に二人が固まる


「人間様ってのはお優しいなぁ……! 疑いもせず実にお優しいよなぁ……!」


手の隙間から見える口がまるで大きく裂けるようにゆがみ、その中からじっとりと粘膜を纏った舌がヌルリと飛び出してくる



「お前らが助けた怪我人どもの傷口になぁ、そのゲートを仕込んでいたんだよぉ! あー愉快だ!実に愉快だ!」


トランクの醜怪に歪む顔から見える真っ赤で邪悪な瞳が愉悦に溺れるように細くなる



「俺たちが仕込んだゲート人間共を治療するためにホイホイとここに匿っていくのは実に滑稽だったぞおい!」


リンファはショックを受けながらも一瞬のスキをついて拘束を振りほどきトランクの側頭部を足場にして蹴りながら間合いを取る

その隙に便乗してアグライアも離れ、リンファと合流し構えを取り直す


「いってぇ、笑いすぎて拘束外れちゃったよ……でも今のお前らの顔最高だな、実に絶望してる!って感じだ!」




「な、なんてことを……!」

「おいおい、話は終わりじゃねぇんだぜ? 周り見てみろよ」


リンファとアグライアが辺りを見回すと、喧騒と怒号とは別に何かの音が聞こえる

それは聞き慣れてはいないが、以前に聞いた事がある音……

リンファが怪訝そうに注意している隣で、何かにきづいたアグライアが途端に青ざめる


その音の正体、それは……


「これは……転移魔法の発動音?」

「ご名答! 早く何とかしねぇとお前らのお仲間がどんどん攫われちゃうぜぇ!?」


ゴブリン共が傷つき動けなくされた冒険者の首根っこを掴み、魔法のロールと魔鉱石を差し出し次々と転移していく!

転移で消えたゴブリンと同じくらいの数のゴブリンがさらに拠点に転移を繰り返し、人だけが減っていく状況になっていた



「きさまぁぁあ!」

リンファが怒りに任せて怒涛の連撃を打ち込むが、トランクは多少の防御をしつつもその攻撃を受けながら未だなおニヤニヤと笑い続ける



「わらうな!わらうなあああ!」

「おいおいおいおい! そんなにじゃれつくなよゴブリンハーフの兄ちゃんよぉ!」

もはや魔導発勁も何もない、怒りに任せた連撃がただただ巨躯に撃ち込まれリンファの拳が傷ついていく


「落ち着けリンファ!今は怪我人を連れて下がるんだ!この騒ぎを聞けば奇襲を仕掛けに行った冒険者も戻ってくるはずだ!」

アグライアがリンファの援護に入りながら叫ぶと、その言葉にあっけにとられたような顔をしたトランクが思い出したようにニヤついた



「お前ら、あの番犬共が戻ってくると思ってんのか?」

トランクの笑い声が鼓膜にへばりつく






「あいつらなら、多分もう死んでるだろなぁ」

リンファはその声がたまらなく不愉快に感じた――




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