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緑の拳士~ゴブリンハーフは魔法が使えない~  作者: ハンドレットエレファント


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256/257

256.体内に巣食う魔鉱石の正体

アバカスの手元に迷いはなかった

ガルドが切り開いた患部に鉤の様な道具を使って広げると、漏れていた血管をクリップの様なもので摘まむと一時的に止血する


ガルドが魔法を展開しながらとはいえ一手一手集中しながら行っていた作業を手早く復旧させた


「ここまでを器具もなしに魔法錬成だけでやったのか、恐ろしい手際だな」


そういいながらアバカスは炎を浮かべてほのかな明かりを作り、術野を照らそうとする

「……くそ、ライトは必要ないと思って持ってこなかったのは失敗したな」


ガルドは後方からアバカスを観察していたが、少しため息をつきながら障壁の中にいくつもの光源を作り上げアバカスの手元を照らしだした


「原始的な方法とはいえそれだけの技術を持ちながら、こんな魔法もまともに使えんのかゴブリン風情は」

「生憎とこんな魔法を勉強するような暇などなかったのでな、光で照らしても貴様ら人間は殺せんだろう」


影すらできないほどに煌々と照らされる手元に驚きながらも、アバカスはガルドに悪態を返す


リンファはそんな二人の動きを見ながら、不思議な感覚に襲われていた


『ガルドが手伝って、アバカスさんがそれを受け入れている……あんなにお互いの種族を憎んでいるはずの二人が……』


魔法も手術も使えないリンファだったが、アバカスのやっていることのすごさはその手さばきを見れば理解できる

更にすごいのはガルドがそのアバカスの動きを先読みするかのように魔法でそれをアシストしているのだ




「貴様は術野だけを見ていろゴブリン、必要な道具は口にすればいくつか手元に運んでやる」

「人間如きが偉そうに……リトラクターをよこせ、理解できるならな」

「少し緩めにかけるぞ、術野を広げたいなら言うがいい」

「わかるのか……人間のくせに」



戦闘中には見せなかったような静かな緊張感で黙々と治療を進める二人

さっきまで切り開くことさえ長い時間がかかっていたはずなのに、素人が見てもわかるほどの速さで進行していく



「穢れ、このガキの様子に変化はないか?」

「う、うん…… 魔力の流れに異変はないよ、ただ少し体が冷えてきた感じがする」


二人の会話を聞きながらアバカスが呟く


「血を失いすぎているか……、輸血ができればいいのだが」

「やっている」



独り言に反応されたことも、その内容についてもアバカスは驚き思わずその顔をガルドに向ける


「お前、治癒錬成ができるのか? この子の血液を錬成して作っていたのか……」

「そんな下劣な魔法を使う気はない、この治療を始めた時からガキが排出してしまった血液を回収して不純物を除去したうえでもう一度循環させているのだ」

「い、いつの間に……!」

「だが循環時にロストが出るから血液の総量はどうしても減ってしまう、どちらにしても時間はないぞ」



ガルドはルイの足元に手を当てて熱を加え、体を温めてやる

ほとんど意識をなくしているためその表情に大きな変化は見えなかったが、それでも心なしかルイは楽になったような表情をみせた



「ふむ……ここだな、血管の組織が明らかに変色している」

アバカスが手際よく患部を切り開き、問題の箇所と思われる血管を指し示す



「うん、ここからルイ君とは違う魔力が感じられる、多分魔鉱石だと思う」

「思ったより血管へのダメージはないな…… 切除する」


アバカスは魔鉱石があるとみられる血管にクリップの様な道具で魔鉱石が含まれた箇所の前後を摘まむと、その血管を切り開く

その中には肉眼で見るのも難しいほど小さな魔鉱石の破片が血管の内壁に突き刺さり、ほのかに光っていた




「こ、こんな小さな欠片でルイ君がこんな目に……」

「引き抜いて除去した場合破片が残るリスクがある、血管を切除して縫合しよう」

「使え、円錐針だ ……この糸の素材はなんだゴブリン」

「マルク虫の糸をより合わせたものだ、体内でいずれ吸収される」



少ない言葉で二人は血管に刺さっていた魔鉱石を血管ごと除去し、流れるように縫合を済ませる


引っ張った糸をハサミでチョンと切ったとき、顔には出さなかったが全員の空気がわずかに緩んだ




ドクン



だが、リンファだけは即座にその異変に気付き表情を一変させた



「魔鉱石がなくなったならあとは治癒魔法が使える、すぐに済ませるとしよう」

「ダメだ! まだ魔法を使うなガルド!」

「なに……!? 血迷ったか穢れ!」


治癒魔法を唱えようとしたガルドに噛みつくようにリンファが叫びあげる

ガルドは思わず詠唱を止めてリンファに顔を向けた



「まだだ……!まだ終わってない!」

リンファが目を見開きながらルイの体を抱え込み、魔力の流れを感じ取る

そんなルイの体の異変にアバカスとガルドも気づき、驚きの表情を見せる



さっきまで眠るように穏やかだったルイの表情が苦しみでいっぱいになり、その胸は外から見てもわかるほどに過剰に心臓が拍動する



「魔鉱石の欠片を取り除いた直後に……もっと大きな魔力の塊を感じた! しかもそれは……」

リンファが必死に魔導発勁でルイの体中に走る痛みと衝撃を和らげながら、その胸を壊れ物に触れるように慎重に包み込む


「心臓だ……! 心臓にさっきよりも大きな魔鉱石が感じられる!」

「ば、馬鹿を言うな! そんなものがなぜ突然現れる!?」



その言葉にアバカスがハッとする

「吐いている血の量にしては血管へのダメージが少ないと思ったらそういうことか……!」

「どういうことだ……まさか魔鉱石は最初から……」



三人の表情が緊張と恐怖で思わず強張る

全員が自分の中にある最悪の想像を思い浮かべ、口にするのを憚らせる

だが時間に猶予がないことを感じ取ったガルドが、覚悟を決めてその重い口を開いた




「魔鉱石は最初から心臓に刺さっていた……! 血管の欠片は心臓の魔鉱石が欠けたものだったということか……?」

その言葉に同意するように、アバカスは重々しく頷く



「心臓の魔鉱石はさっきまで不活性化していたのは、恐らくルイ君の魔力をほぼ同化しかかっていたから…… でも多分さっきの魔鉱石の切除に反応してしまったのかも……」


アバカスは深いため息をつきながら言葉を漏らす

「心臓だと……! どうしろというのだ! 拍動している心臓にメスなど入れられんぞ!切れたとしてもその傷口をどう塞げというのだ!」

「こうなれば一か八かで心臓ギリギリまで切開して治癒魔法を打ち込むしかないか……」

「そんなことをすれば魔鉱石が発動してオーバーヒールで心臓の構造がめちゃくちゃになって死ぬぞ! そんなことも想像できんのか人間!」

「やかましい! わかっているに決まっておろうが! ではほかにどんな方法があるというのだ! ふざけるなよゴブリン風情が!」






「心臓を止めよう」








苦しそうなルイの顔を撫でるリンファが、ポツリと呟く


「は?」「……トチ狂ったか、穢れ」

その突拍子もない言葉にアバカスとガルドがあっけにとられる


だがリンファの顔に嘘はなく、また恐れもなかった

真剣な目で顔を上げ、二人の目を見ながらもう一度言った






「心臓を僕が止める…… ルイ君を助けるんだ! 僕たちの手で!」



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