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緑の拳士~ゴブリンハーフは魔法が使えない~  作者: ハンドレットエレファント


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302/304

302.三者、並び立つ

リンファの右の手根骨は限界を迎えていた

手根骨だけではない、中手骨も、打撃に作用する骨で無事な箇所を探すのはもはや難しい


手も足も皮が裂け、緑の血が体中にべったりと付着する

それでもリンファはその手を止めようとはしなかった

目の前の男を足止めするために、来てくれるだろう仲間を信じてリンファはその手を、その足を打ち続けた






「し、しぶとい……! この藪蚊風情が……!」

滅王は心底ウンザリという感じでリンファを叩き落さんと攻撃を繰り返す


痛痒もなければ疲労も感じない、だが……ただただうっとおしい

滅王はまさに視界を飛び回る羽音が煩わしい藪蚊を払うかの様に、必死にリンファに攻撃を加えていた



「ま、まだ……まだ……!」


リンファは滅王とは対照的に息も絶え絶えになりながら、それでも弱音を吐こうとはしない

一撃でも食らえば致命傷になる攻撃を紙一重で捌き、それをそのまま攻撃に転じ続ける



「無駄だというのが……わからんかぁ!」

滅王はしつこいリンファの蹴り足を腕で防ぎ、そのままその足ごとリンファを上空に弾き飛ばす!



リンファは体中から緑の血を撒きながら上空に投げ出されるも、その身を空中で翻し


飛来する隕石を足場にして弾丸の如く滅王に向かって踏み込んだ!



「このおぉぉーーー!」



【八極剛拳 天隕流星脚】


滅王のもたらす隕石など比較にならない、リンファの流星が天を切り裂き飛来する


その蹴り足は滅王の真っ赤に染まった体の心臓部に直撃!

常人であればそのまま真っ二つにして突き抜けるほどの威力だったが……



その流星はまるで時間が止まったかのように、滅王の胸で動かなくなる



「捕まえたぞ…… このクソムシが……!」


リンファの足を両手でしっかりと掴み、滅王が憤怒の形相でリンファを睨みつける


「く……! 放せ!」


リンファはその睨みに臆することなく、強く睨み返す


だが、次の瞬間


リンファの周り全てが一瞬強く明滅し

その光とほぼ同じタイミングでリンファの体中に熱線が降り注いだ!



「く……うああああ!!」


リンファは一瞬その明滅に素早く反応しその身をよじって直撃を避けようとしたが、折り重なって射出されたその熱線全てをかわすことはできずリンファの体には風穴が穿たれる

急所は避けたものの五体のあらゆるとこに開いた小さな穿孔から一瞬の間をおいて、まるで噴水の如く緑の血が噴き出した


そのあまりのダメージにリンファの体から力がみるみる抜けていく

魔導発勁を練ろうにも、疲労と激痛、そしてその失血がそれを許そうとはしなかった



急激に霞む視界を必死に目を凝らしながら、リンファはそれでもなおその身をよじり反撃の態勢を作ろうともがく


「め、滅王……!」


「まだ動けるか……しぶとい害虫め……!」


滅王はそれでもなお拳を握ろうとするリンファに心から不愉快な顔を見せると、リンファを掴んだその両手に力を込める

そしてそれと同時に、まるで島が大樹が空を飛ぶが如き大きさの蛮龍の両腕がせり上がって来た



「貴様はただ殺すだけでは飽き足らぬ……このまま蛮龍の腕で粉々にすり潰してくれる!」


「や……めろ……!」


リンファはうわごとの様にその口を開き、掴まれた足を必死にもがき暴れる

滅王はその姿にすら嫌悪感を抱き、思わず唾を吐いた


「その姿を薄汚い肉片に変え、大地にばら撒いてくれる! 死ねぇぇ!」



空を覆わんばかりの巨大な両腕がリンファに迫る!

リンファはなんとか回避しようと必死に体をよじるが、滅王の拘束は外れない


万事休すと思われたその時、

その巨大な両腕に数発の爆発が巻き起こり、その動きを停止させた


「……なんだぁ!?」






「その醜い姿……お似合いだぞ、神代王!」










リンファの処刑を邪魔された怒りに満ちた形相でその声の方向を睨みつける滅王


その視線の先には……



「み、みんな……!」


障壁にその身を置きながら滅王を睨みつける3つの人影に、ボロボロのリンファは思わず微笑んだ





「隕石の下敷きになったかと思ったら生きておったか……この虫けらどもめ!」


「神代王……今は滅王だったか? なんとも貴様らしい……何と言ったかな」


ガルドがわざとらしく考え込む態度をとり、チラリとグリフを見ながら口角を上げた






「あぁそうだ、『イキった腫れ物』だったな、実にお似合いの名乗りではないか!」


ガルドはついさっき耳にした聞きなれない言葉を、嬉々として滅王に言い放つ!




「き、貴様ら……!」


「イキった貴様には滅王などという珍妙な名前とその不気味な爬虫類の体がお似合いだな!」


ガルドと違いその言葉が理解できた滅王は、元々真っ赤に染まったその体を更に赤くして怒り狂う!



「上等だ!我に逆らえばどうなるか貴様ら三人の死によってこの醜悪なゴブリンハーフに見せつけてくれるわ!」




安い挑発に乗って激昂する巨体の小物に、ガルドは更に煽るかのように声を上げて笑い出す



「おやおや!元神代王様はイキるという言葉をご存じの様だぞグリフ! よかったなグリフ! 意味が通じたぞ!フハハハハ!」


「おっさああああん! オイラを巻き込むなよ! あのイキったおっさんオイラもキッチリと頭数に加えてんじゃねぇか!」




高笑いするガルドに心底困った顔を見せるグリフ

そんな二人にリンファは絶体絶命のど真ん中だというのに、思わず笑わずにはいられなかった







滅王が蛮龍の巨大な両手を広げ、巨大な詠唱を展開する


蛮龍の巨大な体をすっぽり覆いつくさんばかりのその詠唱でできた魔法陣は、更に十重二十重と折り重なり大地と大気にひずみを作る


稲妻がほとばしり、大地に転がる岩が舞う


さっきまでの熱線や隕石の魔法とは比べ物にならないほどの、シンプルな破壊力のみに焦点を置いた魔力が収縮していった




「ふん……! 蛮龍の力を無駄に使いよるわ…… アグライア! 獲物は狙い通りこちらを向いたぞ!」



「ガルド! 待たせたな……こっちの準備はOKだ!」


アグライアが複数の魔鉱石を地面に撒き、詠唱を展開する

その輝きは足元が見えなくなるほど眩しく、その光は更に勢いを増していった



「タイミングを併せろアグライア……しくじれば全員塵も残らんぞ」


「心得ている……リンファを巻き込むなよ」


「お、オイラ心の準備できてないんだけど……!」




膨張する滅王の魔力を前に、3人はそれぞれ作戦を開始する



リンファはそれを感じ取り、ひび割れた拳を静かに握りしめた―――






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