299.リンファの連撃
破壊の限りを尽くされる大地を見下ろしながら、蛮龍たちは涙を流す
眼下に見えるのはかつての大事な仲間、かつて愛した一族の長の成れの果て
あの憎い人間が愛しい仲間の体をまるで我が物の様に操っていることに憎悪と嫌悪を禁じ得ない
降り注ぐ隕石から身をかわしながらその男……滅王を恨めしく睨む蛮龍だったが
『許さん……!燃え尽きろこの寄生虫がぁ!』
その内の年若い一頭が怒りに震えながら電撃を打ち込んだ!
『や、やめろ!何てことを!』
仲間が慌てて阻止ししようとするが、既に時遅く天雷が滅王に注がれる!
降り注ぐ隕石を追い抜き、その余波でその岩を蒸発させるほどの強烈な電撃が滅王に直撃しようとするが
滅王はそれに視線すら送らずに防御壁を展開してそれを防御し、霧散させた
弾かれた電撃の余波が空気を揺らす中、その身を真っ赤に染めた滅王の人間部分がゆっくりと天を仰ぎ、笑う
『今何かしたか? 我が眷属よ』
眷属と呼ばれた蛮龍は怒りの咆哮を鳴り響かせる
『貴様などに……貴様などに眷属などと言われたくはない! 長を返せ!仲間を……返せぇ!』
『おぉっと、先ほどの様な愚行は控えることだ 我は親切心から申しておるのだぞ?』
怒りでいきりたつ蛮龍たちをあざ笑うように滅王は口を歪ませる
『我はこの蛮龍と同化したことで神代王の力を失った、もうかつてのように貴様等を従わせる力はない だがなぁ……』
滅王は自らの胸に爪をかけ、腰のあたりまで一気に引き裂き高笑いを始める
滅王の突然の自傷行為に戸惑う蛮龍たちに向けて、滅王は勝ち誇るように言い放った
『過去に命じた力は依然として健在! つまり我が死ねば貴様等は一族郎党全て死滅するということだ!』
狂ったように笑う滅王に蛮龍は怒りの視線を向ける
その視線を眺めながら満足そうに滅王は更に下卑た笑いを浮かべた
『そして我は近しい未来に死ぬ…… 貴様等蛮龍を黄泉の道連れになぁ!』
滅王の高笑いが空に響き、蛮龍が怒りで翼を燃やしながら涙を流す
そんな高笑いをしている滅王の真っ赤な体に突如として衝撃が襲う
あまりにその強烈な炸裂音は、空に舞う蛮龍たちは思わずその翼のはためきを止めてしまうほどだった
蛮龍たちはその音の正体に目を凝らす
そこには……
『き、貴様……性懲りもなく……!』
顔面に激突した蹴り足の主を、怒りに震えながら滅王は睨みつける
「神代王……いや滅王!」
その蹴り足は滅王の顔面を踏み台にして更に上昇し反転!
「何度でも言う! 何度でも叩き込む! 蛮龍さんから……」
その反転の勢いは三日月を描き、更にその足は真円を刻む!
「蛮龍さんから!離れろーーー!!」
【八極剛拳 孤月旋風脚】
まるで振り上げた斧の様な踵落としが滅王の眉間に突き刺さるが、滅王の首はびくともしない
だが滅王はその攻撃に苛立ちながら、リンファを払い落とさんと蛮龍の腕を振り回した
「この虫けらが! 貴様の一撃など何の痛痒にも感じぬと言っておろうが……! 虫けらなら虫けららしく地面に這いつくばって踏み潰されろ!」
「一撃が通らなければ……何度でも打つだけだ! お前がそこから離れるまで! 打ち続けるだけだぁー!」
リンファの怒涛の連撃が滅王の真っ赤な体に次々と刻まれる
まるで打ち込み台の如く微動だにしない滅王の胴体、顔面、肩、腕……そして人体の急所のあらゆる個所に打撃が撃ち込まれる
常人であれば骨も残らぬほどの連撃が次々と叩き込まれるが、滅王の体には傷一つつくことはない
滅王が先ほど自ら刻んだ胸の傷もみるみると塞がっていき、その体は何をしても形が変わろうとはしなかった
それでもリンファはその手を止めることなく、攻撃を叩き込む!
『うっとおしいぞ! さっさと死ねぇ!』
怒りに燃えながら神代王が魔法陣を展開し四方八方から熱線をリンファに撃ち込んでいく
その射線に滅王の体があろうとお構いなしに撃ち込まれ、直撃した箇所から肉の焦げる不愉快な臭いが立ち込める
熱と光と音、そして不快な臭いに包まれる地上より遥かに高い滅王の頭上にて戦いは繰り広げられる
リンファの攻撃はかすり傷一つ刻まれないが、それでもリンファの目は青く燃えていた
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「り、リンファだ! よかった……無事だったんだな!」
突如鳴り響いた戦闘の音に空を見上げたアグライアは、戦うリンファを見て安堵した
「殺したくてもなかなか死なぬ奴よ……相変わらずしぶとい化け物め!」
ガルドもまたその光景を見て、少しだけ安心したように不敵な笑顔を浮かべる
「こうしてはいられないな……! リンファに気を取られているから隕石の数も減った、リンファの援護をしてやらねば」
アグライアが滅王に向けて攻撃魔法を繰り出そうと詠唱を開始する
「待った! アグライアさん待ってくれ!」
その時、不意にアグライアを止める声が背中に響く
「グリフ!?」
「よかった、間に合った……! 待ってくれアグライアさん、ガルドのおっさん! 今は攻撃しちゃだめだ!」
グリフは息を切らしながら今まさに攻撃をしようとしていた二人を慌てて制止する
「貴様…… どこから湧いて出た? 近くに貴様の気配などなかったぞ?」
ガルドは詠唱を待機させたまま、怪訝な表情で突如この場に現れたグリフを睨みつけた
グリフは息を切らせたまま、背負った荷物を必死に支えながら二人に顔を上げた
「リンファから伝言を預かってんだ…… 無茶苦茶だって言ったんだけど、オイラたちならできる……って……!」
「穢れからの伝言だと……?」
グリフは息切れする呼吸を必死に整えながら、ゆっくりとその言葉を口にした
「あのデカブツから滅王とか言うおっさんを切り離してくれ……ってさ!」




