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緑の拳士~ゴブリンハーフは魔法が使えない~  作者: ハンドレットエレファント


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296/312

296.リンファ、怒る

蛮龍の目はもはや訴えから懇願に変わっていた

リンファはわずかに逡巡するが、覚悟を決めたように拳を握る



そんなリンファの姿に蛮龍は安堵したのか、その目をゆっくりと閉じた

だが……




「みんな……力を貸してください」

リンファの突然の声掛けに、蛮龍はわずかにその身を揺らした



『小さき者よ、お前でなければ駄目なのだ お前の力でなければ……』


その言葉にリンファは蛮龍の目を見て小さく笑う



「はい、わかってます でも……貴方を死なせたくない!」

リンファは蛮龍の目を見て強く言葉を言い放つ


そしてそれに続くように、アグライア達がリンファの傍に並び立った



「リンファ…… 君はつまりさっきと同じことをやろう、そう言っているんだな?」

アグライアが髪をかき上げながら、強く目を見開く


「トカゲ、全てが終わったら改めて相手をしろ 決着はその時だ」

首を気怠そうに鳴らしながら、ガルドは蛮龍を睨みつける



「あ、オイラはその辺警戒してますね」

グリフは散らばった自分の荷物を集めながらヘヘヘと愛想笑いを蛮龍に向けた






『ま、まさか貴様等……』


蛮龍は全員の顔を見て思わず息を呑む

リンファはもう既にそれを実行する為に魔力の流れをその目を視始めていた



『神代王の力を破壊したうえで、私を生かそうとしているのか!?』


驚く蛮龍にリンファは一瞬キョトンとした顔をするが、すぐににっこりと笑って頷いた


「僕は魔法を使えないけど、僕の仲間は使えます……だから、やります! 貴方を助けてみせます!」




リンファそういうと腰を低く構え、自らの決してこの世に顕現できない魔力を震わせて大地の魔力を共振させる


大地の魔力との共振で体内の魔力が更に響き、魔導発勁を強く練り上げる



アグライアとガルドは光り輝く大きな球体上の術式を展開し、一心不乱に詠唱を重ねていた




「アグライア、タイミングを誤るなよ カウンターヒールはタイミングを間違えればただの過剰回復、つまり無駄だ」


「わかっている、お前こそ回復魔法の使い方を覚えているのか? 元隊長殿」


「不出来な元副官ができる程度の事なら一通りな……」




ガルドとアグライアお互いを軽く煽りながら、一切手を抜くことなくその巨大な回復魔法を練り上げていく

アグライアが用意していた魔鉱石は次々と砕け散っていき、さらにその魔力は巨大化していった




『なんと……これほどの魔力を……』


「二人はすごいんですよ、まぁガルドの方はなんというか性格がアレですけど」


魔導発勁を練り上げながらリンファがはにかむように笑う

その無邪気な笑顔に、思わず蛮龍も微笑んだ



『貴様等の様な小さき者に会えるとはな、まだこの世も捨てたものではないと思ったよ』


蛮龍はそこにいる全員の顔を見ながら呟く


『あの男に命令をかけられた日、随分と運命を呪ったものだが…… 長生きを強いられた甲斐があったよ』


「蛮龍さんほど強い方に、あの神代王はいったいどんな命令を……?」


不思議に尋ねるリンファに、蛮龍は悲しそうに笑う



『私たち一族の誰かが神代王に背くか、若しくは種族の誰かが死した際に残りの種族が連鎖して死亡する……そういう呪いだよ』


「そ、そんな……!」


『奴の醜悪なところは精神支配をしてこないことだ、意のままに操るよりも私たちが従わざるを得ない状況を築き上げる……屈辱だったよ』



リンファの目に怒りと悲しみが籠り、思わず噛み締めた歯がギリギリと軋む



「なんてひどいことを……!」


『奴は精神支配をせずに、私達のような生物を心から従わせることに喜びを見出しているように思えた……ハウルの一族にもそうだ、我らの尊厳をギリギリまで奪い頭を垂れされた』



蛮龍の目が悲しみで濁る、だがその目は潤むことすらせず乾ききっていた



『逆らうこともできなければ、自決することもできなかった…… 生きることが苦痛すぎてもはや涙も乾いたよ』


蛮龍は自嘲気味に笑う


リンファは魔導発勁を更に強く練り上げながら、ポツリと呟いた



「……ましょうね」


『……?』



「蛮龍みんなの呪い、絶対に解除しましょうね」




リンファは涙を流しながら、強く言い切った




『ありがとう……小さき者よ』


蛮龍は出ない涙を拭いながら、小さく礼を言った








その時、不意に爆音が響く!


全員がその音に反応し視線を向けると、グリフが荒い息で蛮龍の後方に向けて魔鉱石を投げようとしていた



「ぐ、グリフさん!? どうしたんですか!?」


「みんな逃げろ! 全然効いてねぇ!」



問いかけるリンファの声に慌てて要領の得ない返事をするグリフ


そういわれてリンファが魔鉱石の爆発した箇所に目を向けると……




「い、いない!? 神代王がいない! そんな……気配には気を付けていたのに!?」


リンファの言葉に全員に更に大きな緊張が走る!



「あ、あのおっさん倒れたままの状態から、いきなりそのまま浮かび上がったんだ! 慌てて魔鉱石ぶつけたんだけど全然効果がなくて……!」



グリフが慌てながら辺りを見回し、全員が警戒を強める


「馬鹿な……あの男はほぼ死に体だった……! 魔力もほとんど残っていなかったのだぞ!? 動けるわけがない!」


「ぐ、グリフ!探してくれ! 私たちは魔法の錬成で動けないんだ!」




ガルドとアグライアは周囲を見回しながら声を上げる

だがその姿はどこにもなく、グリフが投げた魔鉱石の爆発で発生した煙だけが漂うのみ……




不自然な静寂に全員が息を飲む





だが次の瞬間、リンファは驚きながら真っ暗になった空を見上げる


視線の先には蛮龍がその翼を広げ、リンファに向けて一気に覆いかぶさった!




「ば、蛮龍さん!?」

『に、逃げろ……逃げろ小さき……グアアアアアアアアア!!!』



驚くリンファの前で逃げろと叫ぶ蛮龍の声が、やがて悲鳴に変わる


そしてそんな蛮龍の首元には……





「貴様のせいだ……貴様のせいで私は……」


「し、神代王…… やめろ!蛮龍さんから離れろ!」



叫ぶリンファ!


神代王は蛮龍の首に体全体で無様に必死にしがみつき、目から真っ赤な血を流す

やがてその赤い血は目だけではなく、体中の穴という穴から噴き出すように流れ落ちた


そしてそのしがみつく右腕は、蛮龍の目の傍に肘を覆うほどに深く突き刺さり、流れる赤い血が蛮龍に注ぎこまれていく!





『グ……グガガ……! き、貴様……!ギャアアアアア!!』




蛮龍が断末魔に似た悲鳴を響かせて天を仰ぎ、そして糸が切れた人形の様にその首が地面に落ちる


そしてその首の傍にいたはずの神代王が……




「貴様のせいでこのような屈辱的な姿にならなければいけなくなった……許さんぞ、絶対に許さんぞゴブリンハーフ……!」



「ば、蛮龍さん……! 神代王……きさまあああああ!!」



リンファが怒りで大地を大きく震わせる



もはや光を失った蛮龍の目と目の間に、不気味で醜怪な何かがまるで寄生虫の様に隆起する



それは血にまみれた神代王の上半身





真っ赤に染まったその目は怒りに震え、神代王の両手が怒りで震える


そしてその動きと全く同じ動きで、蛮龍の前脚も大きく震えた



神代王は今まさに、人の姿を捨てた




リンファはそれを見て、更に怒りを強くした―――――



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