表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
緑の拳士~ゴブリンハーフは魔法が使えない~  作者: ハンドレットエレファント


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

300/305

300.リンファは無謀な戦いを信じて繰り返す

滅王の攻撃はデタラメだった


空から降りそそぐ隕石と、四方八方から叩き込まれる熱線がリンファを常に狙ってくる

それだけではなく、滅王はその攻撃を自分で被弾することを構わずに叩き込んでくるのだ


リンファに直撃すれば致命傷になる攻撃にも拘らず、だ

そんなデタラメな射線で撃ち込まれる攻撃を回避しつづけているだけで、リンファの神経と体力はゴリゴリと削られてしまう




さらにその滅王のタフネスさはリンファの体力を輪をかけて奪っていく

どれだけ殴っても滅王はほぼ身じろぎもせずその攻撃を受け止めるのだ

打撃のポイントがズレれば打撃を殴った側のリンファにダメージが返ってきそうなほどにそれはあまりに堅い



魔導発勁が通らないわけじゃない、八極剛拳の技が効かないわけじゃない

リンファの手元には撃ち込んだ技の手応えはしっかりと残っている


効いているからこそ始末が悪いし、絶望的なのだ


(手応えは感じるのに……まるでダメージを与えられていない……!)



『く……この……チョコマカとぉ! 堕ちろ!潰れろ!死ね!死ね!死ねぇ!』


まるで耳の辺りを飛び回る蚊を追いかけるように滅王はリンファに攻撃を繰り返す


リンファは薄皮一枚で迫る、まるで聳える壁の様な滅王の平手をスレスレで回避



【八極剛拳 金剛鉄山靠】


回避した足さばきをそのまま踏み込みに変えて、全力で鉄山靠を叩き込む!

リンファの体内の魔力が滅王の魔力を共振させて破壊力を生み出すが、滅王は苦痛の表情一つも浮かべない


ただ不愉快そうにリンファの肩を人間側の手で殴るように払いのけると、リンファに向かって熱線を四方から撃ち込んでいく

リンファはそれをギリギリでかわし切ると、一瞬安堵の表情を浮かべて次の行動に移る


全てがギリギリで、全てが綱渡りだった




だが、リンファにとって幸運なことがいくつかあった


一つは降り注ぐ物体が物理的な隕石だったこと

魔法に対する耐性がほぼ皆無のリンファにとって、魔力を纏った攻撃は掠るだけでも大ダメージとなる

その為熱線は特に神経をすり減らして回避していたが、隕石は滅王の魔力で召喚された実際の隕石だ


もちろん巨大な飛来物に激突すれば致命傷は免れないが、リンファからすれば地肌で触って捌ける以上、熱線ほどの脅威はない



もう一つは、攻撃が当たり続ける事


例えノーダメージの攻撃でもあたり続ければ滅王からすればストレス以外の何物でもない

リンファを無視して他の行動に移られれば厄介だが、滅王の何よりの望みはリンファを亡き者にすること


リンファを殺さなければ一歩も進めないという視野の狭さのお陰で、滅王の足止めに今のところ成功している



「クッ……まだ……まだまだぁ! 滅王! 僕はここにいるぞ!お前に攻撃が通るまで!殴り続けてやるからな!」


リンファは絶え絶えの息を必死に抑え込みながら滅王に効果のない攻撃を続ける

裂ける拳の緑の血が頬に飛び散るが、それを拭う余裕すらもない



それでもリンファはその目に絶望の色を浮かべない




リンファにとって最後に幸運なこと


それは仲間がいること


いつか反撃の時が生まれると信じているから

それを作ってくれる仲間がいると、信じられるからだ


それを信じて、リンファはギリギリの戦いに挑み続けた






――――――――――――――――――――――――――




「あれを……滅王を引き離せだと!?」

ガルドが思わず声を荒げ、グリフの肩が震える


「リ、リンファが言うにはだぜ? あの赤黒い気持ち悪いオデキみたいに生えてるおっさんを引き離してくれればどうにかするって……」


「その方法は? 何か策は!?」


「さ、さぁ……?」


「肝心のそこは無策なのか……あの愚か者が!」




ガルドは忌々しそうに舌打ちをしながら天に届きそうなほど巨大な滅王を見上げる


こんな巨大で堅牢な化け物……この世界で一番凶悪な種族と言っても差し支えのない蛮龍に一撃を加えるだけでも困難だというのに、さらにあれを引き離せだと!?

ガルドはリンファの無理難題に胸中で何度も唾を吐き怒りの感情を噴き上がらせた



「リンファが言うには、神代王のおっさん……今は滅王って名乗ってんのか、イキってんな……まぁいいや、滅王ってのは殴ってみた感じ蛮龍と変わりねぇらしい」


「ど、どういうことなんだグリフ?」


「えと、あのイキったおっさんが寄生してるだけで強さは変わってねぇ、蛮龍って奴の力にタダ乗りしてる感じだって言ってた」



アグライアの質問にグリフが必死に答える

本当はリンファはもう少し丁寧なしゃべり方をしていたが、それをじっくり聞く余裕もまともになかったからとにかく間違えないようにグリフは必死になって言葉にしたのだ



リンファに気を取られているとは言え、現に今もそこかしこに巨大な隕石は降り注ぎ、地面は爆発し破壊されている

障壁がなければ余波の衝撃で鼓膜どころかその体が千切れそうな力がそこかしこで発生しているという状況なのは今も変わりはない



そんな中でグリフは必死にリンファの言葉を聞き、二人に伝えていた



「この蜥蜴に甚大な被害を与えられる魔法…… そんなものがあればとうの昔に私がコイツを骸に変えておるわ!」


悔しそうにガルドが毒づく

さっきまでさんざん戦い続けたガルドは、自分の攻撃のほとんどがまともに通用していなかったことを思い出さずにはいられない



「コイツの体には常に強力な魔法障壁のような魔力が全身に覆われているようなものだ……魔力中心の魔法はそれで無効化されてしまうし、岩や氷などの物理に即した魔法は馬鹿げた硬さの鱗や皮膚で弾かれる!」


「障壁と感じられるほどの強力な魔力……か」


「さっきはそう思って氷柱や岩石を浴びせ続けてきたが……こいつは自分で放っているとはいえ天から降りそそぐ隕石にすらダメージを受けてない!」



ガルドは思いつく不可能な要素を口にし、頭に浮かべ、絶望的な感情に襲われる



「だからそんなことは……!そんなことは……!」



不可能だ、絶望な、無理だ



その言葉が喉元まで上がってくるのに、ガルドはその言葉を声にはしなかった




「そんなことを……どうにかしろというのだな! あの愚か者の穢れは! ふざけるな!」



言えるものか

リンファになめられてたまるものか

ガルドはその一心だけで絶望をかみ砕きながら言い放った



「やってやろうではないか……! この程度の事を成せずに我が神に合わせる顔などあるかよ!」


ガルドの咆哮に近い声にグリフは驚き、アグライアは少しだけ困った顔で笑う

そしてガルドの言葉に引っ掛かりを覚えたアグライアが神妙な顔で考え始めた



「強力な魔力……こいつを無効化できれば……でかいと言ってもこいつも生物なんだろ……だったら……」


アグライアは視線を動かしながらブツブツと独り言を言い始める

その様子にわずかにいら立ちを見せながらガルドが視線を向けた



「なんだアグライア! 逃げる算段なら向こうでやれ! 私はあの蜥蜴を死骸にする策を練るのに忙しいのだ!」


「そんな算段などするか馬鹿者! そもそも蛮龍を殺したらダメだろうが! そうじゃない…… あの蛮龍に魔法を通す方法を考えてたんだ!」



息をするように失礼なこと言うガルドに軽く噛みつくアグライアは、それどころじゃないと表情を変える



「なぁガルド、あいつの魔法耐性は恐ろしく高いが……結局は生物が持つ魔力に変わりはないわけだよな?」


「……あぁ、そうだろうな 意図的な魔法障壁というよりは帯びている魔力が高すぎて魔法が通用してないといった感じだ」



ガルドがアグライアの質問に面倒くさそうに答える

アグライアはその回答を聞いて、自分の考えとガルドの見識が概ね同じだったことに目を輝かせた



「なんだ気色悪い……気でもおかしくなったか?」


「もし、もし奴の耐性がそうなら……無効化、若しくは弱体化できるかもしれない」



その言葉にガルドとグリフの目が大きく見開く



「な、なんだと!?」


「対象があまりに大きいから通用するかどうかはわからないけど……魔法理論上は間違ってないはず」



アグライアは自分の手を見て、滅王を見上げながら言った







「【浄化の光】を使えば、あるいは……」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ