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緑の拳士~ゴブリンハーフは魔法が使えない~  作者: ハンドレットエレファント


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286/324

284.扉の先に待つ者

扉の装飾が白黒の明滅を繰り返し、やがて沈黙するかのように扉から光が消える


巨大な扉は光を無くすことでより重く、より冷たく感じられる空気を醸し出していた



『よし……接続完了 この扉の先を少し進めば【神の手のひら】にたどり着けるはずだ』


ロードの声が扉から響く

さっきまではその声に連動して扉の装飾が明滅したが、今は声のみが響きわずかに不気味さを感じさせた



「この先に……神代王が……」


リンファがその重く暗い扉を見上げながら息を呑む

戦うと決めた、倒すと決めた相手がこの先にいる…… その事にリンファは緊張を隠し切れない



「無理はするなよ、リンファ 君の隣には私がいるからな」


アグライアが緊張の面持ちのリンファの肩に手を置く

その手もわずかに震えていたが、リンファはその手に心強さを感じていた



「我が神よ、今しばらくお待ちください 今あなたをお救いいたします」


ガルドが目を伏せて小さくつぶやく言葉にリンファは少しだけ驚いた

これまでガルドの口から聞いたこともない、殊勝な言葉に思わず声が出そうになるが

チラリと見たガルドの顔があまりに真剣だったのでリンファはその口をそっと閉ざした




「今更なんだけど……軍勢とか引き連れていった方がよくない? いや、怖いわけじゃねぇけどよ? 勝率を上げるためにさ?ね?ね?」


一番後ろで誰よりもでかい荷物を抱えてグリフがわかりやすく怖気づく

もはやグリフなんだか荷物なんだかわからない感じのシルエットがほのかな光に照らされて壁に面白い影を作っていた



「グリフさん、ここからは危ないから無理しちゃ……」


「馬鹿! そんな危ないところにお前が行くってのについていかないわけないだろ!」

地震でも起きそうなくらいその体を震わせながら、リンファに絶対についていくと返事をするグリフ

その姿に思わず『無理させてごめん』と言いそうになる自分の喉をリンファは抑え込んだ



『この扉を進んだ先に光の奔流……輝く渦の様なものが見える、そこを通り抜ければ神の手のひらだ』


「わかりました ありがとうございます、ロードさん」


『ただ、そこに至るまで絶対に気を抜かないでくれ…… 私はあの男がおめおめと君たちの進入を許すとは思えない』



ロードのその言葉にリンファたちは息をのむ

ガルドだけはその目をわずかに細めるだけで、大きな反応は示さなかった


「あの臆病者の事だ、罠の一つも用意しているだろうな…… つくづく詰まらぬ男だ」


「罠……か」


ガルドのつぶやきにリンファが拳を握る


握る拳はわずかに柔らかく、もう強張る力は抜けた

何が待っていようとも先に進むしかないと思うと、不思議とリンファの体から緊張が抜けていった


罠があると思ったら体から緊張が消える

おかしなもんだなぁとリンファはフフッと小さく笑った



『準備はいいかい? グリフ君の言う通り一度戻るって整えるのも英断だよ』


「いえ……大丈夫です」




ロードの気遣いに、リンファが笑顔で答える






「アイツにもう好きにさせる時間は与えたくないから、このまま行きます!」


その言葉に思わずロードは吹き出して笑い、ガルドもわずかにほくそ笑んだ




『君はおとなしそうな顔をして熾烈だなぁ! その強さが眩しいよ!』


「ふふふ…… ありがとうございます!」







今から死地にも等しい場所に赴こうというのに、リンファはその不安さを微塵にも感じさせず強い視線をまだ見えない扉の先に向ける


ロードはその視線を心強く感じながら、その重い自らの扉を開いた




『どうか無事で、君たちの勝利を願っているよ』


「はい、行ってきます!」




リンファは元気よく答えると、その足を強く踏み出す

その背中には仲間が共に続く






扉の奥に進み、やがて小さくなっていくその背中をロードはいつまでも見つめながら、ゆっくりと扉を閉ざす



あの日ロードが絶望の怒りで願ったあわよくばの希望が、気の遠くなるほどの時を経て繋がった


それもそれが、この世に決して現れるはずのなかったゴブリンと人間のハーフ……


ただのエラーだ、不良品だとあの神を気取る男は言うだろう



だがロードは、そんなリンファに希望を見た



『頼んだぞ……ゴブリンハーフ』



その背中をカメラが捉えられなくなるまで見送ると、やがてロードは再びその光を消して眠りについた――――――






―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




扉の先を少し歩き始めてから、目の前の光景が大きく変わっていくことにリンファは戸惑った


「そ、空……? なんで……?」


思わず口を開けたままリンファは天を仰ぐ


さっきまで広くはあったもののトンネルの様な洞穴を進んでいたはずなのに、その道は突如として真っ青な空に代わる



「な、なんだよこれ……なんにもねぇじゃん? 山もなきゃ森もねぇ……! 足元の灰みたいな白い土の地面がどこまでも続いてる……なんじゃこりゃあ……・!」


グリフが騒ぎながらキョロキョロと辺りを見回し声を上げる




来た道を振り返ると、真っ黒な闇の奔流がポツンと渦巻いており、そこから続く道らしい何かがリンファたちの足元に繋がり、そして更に先に続いていた




「神の手のひらへ至る道だ、何が起きても不思議ではないと思ったが……こんな世界が広がっているとは……」


アグライアは盾を構えながら、リンファの傍に立ち周辺を伺う


遮るもののないその広大な場所は伏兵の隠れる場所などないが、逆に言えば自分たちが隠れて進むことも不可能だという事


アグライアは神代王の罠を警戒して、慎重に辺りを警戒していた





「アグライア、警戒する必要はない」


ピリピリと気を張るアグライアに、ガルドがくだらなさそうに声をかける


「馬鹿を言うなガルド……こんな開いた場所で警戒する必要がないわけないだろう!」


警戒したまま、視線を向けずにアグライアは声を上げる


ガルドはそんなアグライアの前に突如立つと、即座に複数の術式を展開し始めた!


「なっ……!」



「穢れ!構えろ!」

「……わかってる! みんな備えて!」




ガルドの詠唱にまるで合わせたかのようにリンファが一気に駆け出し、その拳を空に突き上げる!


リンファの拳に装備された左右の赤い魔鉱石が叫び怒るように輝き、咆哮の如き響きがその広大な空に響き渡った!



【八極剛拳 旋風劈拳】



真っ青な空を裂くような巨大な旋風が巻き起こり、突き抜けていく

ガルドはその旋風の周りを覆うように巨大な稲妻を巻き起こさせ、雷撃の魔法を叩き込んだ!




「なっ……!?」


アグライアはわずかに戸惑いながら、攻撃を仕掛ける二人を守るように光の障壁を展開


その障壁の展開と同時に膨大な炎が押し寄せ、間一髪その灼熱の直撃を押し留めた





「くそ……何かあるとは思ってたけど……!」

「化け物が、化け物を連れてくるか……!」




二人が攻撃を放った空に鋭い視線を忌々しそうに向ける


その空の向こうでは旋風と雷撃がわずかに滞留し、そして鎧袖一触と言わんばかりに霧散した



その風と雷の残滓を纏いながら、それはゆっくりと舞い降りる





「おいおい……あれって……ウッソだろ……!?」


「りゅ、龍だと……!?」





空に見えた小さな点は、リンファたちに近づきながらみるみる大きくその姿を現していく



空を覆い隠すほどの巨大な翼膜、大地を切り裂かんばかりの爪……


口元から漏れる炎は、鉄すらも溶かしかねないほどに熱く煮えたぎる




「貴様等……よくも我をここまで追い詰めてくれたな……!」






「あの男が来ることも予想外だったが、こんな大物を隠していたとはな……ふざけおって……」


ガルドは神代王と共に、その足下にいるあまりに巨大な生物に毒づく


リンファは初めて見るその生物にわずかに戸惑い、少しの間言葉を無くした




「おとなしく雪山で寒さに震えておればよかったものを……! 貴様等のせいで我はここまで窮まった!」




神代王がその巨大な生物の頭上で吠える

その怒りはまさに怒髪天を貫くといった形相だった



その怒りに呼応するように、その巨大な生物は雄たけびを上げる

その雄たけびだけでリンファたちの肌は震え、内臓を掴むような圧を感じずにはいられない





「あ、あれは……!?」


「かつてこの大陸に君臨していたといわれる万物の長、神話の生物と言って差し支えないいわゆる上位種……」


ガルドが唾棄するように言葉を吐く

そんなものが未だに存在ことを信じたくないように、大きくため息をつきながらその名を呼んだ





「上位種の龍の中でもその頂点に君臨するもの……【蛮龍】だ!」



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